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タチアナ Tachiana
美しいタチアナは血統書つきの猫だった。
家族は美しいタチアナをお姫様のように大切に育てた。
家族には一人息子がいた。
一人息子はタチアナと共にスクスクと仲良く育った。
タチアナはますます美しいレディに成長したが、
ある日家族の一人がタチアナの模様に疑問を抱いた。
天国から地獄。タチアナは捨て猫になった。
やさしかった家族は、雑種が混じったタチアナを
『騙された』と悔しがり
12歳になった一人息子は涙をいっぱいためて、ただ、佇んでいた。
6年後、一人息子の心は爆発し、家族は崩壊した。
一人息子は忘れてはいなかった。
信じていた家族の愛が一瞬に消え去り
何事もなかったように笑って食卓に向かう家族を。
一人息子は忘れてはいなかった。
あの時タチアナを守れなかった弱い心の自分を。
一人息子は、そんな自分自身を許せなかった。
すべてが壊れ去ろうとした時、一枚の写真が彼の足もとに舞い落ちた。
それは6年前のタチアナの写真だった。
凛としたタチアナの姿は気高く、渦巻く全ての色を純白にした。
タチアナは誰も恨んではいなかった。
楽しかった思い出を写真に込めてタチアナは旅に出た。
美しいタチアナはたくさんの仲間と出会い、たくさんの幸せに出会った。
6年後、一人息子の心が爆発した時、タチアナは車に轢かれた。
風に揺られたタチアナの写真は、懐かしい一人息子の元に飛んで行った。
一人息子は写真を抱きしめ大声で泣いた。
12才の時、声を出せなかった自分を取り戻すように大声で泣き続けた。
タチアナの写真をポケットに入れ、一人息子は家を出た。
そしてまた6年後、
一人息子は新しい家族を作り、公園に捨てられていた子猫を連れて帰った。
子猫に生まれ変わったタチアナを連れて帰った。
