ラブリィ スイート ホームタウン
コーダ(2)





執拗に性器を擦られ、布越しに先端を探られ、限界が来るのなんてあっという間だった。
なんとか声を上げまいと自分のシャツを噛んだり、足をじたばたさせたり、息をとめてみたり、苦しかったのですぐやめたり、また足をじたばたさせたりしてみたが、どうにもやり過ごせない。鼻から変な溜め息が漏れまくっている。なんてゆうか、こう、あふん、みたいなマヌケな鼻息が。
「……うぅッ……うッ……」
細い声で喘いでいたサンジが、ふいにむくっと身体を起こしたものだから、ゾロは驚いて手を止めた。
完全にその頬は紅潮し、目がうつろになっている。
そして何かを探すように、ふらふらと辺りを探る。
彷徨う腕はやがて衣類の山へたどり着き、這うように黄色い頭が前進する。
「………ふッ」
腹這いになって衣類へ顔を埋めたサンジは、その積み重なる布地に顔を押し付けて、くぐもった声をあげる。
(ちょっと声出しすぎだろオレ……超かっこ悪ィ)
さすがのサンジも反省しかけていた。
「おい、大丈夫かよ、オマエ」
追いすがって再び下肢へ手を絡めながらも、念のため、ゾロは尋ねてみた。
「ん……んん……ウン」
律儀に返事がかえってきた。
大丈夫らしいので再開したが、相手がうつ伏せでは、手が動かし辛い。とりあえず背中からうなじまで、ぺろりと舐めたら黄色い頭が俯いて「むぐっ」という変な声を出した。
どうにかベストポジションを探ろうと腕の角度を変えたりしながらそこを弄ると、低く、サンジがうめく。だが今度は服で口を抑えているので、殆ど声は響かない。
衣類の中へ伏せた、その横顔を見ると、何だか、丁度ゾロのぱんつの上に顔を埋めていた。
今はそれどころではないので、気付かなかったことにした。
「オイ」
ゾロが声をかけると、サンジはカオを埋めたまま、こくこくと頷いて応える。
ぎゅっと全身をかたくしている様子が拒絶されているようで、ゾロは舌打ちした。
なんだ、あんなしつこかったクセに。
あんな煩くしてたクセに。
悪いことしてるみたいな気分になって、困る。
困るなら止めればいいだけのことだが、どういうわけか、もう後に退けないと思う自分が居る。そんな自分にも、困る。
「なぁ……」
こっち向けよ、とゾロはなるたけ優しく言ってみた。
サンジは返事しなかった。
それどころじゃなかった。
なんかもう、早くもイきそうだった。
身体の芯がやけに熱くて、じん、と痺れる。
(やべェ)
どうしよう、と思った。
(やっぱ、「もうイく」とかゆったほうが良いんだろうか)
いやでもそれはなんか恥ずかしくないか?
「…………ふ、あ、あぁ……」
(けど、普通言うよな、なんか、エロい漫画とかだと、必ず言ってるよな)
いやん、もういく、とかって言ってるよな。
言うべきか。
言うのか。
あー……
恥ずかしいだろ。
そんな、イきそうとか、そうゆうの、ひとに言うようなことじゃねえだろ。いや、言うべきことなのか。どうなんだ一体。
「…………。」
「……おい、どうした」
考えれば考えるほど、凄く恥ずかしいような気がしてきた。
「どうしたッつってんだろ」
「……うっ、う、う、うっせ……かんが、え、が、まとまんねぇだろ……はぁ」
「考え?」
「んっ……んんッ、んッ」
い、言わねえと。
言うなら今だろ。
出ちゃったあとに言ってもしょうがねえだろ。
よし、言うぞ。ちゃんと言うぞ。
「ぞ、ゾロ……」
「ん?」
「い……」
「ん?」
「あッ、やっぱ、言えねェ!」
「は?」
「ひ、ひ、ひみつだっ」
「はぁ?」
相変わらずわけの分からないサンジの発言にゾロは首を傾げつつも、手の動きだけはちゃっかりと、下着の上からサンジのモノをぎゅっと握った。
ひくっ、とサンジの身体に力が入る。
(ダメだ、出る、絶対出る)
まだ、全然、服、脱いでねえ、のに。
「どうかしたか」
こんな場面でのサンジのおかしな態度に、おかしいのはいつものことだ、と思いながらも、さすがのゾロも気遣いを見せる。
心配させちゃいけねえ、単に気持ちイイだけなのに。
そう考えたサンジは思わず言ってしまった。
「あ、な、……ん、んぁッ、なんでもねえ!!」
発言するために噛み締めていた歯をゆるめたのが悪かったのか。
その瞬間、頭の中が真っ白になって、……イッた。
今まで味わったことの無い、快感だった。
身体の芯、という部分があるとすれば、そこが一瞬極限までひっぱられて、それから思い切りグズグズに柔らかく溶けていく。
そんな感じだった。
(やばい、オレ……このままどうかしちまいそう……)
大きく呼吸しながら、サンジは床に沈みこみそうなくらい脱力した。
ひくん、と身体が痙攣するみたいに動いてしまう。熱くて、濡れた感触が腿を伝っておりていった。

