●モックアップ(写真1:2004年10月)
今回の提案では、いずれの案でも大きな建具を作ることになります。その実際のスケール感をYさんにご確認いただくため、現場でモックアップ(実物大模型)を作ってみました。今回はきわめて簡単なもので、いろいろな巾の白い紙を天井から吊るしてみただけですが、これでも十分、建具の感じや部屋の広さのイメージはわかっていただけたと思います。写真では、横に立てかけてあるタタミでスケール感をご想像ください。
●照明模型(写真2,3:2004年10月)
Yさんが照明デザイナーであることは前にも書いたのですが、この模型はYさんがお作りになったものです。本当は私が作るべきなのですが、先を越されてしまいました。
写真2はその模型を外側から見た様子。天井に多くの穴が開いていて、そこに繋がっているワイヤー状のものは光ファイバー照明です。このようにして、いろいろな位置に照明を付け替えながら中の様子を確認しました。
写真3は、建具面の外側の照明だけを点灯した状態です。建具の境界によって緩やかに分割される内外の空間が、照明の切り替えによってドラマチックに反転するような仕掛けになるといいと思っていたのですが、内側を点灯した場合、外側を点灯した場合のそれぞれで建具と空間がきれいに見えるためにはその背景の壁面の色濃度が重要なことがわかりました。そこで壁面をいろいろな色に塗って実験。写真ではわかりにくいのですが、向かって左端の奥の壁は濃いグレー、右は薄いグレーで塗っています。結論として、薄いグレーくらいが最も相応しいということが確認できました。
●サンプル(写真4,5:2004年11月)
だいたいの形状が決定してきたところで、今度は仕上材や備品類の検討に入ります。まずはYさんにアトリエまでご足労いただき、カタログ等で設計イメージをお伝えします(写真4)。そこでYさんのイメージも反映されていくのですが、機能的な側面は随時ご説明しながら打合せをすすめます。今回、床暖房を新設することを検討していたのですが、その場合、床仕上材はある程度限定されます。合板、リノリウム、コルク、フローリングといったサンプルをお見せしたのですが、Yさんがお気にいられた白い塗装を施したコルク(写真5左端)は、床暖房には適さないことをお伝えしました。他の床暖房に適合する素材では、部屋のイメージに合わないため、予算のことも含めていろいろ議論した結果、床暖房を中止し、そのコルクを採用することに決定しました。
●ショウルーム(写真6:2004年11月)
続いて衛生機器やキッチンなど、いろいろな備品類を見るため、ショウルーム巡りです。東京では、これらのメーカーのショウルームの大部分が新宿地区に集中しているためなかなか便利です。
ユニット・バス、キッチンなどは気に入ったものがあれば、その場で図面作成、見積もり依頼もでき、いろいろな部分が一気に決定していきます。やはり、既製品は実物を見るのが一番です。
もちろん全部のショウルームに行くことはできませんので、設計者としてここがお薦め、というところを中心に回るのですが、これらの製品は本当に日進月歩で、次々と改良、変更されていきますので、意外な発見もあり、私自身にとってもとてもよい勉強になる機会でもあります。(写真6:最新のINAXのトイレにはSDメモリカード・スロットがあって、ダウンロードした音楽を再生する機能もある、というのには驚きました。)
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