4話 21歳
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ちびなすは、いつもより少しはやめの時間にラウンジでお菓子を食べていた。
夕飯は控えめにとって、寝る前のこの時間帯にお茶を飲みながらいくつかのケーキをつまむのがちびなすにとっては最高の贅沢なのである。普段なら滅多なことで夜の間食など許されることはないが、退屈な船旅を良い子にして我慢することと引き換えにジジイが目を瞑ってくれている。
ラウンジはそれほど広くはない。ソファが窓の近くに並べられており、おしゃべりやお茶を楽しむ船客達はそこに腰掛け、思い思いに時間を過ごしている。昼間は混雑しているが、夜の時間帯はすいている。
年配の夫婦や一人きりでお茶を飲むご婦人に混ざって、随分身体の大きい男が一人うろついていた。ケーキや紅茶がまるで似合わぬ男だった。頭は緑で、服はカーテンのように重たげでどう見ても堅気の人間ではない。
「こんばんは」
じろじろ見ていたら目が合ったので、とりあえずちびなすは挨拶をした。カーテンを着た男は急にちびなすに話しかけられたので、まさか自分が挨拶をされているとは思わなかったようだ。ちらりと一瞥をくれただけで、「こんにちは」と言い返しはしなかった。
ちびなすは少し、むっとした。
挨拶をしたのに挨拶が返って来なかった時、大抵の人間はむっとするものである。
「こんにちは」
もう一度、ちびなすは挨拶した。
今度はようやっと相手もちびなすの挨拶が自分に向けられていることに気付いたようだ。
「おう」
頷いた。
おう、は挨拶の言葉としては随分簡素な種類に入るが、ちびなすはそれで充分だと感じた。
「ガキがこんな時間に何してんだ」
カーテン男は酒を瓶から呷りつつ、質問した。
ラウンジに置いてある酒は、そのような飲み方をするためのものではない、軽く寝る前に気分をしずめる程度に飲むためのものだ。たしなみという程度のものなのである。
しょうがねえな、と思ったが、知りあったばかりの相手にそれを指摘するのは無作法かと思ったので、ちびなすは目を瞑ることにした。
「ケーキを待ってるんだ」
「ケーキ?」
男は首をひねった。
「そこらにあったぞ」
「あれとは別の、焼きたてのパウンドケーキが来るんだよ、もう少し待ってたら」
「へえ」
男は瓶から酒を呷る。アルコールの甘い香りがする。
「こんな夜中に、ケーキ食いに来たのかよ、ガキが、一人で」
珍しいもののように言われたのでちびなすは心外だった。ちびなすはこんな夜にジジイをつきあわせるような身勝手な子供ではないのである。
「そーだよ、一人で来たよ」
つんと澄まして答えてやる。
「親は?誰かと待ち合わせか?」
「別に」
しつこく聞かれて気分を害した。
「一人だって来れるよ!」
唇を尖らせて男を睨む。
こいつは失礼な奴だな、とちびなすは男の評価をうんと低くした。
なんとなく誰かしらと夜は一緒に遊ぶ約束をしていたような気もしたが、ちびなすにとって昼間の出来ごとはおおむね大分過去の出来ごとのように感じられたので、ちらりと一瞬胸によぎって、それからどうでも良いことのように記憶からふいっと消えた。今はもうこの眼の前の馬鹿な男のことで頭がいっぱいなのである。
どうにかして自分が立派な子供であることを思い知らせたかった。
ちびなすは男のまわりをうろうろした。
「なんだよ」
男は不思議そうにちびなすを見る。
「あのな、ええと、そんなふうに、瓶からお酒を飲んだら駄目なんだぜ」
とりあえず、ケチをつけた。
己の不調法に対して、子供から正しいことを口にされて注意されたら、大人は困って「あらまあごめんなさい」と言うものなのである。
