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ティランジア栽培Tips


 この項では、初めてティランジアの栽培をしようとする方に、栽培方法の基礎知識を紹介していこうと思います。ただし、ティランジア属自体が、南北アメリカ大陸を股に掛けて分布しており、その自生環境も、メキシコの砂漠地帯から大アマゾンの熱帯雨林、果てはアンデス山脈の雪を被るような高山地域に至るまで、あまりにも多種多様なため、そもそも、それらの栽培方法を一元的に一般論として述べるには少々無理があります。先ずはそのことを念頭に置きながら読まれることをお勧めします。

序.初心者の方が先ず、すべきこと。
枯れたストレプトフィラ・・・ 「エアー・プランツって、本当に水はいらないの?」 これはティランジア初心者の方が先ず最初に行き当たる素朴な疑問ではないか、と思います。最近は徐々にティランジアについての理解も高くなりつつありますが、やはりこの事を最初にハッキリさせておかねばならないことに変わりはありません。
  さて、答えですが、水は思いっきり必要です。もう随分前になりますが、最初にティランジアが流行したときに、上記のような不幸なキャッチコピーと共に紹介されてしまい、一般の園芸家から、終いには街の花屋さんまで、皆さんティランジアの「ミイラ」を量産してしまった時期がありました。正直申しまして、当時は筆者も1株、今にして思えばブッツィー(T.butzii)であろうかと思いますが、「水をやりすぎて腐らしては一大事!」とばかりに、しっかりミイラにしてしまい、ひどく凹んだ記憶があります。イオナンタ(T.ionantha)などであればまだしも、水が大好きなブッツィーでは無理もありません・・・。(右写真/蒸れて枯れてしまったT.streptophylla ・・・。)
  やはりティランジアも植物である以上、水無しで生きられるはずもありませんし、酷いときはブッツィー以上の、まさに毎日の灌水が必要となるような好水種ですら、「エアー・プランツ」の名で流通しているのが現状でもあります。

 このように考えてみると、(これはティランジアに限ったことではありませんが、)ある植物を元気良く育てようと思ったとき、「本来、その種は何処で、どのように暮らしているのか」を知ることが、どれほど大事であるか、お判り頂けるかと思います。そのためには、手元の栽培株や、もしくはこれから入手しようとしているティランジアの種名を知る(調べる)ことが必要です。正体さえ判ってしまえば、後は市販のティランジア関連書籍や、このサイトのような専門サイトを見つけるだけで、いくらでも情報は手に入れられます。先ずはそこから始めましょう!

 

1.日照についての基礎知識
 原産地では強烈な直射日光に曝されながら生活しているティランジアであっても、日本の夏の強烈な日差しと、それこそ熱帯並の蒸し暑さとのダブルパンチともなれば、あっという間に蒸れて枯れてしまう場合があります。例え強光を好むティランジアであっても、盛夏の時期には寒冷紗などで日差しを弱めてあげましょう。特に植物が濡れた状態での強い日差しは非常に危険です。灌水後の管理場所には充分注意しましょう!

ティランジア銀葉種
 メキシコや南米の乾燥地域が主な原産地で、原則的に強めの日照を好み、室内では日当たりの良い窓辺での栽培に適しています。ただし、窓越しの直射日光は時として強烈な葉焼けを招く場合が多く見られます。できれば30〜50%程度の遮光を施すのが理想的です。

ティランジア緑葉種
 中南米の熱帯雨林や湿潤な森林地帯が主な原産地であるため、原則的に強い日照を好みません。勿論例外もありますが、国内で流通しているほとんどの緑葉種の場合、50〜70%程度の、ある程度強めの遮光が不可欠です。ただし、種によっては強めの日照がないと葉色や花序の色など、本来の美しさを発揮できないものもあります。