「なんでもねえって……」

ぐりっとゾロは下着ごとサンジの股間を握った。
「なんでもねえって言いながらイく奴がいるかよ……」
「う、う、うっせェよ、放せって」
「……とりあえずズボンだけ脱がせるからな」
「う、ウン……」
汚れが他につかないように気を遣ってくれたらしく。
ぎゅうっと股間を握った手はそのままに、もう片方の手だけでゾロはサンジの半端に脱げかかっていたズボンを下げた。
「おっ、良かったな、こっちは濡れてねえ」
「いちーち言うな……そんな、こと」
「あ?こっちはすげェぞ」
そこらへんにズボンを放り投げ、空いた手でゾロはサンジの手を掴み、イッたばかりの自分の股の間へ触らせた。
下着はベロベロで、腿のほうまで濡れている。
「あ、あ、あ」
カーッと頭に血が上るのを感じた。
口だけは達者だと思っていたのに、最早まともな人語など出てこなかった。
「あ、あわ、あわわ」
濡れた場所を掴ませたままにして、膝の後ろ側に手をかけて腰を持ち上げさせると、ゾロはそのサンジの手の間から下着の濡れた部分に唇を付けた。
染み出した精液で、ほんのりとその口が濡れる。
「わ、わ、わ……」
布地が張り付いているので、サンジの形がはっきりと判別出来る。
そこへゆっくり舌を這わされ出すと、ぼんやりしていたサンジもさすがに自分の今の状態が理解出来て、足をジタバタさせて暴れ出した。
「んなッ、なッ、なッ」
「痛ェッ、暴れんなテメエ」
「あ、だって、なんつー……へ、へ、へんたい!この、へんたいッ!」
「変態だぁー?普通だろ、こんくらい、黙っとけ」
「ふ、普通?ふつう……普通?!」
(普通だって言うのかよ)
心臓が頭の中にあるみたいにバクバク鳴ってるのが聞こえる。
(クソッ、オレぁ、慣れてねーんだよ……てゆーか、全然初めてなんだよ……)
ちゅッ、という状況に不釣合いなカワイイ音がして、唇が離される。そうかと思うとまたあんぐりと開けた口に食われてしまう。
「……ふッ、あ」
大した刺激ではないはずなのに、背筋がぞくりとした。
そうこうするうちに、いつの間にか、下着の中に潜り込んで来た手が、サンジが放ったあとの精液のぬめりを借りながら、尻の狭間を撫で出した。
(い、いよいよか?)
と、思いながらゾロを見ると、ニヤリと笑って、五指の中で一番長い指を、穴の上にあてがってきた。
最初は案外簡単に入った。
抵抗もなかった。
だが、その指が奥まで入り込み、二本目の指が差し込まれると
「いってェーッ」
これまでの人生では経験したことのない種類と場所の痛みに、思わずサンジは飛び上がった。
だがゾロは、サンジが怯んで思わず浮かせた腰をいいことに、すかさず更にもう一本の指をぐいっと入れた。
「つッ、あ……アホ……」
半ば中腰になったまま、サンジが目をぎゅっとつぶって衝撃に耐えようとする。
「落ち着け……ゆっくり腰おろせ、力抜いたほうが痛くねェ」
「あ、だ、だって」
「落ち着け、大丈夫だから」
「…………。」
(根拠はドコだよ)
