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そのころ半助は裏山の小さな洞穴にいた。以前、散歩していてたまたま見つけたものである。
ここなら滅多に人も来ないから一人で考えごとをするにはもってこいだと思われた。
「山田先生、愛していますよ」
そっとつぶやいてみる。言葉にしただけで背徳の証のように思われ激しく頭を振った。
早くこの想いを昇華させなければ…闇の中に閉じ込めてしまえ。
しかし思えば思うほど気持ちが噴き出してくる。自分を見るいたわるような表情。隙のない所為。優しい笑顔。
すべてが愛しくて半助は膝を抱えてうずくまった。

…いっそもう一度記憶をなくしてしまいたい。この想いと共に消えてしまえたら…
どのくらいそうしていたのだろう、辺りはすっかり暗くなっていた。
…心配されているだろうか…
暗闇の中で自嘲してため息をついた時である、半助の目が闇に動く影を捉えた。そっと懐の手裏剣に手をかける。
影は闇に紛れて移動しているようだ。半助は外壁に背を当て横に洞穴から出た。
忍装束を脱いだことが悔やまれるが仕方がない。
狭い場所は不利だ。外の方が戦いやすい。

…気配を感じない。何者だ…
と突然、目の前に影の主が現れた。
「そんな物騒なもん、私に投げる気ですか?」
「や…山田先生」
影が伝蔵だと分かり緊張の解けた半助はその場にへた…と座り込んだ。
習慣として身についているとはいえ最近鍛錬を怠っていた自分にこの緊張感はキツイ。
伝蔵は半助を抱えて洞穴の中に座らせた。

「大丈夫ですかな」
「は、はい。でも、どうしてここが?」
「あんたの気を追って来たんじゃ」
「そうですか。私もまだまだですね」
「記憶が戻ってはおらんのだろう?仕方がない」

伝蔵は屈託のない笑顔で笑いかける。半助はそっと目をそらした。
辺りが暗くてよかったと思う。こんな顔を伝蔵に見られたくはない。
「理由を聞かせてもらえませんか?利吉が何かしでかしましたか?」
「いえ、利吉くんは悪くありません。私の勝手で…」
「一人で考えたかったのは、私のことですか?」
「え?あの」
「違うのか…あんたは私のことを好いてくれていると思っておったのに、残念ですな」

半助は驚いたように伝蔵を見た。差し込む月の明かりが伝蔵を照らす。半助の大好きな笑顔。
その眼に吸い込まれてしまいそうな気がして慌てて目をそらした。
伝蔵は術にも長けている一流の忍びだ。今の自分では太刀打ちできるはずがない。
胸の内を吐露してしまう前にこの浅ましい想いを昇華させてしまわなければ。
必死に言葉を探す半助の肩を抱き寄せ伝蔵が囁いた。
「私はあんたが好きですよ」と。
驚いて伝蔵を見た。偽りのない瞳と視線がぶつかる。

「な…なんの冗談ですか」
「冗談などではない、本心だ」
「だって先生には…」
半助の口がそれ以上言葉をつむぐことはできなかった。伝蔵が半助の唇を自分のそれでふさいだのだ。
官能を呼び覚まされるセクシャルな接吻。するりと入りこんだ舌が口腔内を蠢き半助の理性を麻痺させてゆく。
「あなたには待つ方が…」
半助の瞳に浮かぶ涙を伝蔵はそっとぬぐった。
「妻とは家族だ。抱きたいと思うのは半助だけじゃ」
その言葉が嘘でもいいと思った。今はこの愛しい男に身を委ねよう。

伝蔵は半助の耳たぶを軽く噛んだ。その小さな刺激さえも甘い痺れとなり半助の体を駆け巡る。
襟元から忍びこんだ指が小さな果実をつまむとピクリと半助の体が反応する。
首筋から鎖骨へと唇を滑らせそのぷっくりと膨らんだ場所を口に含んだ。
舌先でチロチロと刺激してやると半助の半開きの唇から甘い吐息が漏れる。
しばらく反応を楽しんでいた伝蔵だが、しなやかな肌の上を指を滑らせ半助の袴を脱がせた。
褌の下で徐々に形を変えつつあるものを目に留めるとくすりと笑い囁いた。

「ずいぶんと感じているみたいですな?」
「そんなこと…」
言葉にできるはずがない。接吻だけで気持ちよくなってしまっただなんて。
伝蔵は真っ赤になっている半助の頬にちゅっと唇を寄せると褌をといた。
戒めを解かれ自由になったそれが月明かりに照らされぬらりと光る。伝蔵はそれに唇を寄せた。
とめどなく溢れる透明な液体を舐め取るように形を確認するように舌を這わせる。
口に含み敏感な先端を重点的に攻め立てると半助の足がガクガクと震えた。
すがる場所を求め伝蔵の頭に置いた手には力は入らずただ髪を梳くだけである。