2.水やりについての基礎知識
 まず知っておきたいのが、「銀葉ティランジアは夜間に気孔を開いて呼吸する植物であるため、その夜間に行う灌水は結果的に植物の呼吸を妨げてしまう」ことです。ティランジア自体は従来、国内で言われてきたように、「夜間に吸水」する植物ではなく、必要なときに葉面に水分があれば、太陽光の有り無しに関わらず吸水します。しかし、ごく一般的な室内栽培管理下に於いて、昼間の水やりは、やはり、蒸れによる致命的なダメージを引き起こす可能性があります。その点から考えると、夜間に葉面が乾燥していられるように、「日の出前後の早朝」、もしくは「日没直後の夕方」に水やりを行うのが最も適切でしょう。ただし、2〜3時間で葉面が乾く程度の、適度な通風がある場所で栽培するのであれば、従来通り、夜間に水やりを行っても問題はありません。要はティランジアの呼吸を妨げなければよい訳です。この点が、「通風がティランジアの栽培に大事である」と言われる所以のひとつでもあります。

ティランジア銀葉種
 ミスティング(霧吹き)ソーキング(数時間、植物全体を水に浸けて吸水させます。)がその中心となります。栽培環境や手がける種によっても変わりますが、2〜3日に一度のミスティング+半月に一度程度のソーキングが、室内栽培下での標準的な組み合わせと言えるでしょう。また、前述の通り、水やり後に風通しの良い場所でゆっくり自然乾燥させるのも、植物の呼吸を助ける意味で、非常に大事なポイントです。

ティランジア緑葉種
 このグループも、やはりトリコーム(タンク・ブロメリアの場合、葉腋部分に集中しています。)による水分吸収を補給の主要な手段としていることに変わりはありませんが、その構造上の利便性から、水やりの際に銀葉ティランジアのような細かい手間や神経は必要ありません。適度な通風は病気の予防のためにも大事ですが、基本的に3〜4日に一度、たっぷりと新鮮な水を灌水するだけで旺盛に発育します。ただし、逆に言えば、タンク内の渇水には弱いものが多く、水切れには充分な注意が必要です。また、株元にある程度の湿度が必要な種や、根からの吸水が活発な種に関しては、植え込んだ用土の乾燥を嫌うものが多く見られます。こういったティランジアにはタンク内だけではなく、用土の乾き具合にも注意が必要です。

※補足:屋外栽培について
 銀葉種、緑葉種問わず、もし屋外に栽培スペースがあるなら、春から秋までの暖かい季節は屋外での栽培がお勧めです。室内栽培時より遙かに管理が楽になることでしょう。その場合、置き場所にはなるべく直接雨のかからない場所が望ましく、適切な遮光が可能な場所、もしくは明るい半日陰のような場所が理想です。こういった環境で管理する場合、3〜4日に一度、たっぷり潅水するだけで、一部の慎重な栽培管理を必要とするもの以外は非常に元気に発育します。
 余談になりますが、ティランジアを直接雨ざらしにした場合、少なからず灌水の手間すらも省けますが、銀葉種には過湿を嫌うものも多く見られることから、枯らさないまでも、やはりある程度のリスクを背負うことになります。銀葉種を屋外で栽培しようとする場合、その対象各種の特徴をつかむまで、雨ざらし管理は控えておいた方が良いでしょう。

3.温度管理についての基礎知識
 国内に於いて「普及種」として販売されているティランジアのなかにはマグヌシアナ(T.magnusiana)やセレリアナ(T.seleriana)などのように、実は夏の暑さを嫌う「準高山種」ともいうべき種が幾つか存在しています。また、さほど普及しているわけではありませんが、ダイエリアナ(T.dyeriana)などのように、今度は逆に冬の寒さに弱い種もまた、頻繁に市場に流通しています。こと、温度管理に於いては、ある程度の温度管理が可能な温室栽培などでもない限り、やはり、その種ごとの素性を知ることが大事になってきます。