ところがカーテン男は一味違った。鷹揚にちびなすを追い払う仕草をして、
「うるせえなァ、小言いいやがって」
と言ったのである。
これはただことではない。ただごとでないような、駄目な大人である、このカーテンは。
「おい、駄目なんだぞ」
仕方なくもう一度ちびなすは繰り返した。それでもカーテンは煩そうにするばかりでこれと言って堪えたふうもないので、ちびなすは困り果てて、「廊下にグラスがあるからアレを使えよ」と、カーテンに教えてやった。これは本来ならカーテンがちびなすに自分から尋ねるべきことである。「瓶から飲んで悪かった、ついてはきちんとグラスを使いたいが、おまえはグラスがどこにあるか知っているか」と。そうしたらちびなすは、グラスが見つからなかったなんて言い訳だな、と心のなかで呆れながら、「あっちだよ」と教えてやれば良かったはずなのである。
カーテンはちびなすにとっては常識破りの大人だった。
ちびなすにグラスの場所を教えられて、面倒くさそうにカーテンは立ち上がった。
「廊下……、どっちだ」
「あっち、右側だ」
「そうか」
頷いたカーテンは、右も左もちびなすが指さしたドアも無視して、とりあえず目に入ったらしき一番手前の扉から出て行こうとした。
「ちょっと、どこ行こうとしてんだよ、そっちは階段だよ、グラスはあっち」
ちびなすは慌ててカーテンを引きとめた。
「どっちだ」
「あっちって言ってるだろ」
「ガキの説明は分かりにくいな」
「この上もなく分かりやすいだろ?!廊下に通じる扉は一つだけだ!」
「なんだよ、おまえ、ぎゃんぎゃん煩せえな、うちの船のコックみたいじゃねえか」
目を細めてカーテンは悪びれもせずに笑っている。
ちびなすは完全にあきれ果てた。
手を腰にあててカーテンを見上げる。
「アホ過ぎて見てらんねえよ、おれがグラスを取って来てやるから、ちゃんとここで待ってろよ」
なんでおれがこんなカーテン野郎の世話なんか、と思いながらも見捨てておけずにちびなすはせっせとグラスを運び、ついでにつまみになるような料理を皿の上に盛り付けてカーテンのところに持って帰って来た。ほら、と渡すと、おう、と受け取る。
「あいつも良く、そうやってあれこれおせっかい焼いてやがったな」
カーテンは機嫌よくちびなすの差出したつまみを口に放り込む。ちびなすはよく考えずにチーズばかりを皿にのせていたが、「黄色いな、てめえの頭みてえだ」と言うばかりで気にもしていないようだった。
「おせっかいじゃなくて、おれはおまえに呆れているんだぞ」
ちびなすがぷりぷり腹を立てるが、はいはい、と返される。
「あいつもよくそうやって、アヒルみてえにくちを尖がらせてた」
大きな手でわしわしと頭を撫でられた。失敬な男である。まだそんなに親しくもないのに、気安く、犬の子のように撫でるだなんて……。
男の言う「あいつ」というのが誰だかは知らないが、ちびなすは大いに同情した。
叱っても注意しても、「おせっかい」扱いをされるだけだなんて、叱る意味がない。
カーテンはやけに自信ありげな顔で
「まあ、おれもあいつも素直じゃなかったからな」
と言った。
「あいつはおれに、余計なことを言って構いたかっただけだ」
そんな馬鹿な……、とちびなすは呆れた。
子供にここまで呆れられるだなんて、本当に駄目な大人である。
「グラスなんか使ったって、洗う手間が増えるだけだ、どうせ一本飲みきっちまうんだから……、それなのにうるさく、おれの飲み方に文句を言った」
おまえみたいにな、とカーテンはまたもちびなすの頭をわしわし撫でる。
ちびなすはすっかり諦めて、されるがままになっていた。カーテンは体温が高くて、頭がほかほかして少しだけ気持ちが良い。
「人のあと、いっつもついて歩いてグワグワ文句ばっかり言ってたな、かまってくれって普通に言えないんだろう」
