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倫理建て直し     02.9  山梨日日新聞「私も言いたい」欄掲載


 社会学者マックス・ウェーバーの著作の新聞記事に刺激されて、物置のダンボール箱から三十年以上も前の全集の一冊をやっと探し出した。 その中の「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を開いてみた。結局、ところどころ眺める程度にしかならなかったが、プロテスタントの職業観念と禁欲的な生活への道徳的要求が近代資本主義の発展に直接に影響したと説いているのが伺えた。
 物をつくり、流通させ、分配し、消費する行為が経済だという。その量的に把握される経済が効果的に機能するのに倫理とか道徳が深く関わるところに注目したい。 このところのわが国のトップ企業の行為はなんといったらいいのだろうか。
 乳業会社やハム会社の牛肉偽装、大手商社のODA贈賄疑惑、電力会社の原子力発電所の破損隠しなど次々と出てくる。たまたまのミスではなくて、どれも悪意がある。不法行為、ルール違反もさることながら、倫理不在が極めて重い。きっと、表に出ないのもたくさんあるのだろうと疑いたくなる。
 「正直は最善の商業政策である」とその書にあった。
企業倒産、失業者は最悪、冷えきった日本経済の建て直しが誰も望むところであり、有効な経済対策、産業政策が長いこと待たれている。同時に、昨今のような倫理なき経済は最悪の事態だ。不名誉のことだが、倫理の建て直しを求めずにいられない。