追悼アデス×クルーゼ

小説 吉野様
『永遠ソウル 〜SIDE・A〜』

 




軍人になってからそれなりの覚悟はあった。

死ぬ覚悟も殺す覚悟も。

ただ、怖くなかったわけではない。

死ぬと言うことが貴方の側を離れることだと知った時から。

死ぬ痛みよりも何よりもそれが怖かった。



それでも案外、自分は冷静でまるで他人事のようだ。

いや、他人事のようだから冷静でいられたのかも知れない。

死ぬ気はしなかったし、貴方の側を離れる気はしなかった。

貴方はいつも通りに出ていったし、私もいつも通りに貴方を見送った。

貴方が帰る場所を壊すわけにはいかない。

いかないけれど。

心臓の音がやけに大きくてカウントダウンに聞こえる。

徐々に大きくなるそれは終わりが近づいてきているのだと告げている。

カウントダウンが終わればどうなるか。

知りたくもないが、もう分かっていた。

諦めたわけではないが私は席を離れ、外が見える窓辺に立った。

最後に捧げた敬礼は同胞と貴方の為に。

届かないだろうと思いながらも言わずにはいられなかった言葉は貴方の為だけに。



「死ぬほど愛しています…クルーゼ隊長…」

今ほど、この言葉が真実味を帯びる時もないでしょう。

ああ、『知っているさ』と笑う貴方を見たかったな…。


                            
                          END

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