ティランジア銀葉種
 一般的な銀葉ティランジアは低温には比較的強く、最低気温5℃以上を維持できれば、ほとんどの種は問題なく越冬します。しかし、高温にはやや弱い傾向があり、盛夏の時期には遮光を強めたり、涼しい場所に移動させた方が良い場合もあります。また、夏場の締め切った室内などに長時間放置した場合、ほぼ全てのティランジア銀葉種は蒸れによって致命的なダメージを受ける危険があります! 屋内で栽培する場合には充分な注意が必要です。

ティランジア緑葉種
 現在一般的に入手可能な緑葉ティランジアは中南米の低緯度地域を原産地とするものがほとんどであるため、全体的に見ると、銀葉ティランジアに比べて耐寒性に劣ることは否めません。冬越しの際は最低気温10℃以上を心がけると良い結果が得られるでしょう。

4.施肥についての基礎知識
 基本的にティランジアは銀葉、緑葉問わず、施肥なしでも充分元気に育てられますが、成長を早めたいときなど、水の代わりに千〜二千倍程度に希釈した液肥を使用するとさらに良い結果が得られます。ただし、銀葉ティランジアの場合、あまり頻繁に施肥を行うと、葉面で肥料分が濃縮されてしまい、逆に障害を引き起こしてしまうこともあります。また、常に湿気を滞留させた状態での施肥も、カビや藻類の発生により、植物が汚れて見苦しくなってしまう場合があります。 それに比べ、緑葉ティランジアはタンク内に新鮮な水が充分に保たれている限り、少々施肥の頻度が上がっても肥料分の過多による障害の心配はほとんどありません。当然、積極的に施肥を行った株の方が素晴らしい開花を迎えられます。

5.病虫害についての基礎知識
 銀葉ティランジアは非常に罹病し難く、これといった重い病気は存在しませんが、緑葉ティランジアには伝染性の軟腐病が発生することがあります。しかし、その際にも処置を怠らなければ、致命的なダメージを被ることは非常に希で、罹病株の隔離、及び市販の一般的な抗生剤や殺菌剤を与えることで、充分に対処可能です。また、ブロメリアに限らず、基本的なポイントですが、鋏やピンセットなど、普段使用する園芸用具の事前消毒も、病気の予防には非常に効果的です。
  次に、ティランジアの虫害ですが、代表的なものに、銀葉、緑葉問わず、各種カイガラムシが挙げられます。ことに銀葉ティランジアの場合は成長点に潜り込まれてしまうとなかなか厄介で、完全に駆除するのはかなり大変です。さらには、カイガラムシはスス病を呼ぶ原因ともなりますので、見つけ次第、駆除し、薬液浴させるなど、速めの対処が必用です。また、鉢に仕立てた株にはネジラミが発生する場合もあります。緑葉種など、そこから調子を落とす場合も良くありますので、こまめなチェックが肝心です。

6.仕立て方についての基礎知識
 先にも触れたように、巷間で「エアー・プランツ」として市販されているティランジアのなかには、鉢に仕立てて栽培しないと非常に管理が難しくなる種が少なくありません。タンク系は言うに及ばず、特にセレリアナ(T.seleriana)やブルボーサ(T.bulbosa)などの壺型種は、植え込むのと植え込まないのとでは、結果に雲泥の差が出ます。

ティランジア銀葉種
この仲間は基本的に乾燥好きではありますが、単に栽培棚に転がして置くよりは、やはり水苔や椰子殻チップ等で素焼き鉢に植え込むか、またはヘゴやコルク樹皮などの素材に着生させた方が保湿力が上がり、遙かに良い結果を得られます。室内であれば、籐製のかごなどに乗せて、そのまま着生させるのも、美観、植物の健康の両面から考えて良いアイディアです。

ティランジア緑葉種
この仲間は原産地では苔むした樹幹や湿った岩壁などに着生していることが多く、水苔等での鉢植え栽培が最も適しています。勿論、着生させての栽培も充分に可能ですが、大抵の緑葉ティランジアは株の基部周辺が湿っている状態を好むことから、温室栽培などでないかぎり、適切な湿度の維持には少々難しいものがあります。一般的な栽培条件下では鉢植えに仕立てるのが無難でしょう。

 

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