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ティランジア・ストリクタ (00' Nov. 日本ブロメリア協会会報 第7号掲載 : 04' May.改稿)


序.更新情報(2004年5月)
 本稿は、筆者が2000年度の日本ブロメリア協会会報第7号の為に書いた原稿です。今回は内容に全く手を入れていませんが、日本語が妙な部分は若干、削ったり直したりしています。・・・しかしストリクタの変種ディスティカ、実物を見てみたいですねぇ。夢に出そうであります・・・。

<以下本文>

 皆さんおなじみのティランジア・ストリクタ(Tillandsia stricta)は、国内においてもイオナンタ(T.ionantha)やブルボーサ(T.bulbosa)と並んで非常に良く普及しており、その丸々として可愛らしいピンク色の花苞にコンパクトで端正なロゼット、そして丈夫で良く殖える素晴らしい性質故に、愛好家のみならず広く栽培されている植物です。今回はこのストリクタについて、ご紹介することにいたしましょう。


分類の概要
 本種はベネズエラからアルゼンチン、内陸部ではパラグアイまで、南米大陸の大西洋岩一帯に広く分布するティランジアで、現在は以下のように分類されています。

  Tillandsia stricta Solander
    var.stricta (基本変種ストリクタ)
    var.stricta forma nivea Leme (品種ニベア)
    var.albifolia H.Hromadnik & Rauh (変種アルビフォリア)
    var.disticha L.B.Smith (変種ディスティカ)

 本種には以上の3変種1品種が存在し、皆さんが普通に街角で見かけるストリクタは、そのほぼ全てが基本変種(var.stricta )に分類されます。また、この基本変種には葉の持つ質感によって、ソフトリーフ(柔らかで細く、水々しい葉を持つタイプ)、そしてハードリーフ(文字通り、堅くバリバリとした質感のやや幅広の葉を持つタイプ)と一般に呼ばれる2タイプがあり、それぞれが広く国内に流通しています。さらに、この変種の花序及び花弁が白色である品種が「ニベア」として分類されており、さすがに私もその実物を直接目にした経験はありませんが、写真で見る限り、実に美しい植物です。もし国内で手に入るようになった時には、まさに愛好家垂涎の逸品になることは間違いありません。また、最近はやや長茎タイプで葉の全面に厚く鱗片を纏った珍しい変種アルビフォリアなども海外から輸入され、ごく希ではありますが市販されているようです。この変種は、外見はストリクタというよりは白っぽいアエラントス(T.aeranthos )のように見えることから、余程のベテラン愛好家でもない限り、目の前にあってもストリクタの変種とは気が付かないことが多いのではないでしょうか。また、基本変種よりも地味な開花を迎えるため、基本変種と比べてもかなり強靱な植物であるにも関わらず、海外に於いても、さほど人気のある植物ではありません。最後に3番目の変種ディスティカですが、非常に希有な植物であり、現在でも恐らくは標本でしか確認できないのではないでしょうか。資料を調べると、「少数の花が2列生し・・・」という記載があるので、ハナアナナス(サイアネア/T.cyanea)のようなヘラ状の花序を持つストリクタなのだろうとは思いますが、推測の域を出ません・・・。これも是非、実物を見てみたいところです。

