『Blue Moon』        小説 遊亜さま


◆ 6.


外では、手に武器を持った人間と妖怪が入り乱れて、屋敷の出入り口を取り囲んでいた。
その中央には、この卑劣な行為の主犯格である村長が守られるようにして立っている。

「出てきた!」
「な…何だ?!」

先ほどまでとは違う八戒の姿に、何人かが恐れ戦いていた。

「さあ、始めようか」

残忍な笑みを浮かべた八戒が、嘗めるように辺りを見回す。
向かってくる者達に白い球体がぶつけられた。
その破壊力は、何体もの身体を弾き飛ばしてもまだ衰えない。
それは、行く手に建っていた家々にも及んだ。
住処を壊された者なのであろう、目を剥いて八戒に飛びかかってくる数人がいる。
しかし、一瞥することも無く掌をそちらに向けただけで、八戒は簡単にその身体をバラバラにしてしまった。

あまりの力の強さを目の当たりにし、腰が抜ける者や逃げ出す者も出てきた。
しかし、八戒は容赦無く、次々と気功の餌食にしていった。

残ったのは僅かに二人。
八戒がわざと攻撃しなかったのは、村長と、三蔵に術をかけたという妖怪の男だった。

「おまえ達にはもう少し楽しんでもらう」
「何をっ!」

喚きながら攻撃をしかけてくる妖怪を見据えながら、八戒は集めた気の塊をぶつけた。
致命傷にはならない程度に身体を破損させる。
男は、苦しみもがきながら半狂乱になりつつあった。

「次は、おまえ」

八戒が村長の手に視線を動かした。

「三蔵に触れた、その手」

八戒の手が、空を切る様に素早く動かされた。
その時。
グシャ、と村長の両手が潰れた。

「うぎゃーーーーっ!!」

絶叫は一拍遅れてやってきた。
先端が潰された自分の両腕をブラブラさせながら、村長はそれでも八戒を睨み返している。

「三蔵を見た、その目」

八戒は右手を伸ばし、目の高さまで持ち上げた。
人差し指と中指の二本を相手に向けて突き出すと、その指先に向けて一気に気を送り込んだ。

「はうっ!!」

抉られた両目が赤い涙を流していた。
潰された手では顔を覆う事もできず、ただ呻き声を上げてのた打ち回っている。

八戒が最後の二人に与えたのは、いっそ殺してもらった方が楽だと思うほどの痛み。
放っておいてもいずれは死を迎えるだろうが、その屍を目にするのも汚らわしい。

「まだ足りないが」

八戒は両手に気を集め始めた。

・・・これ以上、あの人を放ってはおけないから

辺りが白い光に包まれた。
爆音が轟いた後には、ただ静寂だけが訪れた。


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