三年前。
僕は、庶民的な地獄に落ちた。


目を開けた途端飛び込んできた、薄汚れた天井。
そのわりに生活感に乏しい室内に入ってきた紅い髪の男は、 不機嫌な顔で煙草を吸わせろと言った。

紅い紅い、血の色の髪。

動いているのか止まっているのか分からない時間の中。
僕の流した数多の血と、悟浄の髪の色がふたりの世界を埋め尽くそうとした時、
金色が現れて、今度こそ僕を地獄(ここ)に定着した。


その時からずっと、僕は責め苦を受けている。
胸をちりちりと灼く、甘い責め苦。
日を増すごとにそれは大きくなっていく。
目の前の人物に受け入れて欲しいと思いかけ、赦されれば切れてしまう糸に気づいて、殊更に自分を虐げることを繰り返した。
僕が僕を赦せずにいるうちは、この甘い責め苦も止むことはないのだから。

それ以来、赦されようと思ったことはない。
この痛みこそが、僕をこの場所にとどめてくれるのだから。
そう思い続けて、そして。




砕けたステンドグラス。
あの時、僕らの信仰もまた砕かれたのか。

自虐するココロ。失ったことへの後悔。雨の音。
戒める、血の色の髪。
そんなものが。

砕けた硝子の向こうからは。
何色にも染まらない、ただ鮮烈な光が降り注いで、僕らを押し包んだ。
影さえ奪う激しさで。

思えば、僕らは互いに相手の影を見ていたのかもしれない。
相手そのものではなく、己に都合のいい、自分を投影した相手を。


そう、あの時までは。






 
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