栽培について
 先にも少々触れましたが、本種は南米大陸の大西洋岸沿いに広く分布する植物ですが、極度に高温多湿であるアマゾンのような熱帯雨林的環境は基本的に好みません。主産地であるブラジルな海岸山脈周辺などでも、恒常的に湿度の高い林床部分を避け、日当たりと風通しの良い疎林の樹上や崖地等を選んで生育しているのが一般的です。しかし、イオナンタなど、さらに乾燥した環境を好むメキシコ産の他の普及種とくらべると、ストリクタはそもそもの自生環境の違いによって、それらの植物よりも遙かに高い空中湿度を必要とします。そのため、全てを同一の管理で栽培しようとした場合、本種のみが乾燥によるダメージを受けてしまう場合が多く見られます。
 そういった点から、この植物を手がける場合は、たとえイオナンタやジュンセア(T.juncea )などが元気良く成長している環境であっても、葉が全体的に丸まってきたり、株自体に張りが無くなってきたりするなどの危険信号を示した時には、早急に水やりの頻度を増やしたり、またはソーキングを施す等の処置が必要となるでしょう。  
 そして、これはこれまで本種をうまく栽培できなかった方に、個人的に強くお勧めしますが、本種はヘゴ板やコルク樹皮に着生させるだけではなく、状況によっては素焼き鉢に水苔等で植え込み、株全体の保湿性能を補ってあげると素晴らしい結果が得られる場合があります。やや、鑑賞時に「着生植物」らしさが失われてしまい、本来の趣が失われてしまう側面はありますが、開化後の繁殖状況も良好で、私個人の経験ではありますが、着生させている株と同等か、それ以上の良好な発育を示す場合が多いように思われます。

水やりと施肥
次に、この植物に対するおおよその水やり頻度についてですが、一般家庭の平均的な室内環境下では「2〜3日に1度の夜間の灌水、もしくは10日に一度のソーキング」というのが標準的ではあります。しかしストリクタ自体は、他の銀葉ティランジアと比べてもかなり水が好きな部類に入りますので、必要以上に水のやりす過ぎに神経質になる必要はありません。また、本種は水分が不足してくると先述したように非常にわかりやすいサインを示す植物なので、定期的な水やりに拘わらず、日々植物のご機嫌を伺いつつ、水不足の兆候を見逃さずに水やりをする、という方法も充分に可能でしょう。さらに、肥培の効果があがりやすい植物でもあり、ごく薄めた液肥を水代わりに使用するのも良い方法です。

屋外栽培
 さて、次に本種を屋外で栽培する場合ですが、屋内栽培ほど気を使う必要はありません。しかし、例え雨ざらしの環境であっても、さすがに梅雨時や秋の長雨シーズン以外の季節にはどうしても乾燥気味になりがちです。特に盛夏の時期に雨が少ないと、暑さ、寒さにはそれなりに耐久力のある植物とはいえ、徐々にダメージを蓄積していってしまうので注意が必要です。やはり、降雨が頻繁にあるシーズン以外は室内同様、最低でも3〜4日に1度の灌水は欠かせないでしょう。また、成長を促進させるために灌水時に薄めた液肥を水代わりに使用することと、弱った植物を回復する際のソーキングについては、栽培場所の室内外を問わず、大きな効果を発揮します。

冬の管理
 最後に冬場の管理についてですが、イオナンタほどではないにしろ、かなり寒さには強い植物なので、最低気温が5℃以上あれば、まず枯死することはありません。ただし、気温が高いに越したことはなく、日中だけでも加湿されている場所で栽培するのが望ましいのは確かです。 
 水やりに関しても通常通りで特に構いませんが、春から秋のシーズンよりは、やや水やりを少なめに管理した方が、寒さに対する抵抗力が上がり、さらに確実に冬を越すことができるでしょう。
 冬季の施肥はティランジアの種によっては避けなければならない場合もありますが、本種に関しては何ら問題はありません。

 
最後に
 以上、駆け足でストリクタについて紹介してきましたが、この植物は簡単なコツさえつかめば他の普及種同様、丈夫で毎年のように美しい花を咲かせてくれる素晴らしいティランジアです。また、近年はアメリカや南米の複数の業者が多様なスタイルを持つ実に美しいストリクタの選抜品種や、さらにはフェザー・ダスター(T.Feather Duster)に代表される、ストリクタとその他のティランジアを交配して作出された見事な園芸交配種を量産していることもあり、国内でそれらを簡単に入手できるようになる日も近いことでしょう。前回ご紹介したイオナンタ同様、最初に手がけるティランジアとしては美しさ、育て易さ、殖やし易さの全てを兼ね備えた実に優秀な植物なので、これから手がけようとお考えの方にはまさにうってつけの、自信を持って推薦できるティランジアです。私としても、今後、本種のさらなる普及を望むばかりです。

<了>

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