prospector's works : special
国分寺Y邸 現場レポート(3)
設計・ページ執筆:山本想太郎
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(3)躯体工事2
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1階躯体配筋検査(写真1:2004年1月31日)
いよいよ立体になってきました。写真は2階の床スラブの配筋です。本日は1階の壁から2階の床までをコンクリート打設する前の、鉄筋の検査です。上部躯体はご覧のように非常にシンプルな形態ですが、構造壁が外周部分にしか無く床板だけで持たせる面積が大きいので、床にもしっかりした鉄筋を配しています(D-13@100x2段)。写真で四角く囲まれた「穴」は、光庭の吹抜と階段です。

1階コンクリート打設(写真2-左:2004年2月2日)
天気が今ひとつで、いまにも雨が降りそうな状態でしたが、なんとか打設完了まで持ちました。シンプルな2階スラブ(床板)が見えます。集合住宅等ではスラブに段差をつけて水回りの床上配管などを行いますが、今回の建物は上下階の住人が家族であるため、部屋配置を工夫してそのような部分を無くしています。外壁部分は直接仕上げとなるので、型枠を外すのが楽しみです。

1階外壁脱型(写真2-右:2004年2月6日)
外壁型枠を外した状態です。概ねきれいに打てているのですが、一箇所、軽度のじゃんかが出ていました。この部分さえきれいに補修できれば相当きれいに見えるはず。現場監督も、何とかしてみるとおっしゃっていました。

2階外壁型枠+配筋(写真3:2004年2月13日)
2階の床スラブの上に、2階の外壁の型枠と配筋が始まりました。ここからは1階で行った躯体工事の反復となるのですが、型枠は1階の時に使ったものをそのまま利用します。このように各階の形状がほぼ同じ形態をした建物は、型枠パネルの材料や加工手間がかなり節約できます。もちろん、これは省コストにもつながります。

2階躯体配筋検査(写真4:2004年2月20日)
少し前から道路側の壁面には養生シートがかけられ「乞うご期待」という感じに。本日は3階の床スラブまでの配筋検査です。3階の床まで登ると、かなり眺めも良くなってきました。ここで、目の前の電線が一部敷地内に入っていることが判明。建物に触ったりするといけませんので、東京電力さんに移動してもらうことにしました。職人さんから「せっかく新しい家なのに、目の前に電線があって残念ですね」と言われましたが、私は全然そうは思っておらず、むしろ「都市と住宅の関係」という今回の建物のコンセプトを明確にしてくれる要素だと思って計画していました。きっと壁面に落ちる影も面白いと予想しています。配筋検査自体は既に3回目ですのであまり指摘事項も無く、明日、コンクリートの打設です。

3階型枠工事開始(写真5:2004年2月27日)
2階のコンクリートも、きれいに打設できました。そして3階の型枠工事開始です。3階ともなると資材を上げるのが大変になるので中央の光庭部分に電動リフトが設置されました(写真左側)。将来、もし足腰が立たなくなった時にホーム・エレベーターを設置する場所としても、ここは実にピッタリです。(窓は暗くなってしまいますが。)
外壁の養生シートが最上部まですっぽりかけられ、前回書いた電線の影も鮮やかです(写真右)。しかし実は現在、工事のため電線にも保護材を巻いていますので、普段よりかなり太くなっているのです。

3階躯体配筋検査+コンクリート打設(写真6:2004年3月6日)
いよいよ屋上レベルまで上ることができました。ここまでくるとやはり見晴らしは良いです。特に東側は見渡す限り高い建物が無く、気持ちいいものです(写真右:緑の養生シートのため、写真ではよくわかりませんが)。コンクリート打設も、今回を含めてあと2回です。今回の床スラブは、屋上の防水の下地となりますので、下階より入念に金ゴテで押さえます(写真左)。
また中央の光庭の吹抜も全貌が見えて、かなりの迫力です。この空間は、コンクリートが打ちあがったらご紹介します。
そろそろ内装工事の打合せが忙しくなってきました。

ペントハウス(写真7:2004年3月12日)
最後に残された躯体部分、ペントハウス(塔屋)の型枠+配筋工事中です。第三種高度地区の高さ制限のため低く抑えた、小さな「箱」といった趣きです。屋上周囲の型枠が高いのは、以前にも述べたように下階で用いた型枠を再利用しているためで、実際の壁は腰の高さまでの立ち上がりとなります。

躯体全体検査(写真8,9:2004年3月26日)
躯体が打ちあがり、全体検査です。外壁、内部の全コンクリートの仕上がり寸法、表面の状態などを確認しました。主な指摘内容は以下のようになりました。
・道路側の立面に出ている軽度の「じゃんか」の補修を行う。「じゃんか」とは写真8のように、コンクリートのセメント分が抜けてしまい、骨材が見えてしまっているような状態です。この場合の原因は、コンクリート打設用の型枠の継ぎ目から水分が抜けてしまい、水和反応が不十分となったことです。今回は表面だけの軽度のじゃんかですので、モルタル補修+色あわせで補修する予定。
・窓開口、伸縮目地部分の「欠け」の補修。このように細かい形がある部分に、だいたいコンクリートの欠陥がでるのですが、シール、コーキングを施す部分でもあるので、きちんと線が出ている必要があります。
・屋上の丸環(ロープなどを掛けるためのステンレスの丸い輪)が曲がってしまっているものの修正。丸環は、人がぶら下がる用途で用いるため、安易な補修は危険。鉄筋まではつり出して、溶接しなおさなければならないため、結構大変です。しかし大きく曲がってついてしまったものがあるので止むを得ません。

全体としては大きな間違いや欠陥はありませんでした。あとは補修できれいになることでしょう。
(写真9)は、中央の光庭の「穴」です。かなりの深さなので、屋上から見下ろすとまるで井戸のようです。

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