アルスマグナの後継者T Successor of Ars Magna


 『王者の技(アルス・マグナ)』とは、エメラルド板に記されていた錬金術の頂点となる知識、創造主によってかつておこなわれた天地創造を再現することができる技術である。 多くの錬金術師はエメラルド板に記されていた王者の技の解読と再現に挑戦し、ある者は成功したといわれ、またほとんどの者が失敗しあるいは挫折していった。そして、その全ての者のアルスマグナへの試みは後の時代の技術を切り開く貴重な礎となっていったのである。 本書は偉大なる技に挑み、あるいは再現に成功した錬金術師とその秘蹟を紹介する。

※1作品中に数多くの錬金術師たちがいる場合、1名を代表として本書では挙げます
※いわゆる金融系に携わる“現代の錬金術”としての成功者は本書では割愛します

株式会社アルケミスト

「今、一番流通で元気のないハードとはハードル高いっすなぁ〜♪」

 2000年に誕生、東京都江東区に本拠を構える錬金術師の結社。ゲームキャラクターのグッズ製作と販売を中心とする一方で、様々な良質PCゲームのコンシューマ向け移植も数多く手がけている。 代表的な移植作品には『君が望む永遠』『ひぐらしがなく頃に』『うみねこがなく頃に』などがあり、総じてアドベンチャーゲームに長じている点が特色である。 また、エイプリルフールにはほぼ恒例で壮大な嘘サイトを構築することでも有名で、ゲーム会社の中では『アイレム』と双肩を並べる不気味な存在感をかもしだしている。
 居並ぶほかの錬金術師と大きく異なる点としては、まず個人ではなく法人であるという点、錬金術を特に用いるわけでもない点、そして現代日本で現存する錬金術師であるという点であろう。 いわゆる一般的な錬金術師としては完全にその存在を画しているわけであるが、折角社名がそのまま『アルケミスト』であるということも鑑み、様々な視点からの錬金術師を説明することも 本書の役割であるものと考え、ここに取り上げたものである。なお、左のロゴにあるフラスコマークには本来は赤い液体が入っており、同社公式サイトでそれが自社が所持する賢者の石を象徴するものと述べている。

蝶野 爆爵 (武装錬金)

「蛾は蛾なりに、光の周りを飛べて満足したぞ」

 明治時代、蝶野家を現在の資産家にまで勃興させた怪人物。蝶々型の口髭が特徴。“反逆者”と友誼を交して協力、ホムンクルス技術を完成させ、自らホムンクルスとなることで不老となっている。 現在は『ドクトル・バタフライ』と称し、北関東中心にホムンクルスと信奉者による構成結社『L・X・E(超常選民同盟)』を主催、作中中盤までの悪の総本山となる。 しかし、主人公を含む錬金戦団との戦争によってほぼ全てのホムンクルスが掃滅され、当初の彼の計画こそ完遂できたが、最期は玄孫である蝶野攻爵の手により敗れ去る。
 蝶野家を一代にして資産家に成長させた錬金術的な手腕もさるおとながら、その独特の美観と哲学を子々孫々まで継承させ、完成させた製造技術によって多くの独特で魅力あるホムンクルスを育ててきたこと(そして爆爵自身の全身白タイツ姿という点も含めて)は錬金術史の美術上でも偉業の1つとして数えられる。 また、当人も自負しているように一度は消滅したはずの“反逆者”を再構築することに成功した点もきわめて高い功績といえるだろう。メインキャラの蝶野攻爵にクローズアップしがちではあるが、錬金術師としての成功の多くはこの人物によって為された部分が大きい。

ユイット (クイーンズブレイド リベリオン)

