小さな羽、降るとき
第2話
−太正14年4月−
はれて恋人同士になったブレントと火車の二人。仕事だけでなく、プライベートでも会うようになった。
そんなある日。
「一体、どうしたんだ。」
火車が突然、ブレントの泊まっているホテルを訪ねてきたのである。
「実は、春になって陸軍にも新しい兵士達が入ってきまして、彼らの衣食住のために私たちが陸軍の宿舎を追い出されることになったんです。私たち黒鬼会は、表向きは陸軍の正規兵ではなく、京極様の私的な側近ということになっていたので真っ先に追い出される対象になって・・・。」
火車の説明を聞いたブレントは不条理すぎると思ったが、すぐにある考えが浮かんだ。
「なら、一緒に住もう。」
「いいの・・・ですか。」
「いいさ、一人は寂しいしな。それに、お前と住めるなら最高だ。」
こうして、火車とブレントはともに住むことになった。
荷物の整理が終わり、ブレントがリビングに戻ると、火車がウィスキーを飲んでいた。確か、火車は自分のことを下戸と言っていたはずだが。
「たまにはいいじゃないですか。」
あっさりと返される。ブレントも、「確かにそうだな」と考え付き合うことにした。
案の定、火車は酔った。目の焦点が合っていない。
そんな火車の腕がブレントの首に絡みつく。そしてそのままキスをした。
―なるほど、そういうことか・・・―
何かを確信したブレントは火車の耳元でこう言う。
「じゃあ、ベッドに行こうな。」
火車を抱きかかえて寝室に赴く。
火車をベッドによこたえ、首筋に口付けると、酔いがさめたらしい火車が驚いて抵抗してきた。
「なんだ、お前。抱いて欲しくて飲めもしないアルコールを飲んで誘ったんじゃなかったのか。」
火車は一瞬沈黙ののち、こう答えた。
「・・・うっ、図星、・・・です。」
「なら、どうして。」
「男の人と、それも自分が下になるなんて初めてなので緊張してしまって。」
それを聞いたブレントは少し笑い、
「なら、ものすごく、やさしくするから。安心しろ。」
自分の腕の中で乱れる火車を見たブレントは
―美しい、自分にはもったいないくらいだ―
そう思いつつも、火車を快楽の極みへと導いていく。
―この幸せが、いつまでも続きますように―
そう願いながら、二人は今まで味わったことのない喜びを感じていた。
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