ひとしきりちびなすの頭を撫でるとカーテンは満足したのか、グラスに酒をなみなみと注いで、ぐいと飲み干した。それからまたグラスに酒を注ぎ、また飲む。
「つまみも食えよ、それにそんなにどんどん飲むなよ」
こんな行儀の悪い飲み方をする人間は、このラウンジにはいないのだ。もうっ、とちびなすはゾロの手を引っ張る。
「なんだ、ちびのくせに、心配すんな、このくれえ飲んでもおれは平気だ」
「ばかっ、心配してるわけじゃねえよ」
おまえのお行儀が悪いからだ、とちびなすは言いたいが、カーテンはまるで分かっていない。
「ほんとに、別におまえのこと、心配してるわけじゃねえんだぞ」
ばかっ、ばかっ、とちびなすはカーテンの腕を叩いたが、カーテンはそれでも、平気そうに笑うだけだった。
「あいつもいつも心配してたな、おれは飲みすぎだって。つまみも食わねえと身体に悪いって」
思い出すように遠くを見て話す様子は得意げで楽しげで、ちびなすにはもう、手にも負えない。
「離れてみねえと分からねえこともある……」
カーテンはしみじみと殆ど独り言のように話した。
「あいつはいっつも身体だけの関係だって言ってたが……、いや、これはガキの前でする話じゃねえな」
急に照れたように酒をぐいぐい飲んだ。
ちびなすはただ、唖然と、カーテンを見守るばかりだった。
ちびなすには分からないが、カーテンは何か、ちびなすには分からない何かしらの自信が満々にみなぎっていて、何を言われてもまったくこたえない種類の人間のようだった。



まだ時間が早く、焼き立てのケーキが来るまでには少し待たなくてはならなかった。
間繋ぎに紅茶のシフォンケーキを皿にとりわけて、ちびなすはよいしょと運んできた。自分でもよく分からないが、カーテンの分まで運んでしまった。あの大人は、あまりにも駄目そうな雰囲気がするせいで、子供の自分でさえも見捨てることが出来ず、こうやって世話を焼かされてしまうのである。それがあの男の「とくしゅのうりょく」らしい。あまりのことにちびなすは慄いた。おののきながらも、お茶まできちんといれてトレイに載せ、カーテンがどっかり腰を下ろしたソファまで運んだ。ちなみにトレイはボーイがそこいらに放置していたものを勝手に拝借した。
「ここのケーキはおいしいんだ」
ちびなすはフォークでケーキを大きく切り分けながら言った。
「でもお茶が紅茶しかないんだ、この船」
「へえ」
カーテンは酒ばかり飲んでいるのでとくに不自由を感じていないようだった。
「なんか駄目なのか、それだと」
「駄目に決まってるよ」
つんと澄ましてちびなすは答えた。
「紅茶のシフォンケーキを、紅茶のにおいのする部屋で、紅茶を飲みながら食べたら、香りが分からなくなっちゃうじゃないか」
「へえ」
カーテンがまた酒を飲んでから言った。
「そんなこと、考えてみたこともなかったな」
カーテンはようやく少しだけちびなすに感心したようだ。
「ここのケーキは特別においしいんだ、おれは料理長にきちんと美味いって言ってやった」
「おまえが?ここの料理人に?」
「そうだ」
ジジイだってちゃんとそうするからな、とちびなすは胸を張る。ようやくカーテンは少しだけちびなすへの敬意をもったようである。すげえな、という顔でこちらを見ている。その「すげえな」が、何か少し、ちびなすの予想と違う方向性の「すげえな」のような気がしたが、とにかく感心されたのは間違いないだろうと思われた。
「どうやって伝えたんだ、まさか呼びつけたのか」
くっくっ、と笑いながらカーテンが言う。
「違うよ」
ちびなすは首を振った。
「お手紙を書いたんだ、ちゃんと料理の絵も書いた」
そこまで聞いて、カーテンはふきだして、むせて、笑った。
