『3rd anniversary』

小説kitori様






勝ちを確信して飛び掛ろうとした鼻先に、銃口を突きつけられた。

受け止められた蹴りに、強いと思った。
間近で見つめた瞳(め)の碧(みどり)が綺麗だと思った。
戦っているのに静かなままの気に戸惑っているうちに。
『……こんなことしてスミマセンでした』
綺麗な声で、そんなふうにぽつりと呟かれた。
今まで俺に、そんなふうに言った奴なんてひとりもいなかった。

だから。

失われちゃいけないと思ったんだ。
綺麗な瞳も、綺麗な声も――そいつ自身も。




燃えてるみたいな色の髪に触れた。
真っ赤だったから。
だから火のように熱いのかと思ったら、冷たかった。
なーんだ、やっぱりそうなんだ。
そんなふうに思いながら、でも少し不思議に思った。
触れた後でさえ、その髪はやっぱり熱いような気がして。

だから次に逢った時、隠されてしまった『紅』に。
「ヘンな頭」と言ってしまった。

だって、長く伸ばしてる方がずっといい。
金色とは違う、でも太陽の色だから。




『今度は自分で出てこい』
言われて、チクショウと思って飛び出したら、
雪の上に刻まれた足跡は、ひとつじゃないことに気づいた。

俺の前にも後ろにも。
導くように――後押しするように。
冷たさばかりを思っていた『白』を踏みしめたら、キュッキュッって音がした。
俺の叫び声さえ吸い取った雪が、独りじゃなくなった俺の足元で――啼いた。




三蔵がこの世界の全部だと思ってた。
なのに、全部の外側にまた全部があって。
自分の足で歩けば歩くほど、全部は大きくなっていって。
そんなふうに言ったら、きっとまた三蔵は「人語で喋れ」って言うから。

だから、胸の中だけでそう呟いた。


 
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