第2回

 肉の焼けるにおいが二階まで上がってきた。それに気がついてはいたものの、健はちっとも頭に入らない参考書を無理に見つめていた。
 しばらくすると、ノックの音が聞こえた。それから、岡田の明るい声。
 「三宅さん、飯できたで。下りてきてや」

 健はかなりぐずぐずしてから階下に下りたが、鍋を洗っていた岡田は、機嫌良さそうに振り向いた。テーブルの上には肉の載った皿、そしてナイフとフォークがでている。
 「もしかして、寝てたんか。そんならもっとあとにすればよかったな」
 「……べつにいいよ」
 「うまそうやでえ」
 言いながら岡田が健の前に皿を置いた。
 「肉がええと、塩とこしょうだけでええから楽やな」
 「……」
 「飯が昼の残りなのは残念やけど、余すともったいないしなあ」
 健は、肉には手を着けないで、付け合わせの野菜を少し口に運んだ。岡田の作った豆と人参のグラッセは、案外にうまくできていた。
 「よし、じゃあおれも」
 岡田はイスに座ると、早速肉を口に運んだ。
 口を動かしながら、岡田はぼんやり見ていた健ににやりと笑って見せた。健は岡田から視線をはずして、小さく切った肉を口に運んだ。
 「うまいやろ?」
 「……冷めてるよ」
 「え?」
 「肉はさ、食べる直前に焼かなきゃ」
 「あ……」
 「おれ、もういいや」
 岡田がなにも言い出さないうちに、健は乱暴にフォークを置いた。
 「でも……」
 「おまえもべつにいちいちおれのぶんの飯まで作らなくてもいいよ。面倒だろ」
 「そんなことあらへん!」
 「剛がなんて言ったか知らないけど、おまえだっていたくてここにいるわけじゃないだろ。親切ぶるなよ。帰れよ、もう」
 「……」
 「一人の方が気楽だよ。気が散るよ。受験勉強だってしなきゃならないのに……」
 あとの方は少しだけ声が小さくなった。
 「……」
 「剛だってすぐ戻ってくる。そしたら、剛から全部聞くから」
 「……」
 「いったいどこでなにしてたのか、全部聞くよ。今までだって聞こうと思えば聞けたけど、そんなことどうでもいいから聞かなかっただけなんだ。そんなこと、どうでも、いいことだろ。友達なんだから。……剛だっておれのことなんてなにも聞かないよ」
 黙って健の言うことを聞いていた岡田が口を開いて、言った。
 「友達かあ、ええ言葉やな。……三宅さん、森田さんとつきあい長いん?」
 岡田は、ほんとうに素朴にそう聞いたのだった。だが、健は黙った。
 「昔から森田さんのこと知ってるんか?」
 答える代わりに、健はいきなり立ち上がった。岡田は驚いてそんな健を見上げた。
 「わかんない奴だな!」
 健が怒鳴った。
 「……」
 「おまえがいるとイライラするって言ってんだよ!」
 岡田は目を丸くして健を見ている。健は唇を噛むと、キッチンを飛び出して、足音とともに階段をかけ上っていく。
 健が自分の部屋のドアを閉める音が、岡田のところまで響いた。

 健はひとりで膝をかかえて窓の向こうを見ていた。深夜だが、夏の明るさがどこかにある。翳った健の横顔はじっと動かない。カーテンだけが揺れた。
 しばらくして、小さなノックの音が聞こえた。健は動かない。岡田の声が聞こえた。
 「三宅さん」
 「……」
 「寝てるんか」
 「……」
 「おれ、鈍感なんや。さっき、なんか気に障ったんなら勘弁してや……」
 それだけで、声はとぎれた。
 声がしなくなって、やっと健は振り向いた。岡田はきっと、健は寝ていると思っただろう。元の姿勢に戻ると、今度は顔を膝の上に伏せる。
 そのまま、健はつぶやいた。
 「……俺、剛のことなにも知らねえよ……」

