prospector's works : special
リノベーション・レポート(2)
設計・ページ執筆:山本想太郎
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調査
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どのように始めるか
リノベーション設計の第一歩は、対象の現況を把握することです。とはいえ構造躯体や設備など、特に重要な部分は普通に見える状態ではありません。通常は(1)可能な限り目視して実測し、見えない部分を推測する、(2)建物の竣工図面から読み取る、(3)特殊な調査機器を使用するか、仕上の一部を解体するなどして調査、という段階があります。しかし(2)は無い場合や現況と異なっていることも多く、(3)は施工業者でないとできませんし、何より現在お住まいの場合は難しいことです。ある程度の見切り発車は不可避ですが、可能な限りの調査をしておくことはとても重要です。

実測調査(写真1は現状バルコニー、写真2は改修中の別の部屋のものです)
まずは見える部分の実測調査。巻尺と音波計測器などで仕上の内法の寸法を計測し、実測図面を作成します。あわせて、点検口、パイプシャフトなど、開けられるところは全て開けて躯体の位置を把握します。またマンションの管理人さんにお願いし、竣工図面をコピーさせていただきましたが、実際には図面の無い部分や寸法の不明瞭な部分も多く、やや不安。しかし、管理人さんが現在改修中の他の部屋を見学させてくださり、内装の解体された状態を見ることができて、これは大変参考になりました。

さらに、エレベーターや階段、廊下の寸法もざっと測ります。これらの寸法により工事費に影響がでてきますので、それを意識しつつ設計しなければなりません。エレベーターに乗らない資材は階段で7階まで運ばなければなりませんし、階段も通らなければ、外から吊り上げになってしまいます。

設備調査(写真3)
設備については、簡単な調査で十分な場合も多く、点検口やパイプシャフトから大体のようすは把握できますし、それ以上の細かい配線、配管は、結局ほとんど撤去・新設になりますので、建築図が正確に作成されていれば、容量と最終的な出入口の情報さえあれば設備設計はできてしまいます。設備設計をお願いする設計者にも来ていただきましたが、1時間ほどの調査で「これでわかった」とのことでした。現況設備の問題点は以下のような感じです。
・電気容量が小さい。少しでも変更できるかは東京電力と相談。
・部屋の中央にダクトスペースがあるが、これは共用部分であるためいじれない。(前ページの図面参照)
・共用の配管類がかなり老朽化している。

解体調査(写真4)
実測図面を起こし、コピーした竣工図面と照合したところ、かなりの部分で竣工図面と現況の躯体が異なっているようです。こうなると、仕上げを解体して中を見てみる必要があります。さいわい、今回の部屋は現在お住まいではありませんので、床壁天井を一部はがしてみることにしました。この程度で業者さんを呼んでは費用がもったいないので、私が手持ちの工具で解体決行。丸一日かかりましたが、正確な躯体形状を把握することができました。梁が雁行していたりして、かなり複雑なことになっていました。

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