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ティランジア(Tillandsia)について


 「ティランジア」とは、北米カリブ海沿岸から南米にかけての広い地域に分布している、パイナップル科(BROMELIACEAE)ティランジア属(Tillandsiaの植物のことであり、中でも同属は最多の種数(500種以上)を誇ります。この仲間はそのほとんどが着生種であり、基本的に葉面や葉腋から、成長に必要な水分や養分を取り入れて生活しています。大抵の場合、これらの植物の根は専ら自身の固着用途に用いられ、積極的に水分等の吸収はしません。その性質から、現産地では送電線など、意外な構造物に着生している姿を見ることが出来ます。また、他の多くのブロメリア同様、この仲間もその殆どがロゼット中心の成長点から花序を挙げ(頂生花序)、開花、結実後にはごく一部の種を除き、親株は枯死します。原則的に、世代交代は実生、及び、開花時期に葉腋の成長点から生じる子株によって行われますが、ティランジア属のなかにも、まったく子株を出さず、完全に実生によってのみ、世代交代する性質(一回結実性植物)※注1を持つ種が存在しています。
  もうひとつ、ティランジア属には他の着生ブロメリアと一線を画する、非常に大きな特徴があります。通常、ブロメリア着生種は、ロゼットの中心部や葉腋に貯水タンクを持ち、そこから水分や養分を得るのを常としますが、ティランジア属と一部のフリーセア属(Vriesea)の中には、それとは全く異なるユニークなシステムを持つものがあります。主に乾燥した環境で生活する種に多く見られるこのタイプの植物は、貯水タンクを持たず、殆どの場合、葉や茎は銀白色〜灰白色の鱗片に覆われています。この外見の特徴から、この仲間は一般的に「ティランジア(フリーセア)銀葉種」と呼ばれており、タンクを持ち、葉に鱗片を持たない前者、「ティランジア(フリーセア)緑葉種」と区別されています。

(※注1: 生涯に一度だけ開花、結実し、実生によってのみ、世代交代を果たす。同一個体の増殖が出来ない有性繁殖植物。「一稔性植物」と呼ばれることも。)

1.ティランジア銀葉種(Grey-leaved Tillandsia)
T.ionantha var. maxima 国内外問わず、一般的に「エアープランツ/Air Plants」等と呼ばれて販売されているものは、ほぼその全てがティランジア属(ごく一部はフリーセア属)の「銀葉種」と呼ばれるタイプの植物です。この仲間は基本的に、降水量の非常に乏しい乾燥した地域に分布しているものが多く、そういった厳しい環境下で生きていくために、非常にユニークな仕組みを備えています。 これらの植物は他の一般的な着生ブロメリアに見られるような自前の貯水タンクは持たず、その代わりに、全身を密に覆った鱗片(トリコーム/"trichome"、もしくは単に"scale"とも。)を用いて生活に必要な水分や養分を得ます。この組織は大気中の湿度に応じて機械的に変形する、扁平な傘状の姿をしており、夜霧や僅かな降雨を効率よく大気中から捉え、その基部にある吸水細胞へ水分を導く役割(トリコームの組織自体は水分や有機質を吸収しません。)を果たしています。さらにはトリコーム自身によって昼間の強烈な日照を反射し、葉焼けや体温の致命的な上昇からも、我が身を守ります。(右写真/T.ionantha var.maxima
  また、このグループの植物の大きな特徴として、ティランジア銀葉種は、その殆どがCAM植物(※注2)である事が挙げられます。過酷な日照に晒される昼間には気孔を閉じて過剰な水分の蒸散を抑え、条件の和らぐ夜間に気孔を開いて呼吸を行います。(※注3)

(※注2: 「ベンケイソウ型有機酸代謝("Crassulacean acid metabolism")植物」。乾燥地の植物に見られる光合成の方式で、夜間に気孔を開いて炭酸ガスを取り込み、昼間に気孔を閉じたまま、光合成を行います。)
(※注3: ティランジア自体は従来、国内で言われてきたように「夜間に気孔から吸水」する植物ではなく、必要なときに葉面に水分があれば、太陽光の有り無しに関わらず、トリコーム組織の働きによって吸水します。)

2.ティランジア緑葉種(Tank Tillandsia)
T.hamaleana  いわゆる「タンク・ブロメリア(Tank Bromeliad)」であり、他の典型的なブロメリア着生種同様、タンクを用いて生活します。基本的に温暖、湿潤なジャングルや山岳の雲霧林帯などの地域に、その多くが分布しています。このグループの植物はティランジア銀葉種とは異なり、その殆どが一般的な植物同様、C3植物(※注4)であり、昼間に呼吸を行います。(左写真/T.hamaleana
  ただし、この仲間には同属の銀葉種のように、トリコームに全身を覆われている種こそありませんが、メキシコなどの、厳しい乾燥地域に生きる緑葉種の中には、幼株時代に銀葉種のような厚いトリコームに覆われるものもあります。また、銀葉種と緑葉種の間には、分類学上、さほど明確な区切りは無く、基本的には「半銀半緑」的な中間型が無数に存在していると考えても間違いはないでしょう。そういった種のなかにはCAM→C3と、光合成の方式を成長のレベルや自生環境に合わせて変化させるものもある、との説もあります。

※注4: C3回路(カルビン・ベンソン回路)だけをもつ植物。普通に見られる光合成の方式で、昼間に気孔を開き、光合成とガス交換を行います。


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