「ん…はぁ、や……」
「イってもいいですぞ」
「…ん…あ…あぁ…!」
伝蔵がそう言った拍子に歯が半助の敏感な場所に当たった。
ビクン!と体が反ったかと思うと、白い液体が伝蔵の口に吐き出される。
「す…すみません」
伝蔵は青臭いそれをごくんと飲み下した。
はぁはぁと荒い息をつきながら恥ずかしそうに自分を見る半助をますます愛しく感じぎゅっと抱きしめた。
「溜まっていたようですな、気持ちよかったですか?」
「………はい…」

と、半助は抱きしめられている腕の中でもぞもぞ体を動かし、伝蔵の袴を締めている帯に手をかけた。
するりと解いてしまうと白布越しに伝蔵のそこも形を変えつつあるのが見て取れる。
「わ、私も、先生に気持ちよくなってもらいたいんです」
半助は赤い顔でそう言うと存在を主張している伝蔵のものを布の上からなぞりそっと口付けた。
褌の結び目を解くと解放された伝蔵がほお…と息を吐く。
伝蔵のそれはたまに握る自分のものより一回りほど大きい。
半助はうらやましく感じながらも丁寧に舌を這わせた。形を変えかけたそれが更に大きさを増す。
伝蔵がしてくれたように先端部分を口に含む。

「上手いぞ…」
欲に掠れた甘い声。伝蔵が自分を欲していてくれていることに幸せを感じた。
もっともっと感じて…
「半助…もういい…」
「えっ?」
突然、体勢が変えられて下腹部に温かい息を感じた。
菊門を舌でクルクルと円をかくようになぞられる。
たっぷりの唾液で濡らされたそこにつぷっ…と指が差し込まれた。
初めての痛みに怯えたように伝蔵を見る。
「大丈夫、心配はいらん」

伝蔵の指がある一点に触れると半助の体に電流が流れたようにビクッとはねた。
萎えていた場所が少しずつ元気を取り戻し、透明な液体を吐き出し始める。
伝蔵はそれを指に取り半助の奥に塗り込んだ。1本でキツかった指を徐々に増やし2本3本と飲み込ませてゆく。
先走りが潤滑油の役目をはたし潤うことのないはずのそこからくちゅくちゅと濡れた音が聞こえてくる。
痛みと快感が入り混じった感覚に耐え切れず半助は伝蔵にしがみついて懇願した。
「…早く…あなたが欲しい…」
そんな言葉を聞いて黙っていられるはずがない。伝蔵は半助の足を肩にのせると猛った部位を半助に押し当てた。
「力を抜いておきなさい」
「くぅっ…ん…」

本来受け入れる場所でないそこに感じる圧倒的な存在感。
先端しか入っていないのにかなりキツイ。伝蔵は半助の耳たぶを甘噛みしつつ囁いた。
「息を吐いて力を抜け」
そんな囁きすら性感を刺激される。伝蔵の声には魔力があるとぼんやりした頭で思った。
促されるままに息を吐き出すと愛撫されていたのより深い場所に指より質量の大きいものを感じる。
「はっ…あ…はぁ…」
「ほら、全部入った。半助の中は気持ちいいな」
「…ん……ふぅ…」
半助の目から生理的な涙が零れ落ちる。感じているのは痛みか、ひとつになった喜びか…
伝蔵はとめどなく流れ落ちる涙を唇でぬぐってやりながら聞いた。
「きついか?」
「だ…大丈夫…です」
「そうか…動くぞ」
「えっ、あ…はぁ…ん…」

半助のいい場所を狙い動くと痛みに萎えかけていた屹立がまた立ち上がり始める。伝蔵は確かめるようにそれに手を伸ばした。
イヤイヤをするように半助が首を振り、潤んだ瞳で伝蔵を見つめ「一緒にイきたいんです」と抱きついてきた。
伝蔵は満足気な笑いをこぼし腰を動かしだす。
今までとは比べ物にならないほどの激しい律動に半助の体がしなる。唇からは抑えきれない吐息と矯声が漏れこぼれ落ちる。
繋がった場所から聞こえるぐちゅぐちゅという卑猥な音に耳からも犯されているような気がして伝蔵の背中に爪を立てた。

「…は…あ…山田先生…あ…いしてます…ん…」
「わしもだ」
「はぁ…も…もう……あ…アアァーー!!」
一層高い声を上げ半助が果てる。同時に自分の中に伝蔵の精が放たれたのを感じた。
頬に額に唇に優しい接吻が落ちる。
白濁する意識下で幸せを実感しつつ半助は目を閉じた。

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