「お兄ちゃん、ユイットの軍略見せてあげるね!」

 母に“偉大なる錬金術師”と呼ばれる伝説的な錬金術師を持つ、リトルエルフ族の少女。彼女もまた卓越した錬金術師であり、加えて叛乱軍を率いる指導者アンネロッテと姉妹の契りを交し、彼女の片腕として天才的な軍略手腕を発揮して軍を勝利へ導く。 性格は心優しく、また強く甘えん坊な気質を持っており、女性であるアンネロッテに対して昔から「お兄ちゃん」と呼んで甘えてしまう癖がある。 その一方で軍師としては冷静沈着で、叛乱軍の大義の実現のために少数を犠牲にする冷徹な選択を下すことも多いとされている。
 軍師としての戦略手腕もさることながら、自身もまた「ヴァンデ」という名前のエルフ型クロックワークオートマトン(錬金術工学のロボットの一種)を操って戦うことができる。 このクロックワークオートマトンは母による作品だが、それを操縦して発揮される高い戦闘力は叛乱軍における有数の戦力で、その戦果から敵味方よりユイットとヴァンデのコンビは“錬金の奇跡”と呼ばれる。 自身ではなく製造物による個人戦闘力の高さと、オートマトン操作に必要な操縦器を奪われれば敵にも利用できるなどの大事なセキュリティ面での穴だらけ感は、いかにも錬金術らしい特性に満ちている。

モロック (カルドセプト)

「Vct=√Em2+Px……。ふむ、まだまだ勝てるぞっ!」

 ソルタリア随一の偏屈者と自己中心的性格で知られる、奇妙なロボットチェアに搭乗する老マッドサイエンティスト。東大陸奥地に館を構え、カルドセプトのカードに秘められた力の解明に没頭している。 しかし研究資金に苦労しており、資金問題解決とデータ収集のため、賞金のある大会に出場したりして、結果的にその性格から各方面でトラブルを起こす。 作中では無属性クリーチャーのブックという他に類を見ないアプローチで挑んでくるが、攻撃面はともかく防御でのお粗末さから、実力は高いものとはいえないセプターである。
 神秘のカードを人間の科学技術に応用する野心は、神々への信仰が強いソルタリアで、最も向学心と上昇志向の強い唯物主義的で啓蒙的な生き様である。ヘッポコ錬金術師と笑われる節があるが、 実際には未知の言語を解析する『トランスレーター』、意志を持つ魔法の道具を支配下に置く『魔道具コントローラー』、落ちているカードの位置やそのレア度を測定できるという『自動カード発見器』、 合成済みバンドルギアという人造カード、あるいは人造セプターなど多様な錬金術的テクノロジー開発に成功しており、当人の用途のまずさはともかく、錬金術師の手腕の高さをうかがわせる。

パウロ (グングニル 魔槍の軍神と英雄戦争)

「お前さんほどの美貌があれば、燃え上がらない男のほうが珍しいと思うがのう」

 ダルタニア人のアルケミスト。レオニカ人の革命軍『エスペランサ』設立者の最後の1名であり、現在では同軍の軍師としてリーダーを補佐し組織のゲリラ活動に参画している。 酒と若い女性をこよなく愛している飄々として好々爺然とした人物であるが、一方で組織の厳しい前時代を知る現実主義的なベテランとしての側面を併せ持っている。 元はガルガンティア帝国の宮廷魔道士であり、革命軍ならびにレオニカ人への弾圧政策を進める帝国宰相ザイアードと元同僚の仲で、パウロが宮廷を追われることになった経緯があるらしい。
 自身も攻撃魔術と防御魔術の両方を兼任する、革命軍内でも高い魔法戦闘力を持つ魔術師である。加えて、錬金術によってジェムを使った軍内の武器強化を担当している、なくてはならない存在である。 もっとも、高レベルの錬金術においては設備が整っていないせいかかなりの確率(場合によっては97%以上)で失敗する。高レベル錬金術ではただでさえ1回の実行ごとのジェム消費量が多いことから錬金術の1回ごとの失敗は非常に痛手となりやすく、 結果的にはプレイヤーにとってのシステム的憎まれ役、錬金術師の“悪しき金食い虫ぶり”をもこのパウロ氏は体現していると言えるだろう。