「馬鹿にするなよ!」
立ち上がって、ちびなすは失礼極まりないカーテンの態度を非難した。
「すまん、すまん」
カーテンはまだ笑っている。
それから一口ケーキを食べて、「確かにうまいな」と頷いた。
「そうだろ」
ちょっと得意になって、ちびなすはシフォンケーキをフォークで切り分け、あーん、と自分もひとくち食べて、それから「おまえも食う?」とカーテンにもうひときれ勧める。
「あいつの作るもんが一番美味いとおれは思うが、世の中には確かに、特別な、美味い料理ってのがあるもんだ、前は口に入ればなんでも同じだと思っていたが……」
軽く目を瞑り、カーテンは何か考えふけっているようだった。
暫くしてから、ぱっちり目を開ける。
「おまえのようなガキにする話じゃねえが、これはおれの独り言だ、少し聞いててくれねえか」
話相手が欲しいんだ。
小さなちびなす相手に真面目な顔で、カーテンはそう前置きしてから話しだした。



わけあって、おれは仲間のもとを離れて暫くの間、修行していた。
何の修行って、あれだ、剣の修行だ。
順調に修行をこなし、おれは強くなった。ある男がおれの師匠役をしてくれた、まあ、ろくでもねえ、変なおっさんだったが腕は確かなんだよ。
おっさんは古い城に住んでいた。城はほんとに古かったが家政婦もいてそれなりにまあまあ清潔だった。飯もちゃんと出たし、急に転がり込んだわりにはちゃんと世話してもらって、有難かったと思う。
かれこれ二年ぐらい、そこに居たかな……、おれはそろそろ仲間と合流するべき時期だと考え、師匠役の変なおっさんに、これまで世話になったがもう帰るつもりだと言った。おれの仲間?海賊だよ。なんだ、そんな目で見るな、別にだからっていきなりてめえに乱暴したりしねえ。なんだ、別に怖くねえのか、そうか、だったらいい。
おっさんは古い城で一人で退屈してるような奴だったので、おれがいなくなると退屈だと思ったんだろうな。急に機嫌が悪くなった。
もう暫く居たらどうだと言われて、おれは仕方なく答えた。
「そろそろ、うちのコックのメシが食いてえんだよ」
それまで、仲間の話なんか、あまりしたことがなかった。
目的のために強くなりてえって話はしたが、うちの船の飯が食いたいなんて、自分でも自分がそんなこと考えてるなんて、口から言葉が出て来るまで思わなかったな。急に思いついて、口からぽろっと出て来ちまった。
けど、一度そう考えだすと、どうにもコックの飯が食いたくてたまらない気がしてきた。
それまでは、料理なんて食えればなんても良いって思っていたが、慣れた味が恋しくて、腹が減ってしょうがねえみてえな気分になった。自分でも驚いた。
食事などはうちの城でも充分なものを出す、とおっさんは言った。食いたいものがあれば言えばいい、ここにはなんでもあると言われた。
けどおれは、どうしてもコックの料理でないと駄目だと思った。
理由は分からない。
あいつはよく栄養がどうこうって言っていたから、栄養を身体が必要としていて、それで急に食いたくなったのかも知んねえと思った。それに、あいつの料理は、美味いんだ。
あいつの料理は、美味い。
まあ、食いたいもんはしょうがねえだろ、もう帰る、と支度を始めたおれに、おっさんは、
「慣れたものが一番だと考えるおまえの気持ちは分かる。だがそれが一番で他のものは見ないというのは、それはいかにも料簡が狭い」
と、言いだした。
この世にはもっと素晴らしい料理があるそうだ。
完璧なレシピで、美味いだけじゃなくて強くなれる、食べた奴の気持ちまであやつるような、すげえ料理があるという話をおっさんは聞かせてくれた。完璧な身体を作り、今以上に強くなることも出来るかも、と言われた。
おれは料理になんか、今まで興味なかったんだ。今だってねえな。
