●照明スタディ(写真1、2:2004年11月)
Yさんが照明デザイナーであることは既に書きましたが、当然、今回の設計の打合せも照明に関することの比率がかなり高くなっています。Yさんは積極的に次々と照明のアイデアを考えられていて、それらについていろいろと議論が重ねられました。
左の写真は例によってYさんが作られた照明検討模型です。打合せの中心となったのは、どのような照明がいちばん可動間仕切りのシステムと効果的に融合するか、ということでした。可動間仕切りのラインに沿った間接照明や点光源の照明など、いろいろな案がパースや模型で検討されましたが、結論として、間仕切りとは無関係な法則で構成した照明が、間仕切りの移動によって変化して見えるのが良いのではないか、という結論に達しました。
写真2が最終案に近いものです。実用的な照明効果と意匠性のバランスの取れたものとなりました。
使用する照明器具は「シームレスライン」(ニッポ電機)というものです。これは口金が見えないようになっている特殊な蛍光灯で、光が直線状に連続してとてもきれいなのですが、近所で交換ランプが買えるようなものではありませんので、私は、いままで住宅に使用したことはありませんでした。今回はオーナーが照明の専門家なので、問題なく採用できました。照明ボックスのディテールもかなり凝ったものになりそうです。
●決定と変更(写真3:2004年12月)
設計も終盤となり、打合せではいろいろなことが決定しつつ、変更もあります。
まず以前決定したと書いた床材(コルク)が変更になりました。メンテナンスや素材感の観点で、やはりもう少しプレーンな感じのもののほうが相応しいのではないか、というYさんのご意見が発端で、いろいろ再検討した結果、天然リノリウムを採用することとなりました。それに連動して壁や天井の仕上色や各部詳細も修正されました。
またショウルームにまで来ていただいて決定したトイレが、排水配管の位置が既存のものと合わないことが判明し、機種変更。これは改修ならではの難しさでした。
決まっていなかった洗面器も、左の写真のものに決定(水栓は異なります)。洗面台の前の壁面は全面鏡となりますので、この器具の選定理由は「鏡に写った状態が面白い」ことです。
●実施図面UP。そして現説(写真4、5:2005年1月)
Yさんとのいろいろな打合せの末、ついに実施設計図面が完成したのが2004年末。今回のように小規模な工事では、意志伝達の不備による工期の変化や工事費の変動などが大きな比率で影響してくるため、設計図面に普通以上の精度が要求されます。構造図こそありませんが、既存躯体図などを含めると小さな一戸建て住宅くらいの図面量になってしまいました。
そして年明けに現説です。現説(ゲンセツ、現場説明会)とは、見積もりをお願いする施工業者さんに現場と図面を説明する会です。工事スケジュールが厳しくなりそうなので、見積もり期間短縮のために施工業者さんには年末に図面を送付してあり、今回の現説はどちらかというと現場調査の色合いが強いものとなりました。Yさんが部屋を片付けて下さったので写真のように、現況がよくわかります。解体、空調・衛生・電気設備などの業者さんが揃い、ここから一気にプロジェクトの関係者が増えて行きます。
これで工事金額が予算に合えば、工事スタートとなります。
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