「平気だ……」
「……ゾロ」
サンジが逃げないようにか。
頭の後ろへ手を回して支えながら、ゆっくりサンジの身体の上へゾロが体重をかけてくる。
その重みに押される形で床の上に背中がつくと、少しほっと肩から力が抜けた。ついでにゾロの指をくわえ込んでいる場所からも力が抜けた。
体重をかけられると同時に、体温や、それからゾロの部屋と同じ匂いを感じた。
ゾロの匂い、今のうちに腹いっぱい吸い込んどこう。
そう思って鼻先を首筋にくっつけると、汗ばんで湿った感触がした。
気が付くと、ゾロの呼吸も、いつの間にか熱っぽいものに変わっている。
「ゾロ?」
「あー……」
おざなりに返事するゾロの膝がサンジの腰を支えてしっかり密着し、ようやくサンジはその足の間の固くなったモノに気付いた。
ちょっと思い切って手を伸ばして触ってみた。
固い。(そして思いのほかデカい。)
「あっちぃ」
一旦身体を起こし、指も引き抜くと、ゾロは上着を脱いだ。
そしてついでとばかりに、中途半端に下半身だけ脱がされたサンジのシャツのボタンも、どんどん外してゆく。やけに真面目な表情をしているのが可笑しかった。
窓から燦々と注ぐ陽射しが直接肌で感じられ、服を着ていたときよりかえって生ぬるいような暖かさがあった。床の上も、人の体温でか、陽射しのせいなのか、暖まっている。
何だか、明るい中でとんでもない姿になってしまっていることに自分でも驚いたが、今更カーテンをひくのも不自然なようがして、開き直って諦めることにした。
ボタンを外し終わったゾロがまた上へ乗ってきて、腹の上の直射日光が遮られる。
「あちィ、な」
同じことを繰り返してゾロが言う。
何か、ひょっとして、コイツ、興奮してるんだろうか、と思った。
ゾロが自分とのセックスで興奮している。
はあはあ言ってるし、勃起してる。
じわっとサンジの心に嬉しさがこみあげてきた。
合体するなら今だと思った。
「ゾロッ!是非今すぐ挿入だ!」
「……はいはい」
ゾロは額を押さえながらも一度引き抜いた指を再度穴にあてがって、今度は割と本気で解し出した。
だが中々敵も手ごわかった。
「入んねェなあ、こっから先がなかなか」
先刻は勢いで突っ込んだので三本目まで指が入ったが、改めて入れようとすると、滑りが足りない。
「……あッ、な、なんだよ、はやくしろッ」
「まあ待てよ、無理すると裂けるかも知れねえし」
「…………。」
「なんか滑るもんがありゃあいいんじゃねえか?油とか」
「油……キッチンにあるぜ」
うし、それだな、とゾロが立ち上がる。
相手が傍に居なくなると、やけに自分のあられもない姿が気にかかる。
洗濯物の山を適当に崩して、サンジはその中へ顔を埋めるとうち伏せて丸くなった。
セックスがこんなに大変なものだとは思わなかった。
だが、ゾロがちっとも面倒そうな様子でないのが、とても嬉しかった。




04/5/10

 


おわ・・・おわらなかっ・・・・・(エロが長いんだよ・・・・)