けどおっさんの話はすげえと思った。
この海のどこかに完璧なレシピを持つ料理人達がいて、そいつらの住む島は美しく、栄えて、富んでいて、それでいながら自由な国なんだそうだ。珍しい動物がいて、入江はいつもおだやかで、気候もあたたかくてとても良い。
「その国で修業した料理人をここへ呼び寄せて料理させることだって、おれには出来るのだぞ」
おっさんはおれにそう言った。
「ここにはなんでもあるのだ、おまえが足りないと思うべきものなどない」
珍しい、すげえ話だな、と思ったので、おれはおっさんに言った。
「そんな珍しい料理があるんなら、あいつに教えてやりてえなその話」
おれは、あいつはきっと、聞きたがるだろうと思ったんだ。
そしたら、おっさんはもうあきれ顔で、勝手にしろ、とおれに言ったんだ。



「おまえの仲間のコックの料理よりすげえ料理があるって、そのコックに言うためにおまえは戻るのか」
ちびなすは呆れた顔でカーテンを見た。
「そうだ」
カーテンは自信満々に頷いた。
「なんで?」
「なんでって……」
理由を聞かれるほうがおかしいというふうに、カーテンは首をひねった。
「あいつに話したいからだ、おれが」
そう答えてカーテンは、偉そうに腕を組んで紅茶を飲みほした。いつの間にか酒の瓶は空になっていた。
「仲良しだったの、そのコックと」
「いや」
カーテンは首を横に振った。
「喧嘩ばっかりだ」
「じゃあ、おまえの話なんか聞きたがらないかも知れないじゃねえか」
「何言ってんだ」
カップをサイドテーブルに置いてから、カーテンはちびなすの頭を軽く小突いた。
「言ったろ、アイツはいつだっておれに突っかかってきたが、それはおれにかまいたくて仕方なかっただけだ、素直じゃねえんだ」
「へえ……」
ちびなすは、本当に呆れた。
なんという、駄目で馬鹿なカーテンだ。
カーテンが当然のようにちびなすの頭をぐりぐりやるので、なんだよもう、とちびなすは席をたった。立ち上がったちびなすに、カーテンは
「話してたら腹が減ってきたな、おれはあっちで飲んで来るから」
と、甲板に座席を構えたバーを指さした。あそこなら、夜でも若干の小料理が出るのだ。それに酒も。
別にいいよ、とちびなすは肩を竦めた。
「おれは、向こうで絵本を読む」
ぴょい、と駆けていったちびなすの背中を見送って、悪いな、とカーテンは声を掛けた。
ちびなすの、呆れ顔がカーテンは少しだけ気になったようだ。



「なんだ、寂しそうなツラしやがって、もっと遊んで欲しかったのか、アイツ」
ゾロは腕を組んで、時計をちらりと見る。
いきなりこのおれに懐くとは、肝の据わったガキである。
そう言えば今日は自分の誕生日だった。
あと数日で仲間と合流出来るだろうが、誕生日を皆で過ごせたら、うちのコックは喜んだだろうに。
他人のために何か作るのが好きな奴だからなァ、と考える。
アホコックと遊んでやることは今はまだ出来ないが、あのガキともう少し話してやるために、起きててやってもいい。一杯飲んだら戻ってやるか。
仕方ねえなあ、と考えて、ゾロは伸びをひとつした。
愛情は紅茶の香りのようなものである。
毎日のようにふんだんにあれば、あまり感じることがなく、久しぶりに出会うと、強く感じる。



ほどなくして、ラウンジには焼き立てのアップルケーキの香りが漂ってきた。
ちびなすは時計を見て、望みのものが決められた時刻に届いたので、嬉しくなった。
布張りのソファに腰掛けると、今日みたいな夜は、ちょっとした王様にだってなれるのである。
王様に、あと必要なのは、侍従。



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