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キナコ Kinako

秋の終わり、キナコは目星をつけていた家を訪ねた。
お父さんは漫画家。
お母さんは漫画家志望のフリーター。
居候の友人は夢追い人。
『お試し期間』を経てキナコは永住を決めた。
居心地が良かったのかキナコは次々と仲間を呼びよせた。
増えてゆく猫たちにとまどいながらも三人は
心が何かで満たされてゆくのを感じていた。
集まった15匹の猫たちと3人の暮らしは騒がしくも楽しいものだった。
どんな困難も苦難も皆で一緒に乗り越えた。

年月が流れ、
キナコはおばあちゃんになっていた。
お父さんは2度の大病で漫画家を休業し
猫をモチーフにした作品創りを始めていた。
お母さんは漫画家を断念して、猫の人形を作っていた。
同居人は猫達との日々を物語にしながら夢を紡いでいた。
15匹の仲間も9匹になって少し家が寂しくなっていた。


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おばあちゃんになったキナコは、懐かしそうに一枚の写真を毎日見ていた。
そこには若い頃のキナコが写っていた。
幸せを探していた日のキナコが写っていた。

子猫のキナコはたくさんの家を渡り歩いた。
とびっきりの可愛い声で愛嬌を振りまいた。
何度、くじけそうになっても幸せを追い求めた。
キナコの幸せは、暖かい家庭の温もりだった。
子猫で捨てられる前の、抱かれた腕のほのかな思い出だった。

キナコは幸せを追い続け、あきらめなかった。
そしてめぐりあった3人の家族に、
とびっきりの可愛い声で「にやぁん」と声をかけた。
3人も同じ温もりを探し求めていた。

キナコは17年の生涯をこの家で閉じた。
3人の暖かな温もりの中でキナコは静かに目を閉じた。
たくさんの幸せを皆に残して
キナコは静かに旅立った。
閉じた