 剛を見知ったのさえ、ほんの半年前だった。
 はじめ年上の友人に連れられて行った、薄暗く、いつも煙たいその店が気に入って、そのころの健は、病気で休みがちな学校よりも、その店に入り浸っていた。
 その店で、客たちは、よく、見知らぬ相手に声をかけた。知らない同士がムキになって議論しあい、また、意気投合した。そんな店の雰囲気を惹かれて来るだけの奴もいたが、通い慣れると、だんだんそれだけではないのがわかってきた。酒とたばことむきになった熱い議論は人を酔わせた。男たちがはじめからその雰囲気を利用しようとしていることが、健にも見えてきたのである。だが、それはおもしろいゲームに思えた。男も女も、健を特別にちやほやしたからである。
 健が一人で煙の立ちこめた店に入ると、必ず誰かが健に声をかけてきた。
 顔見知りならば「健くん、こっち!」。そうでなければ、「君、よく見かけるね。……いくつ?」。
 そういう場合、次のせりふもだいたい決まっていた。
 「ねえ、こっち来ない? 好きなものおごるよ」
 その日も、健は、誘われるままに、初めて会った男のテーブルで、口当たりの酔い甘い酒を飲んでいた。酔ったからかもしれない、健の口は軽くなって、男がしゃべったことに、からむような物言いになっていた。
 「……それって自己満足じゃん、結局。なんかばかみたい」
 「へえ。なかなかクールな意見だね。ばかみたいとはよく言ったもんだ」
 男は、健の酔ったのを面白がって言った。
 「言われてみれば君の言うとおりかもな。……甘ったれた連中だよ」
 そう言いながらも、男には話の内容など、たぶん、どうでもいいのだった。 
 「もっと飲んでいいよ。頭のいい子は話がおもしろいね。……よかったら別のとこに場所変えて、もっとしゃべらない……?」
 男が言いかけたとき、ガチャン、と音がして、健の目の前にグラスが置かれた。乱暴に置かれたので、グラスから白い液体がぴしゃんとはねた。
 驚いた健は顔をあげた。そこにいたのが、剛だった。剛は不機嫌そうに健を見ていた。
 「なんだ、それ」
 男が尋ねた。
 「チチ? ……頼んでないぞ、そんなの」
 「アイスミルクです」
 ウエイターのエプロンをつけた剛が無愛想に答えた。
 「そんなもの、頼むわけないだろう!」
 男がいらいらした口調で言った。
 「新顔か。……全く、このごろのヤツは……。いらないよ、こんなもの。健くん、別の店に行こうよ」
 男に言われて、健は我に返ったように男の顔を見た。さっきまでの酔いが醒めた。なにをしてもつまらないから、このままもっとおもしろいところについていってもいい気持ちになっていたのに、急にそれがくだらないことに思えた。
 「俺、今日、約束あるから」
 健はうそを言った。
 「もうじき、相手がここに来ることになってる。ごちそうさまでした」
 「ち」
 男は舌打ちした。伝票を持っていきなり立ち上がる。
 「ちゃっかりしてるな」
 とたんにいやな顔でそう言って、剛の顔をにらむと、男はそのままテーブルを立った。
 剛は健のことなど見もしないで、テーブルの空のグラスを片づけた。剛がいなくなると、健はテーブルにひとりになった。健は、テーブルに残っていた、頼んでいないアイスミルクに口をつけてみた。
 顔見知りに声をかけられてもすべて断って、健は、剛がレジに入ったのを見てから席を立った。
 健がなにも言わずにレジの前に立つと、剛は伝票になにか書いていた手を止めてちょっとだけ顔を上げたが、健だと見るとまた視線をおろした。そのまま剛がなにも言わないので、とうとう健の方が口を切った。
 「わざとだろ、さっきの」
 「……別に」
 下を向いたまま剛が言った。
 「他のテーブルとまちがえたんだよ」
 「……この店に来てミルクなんて頼むヤツ、いるわけないじゃん」 
 「……」
 「わざとだろ!?」
 語気を強めると、やっと剛が顔をあげた。鋭い視線だった。健は一瞬どきんとする。剛が低い声で言った。
 「こんなとこ、もう来るなよ」
 「……なんだよ」
 「高校生なんだろ。学校行けよ」
 「よけいなお世話だよ! ……自分だってガキじゃんか。こんなところで働いてていいの」
 その言葉が少しおかしかったようだった。剛の表情が和らいだ。
 「俺、そんなガキじゃねえよ」
 笑われた気がしてむっとしながら、健はうしろポケットから財布を出そうとした。それを見た剛が言った。
 「あんたのテーブルの分は、さっきのヤツが払ってったよ」
 「……ミルク代」
 不機嫌につぶやくと、剛はまた少し笑った。
 「……いいよ、俺が勝手にもってったんだから。……親が心配するだろ。もうここに来るなよ」
 そのせりふに、やっと相手の安っぽさが見えた気がした。
 「親?」
 健は馬鹿にしたように言う。
 「親なんて、俺がどこでなにしてようと気にもしてないよ」
 その言い方に、剛は、少し驚いたように健を見た。
 「お袋は死んじまってるし、親父は親父でちゃんと新しい家庭ってやつを持ってるからね。俺はうるさいこと言わずにひとりで楽しくやってればいいってわけ。……わかった?」
 「……」
 「どう? あんたの考えだと、親が心配しないならかまわないんだろ? なにか言うことある?」
 剛は健の顔を見て黙った。相手を言い負かして気持ちがいいはずなのに、健はなんだか変な気持ちがした。
 剛は、なんだか痛ましいように健を見た。そして、つぶやくように言った。
 「……おまえ、ひとりがさびしいから、こんなとこに来るわけ……?」
 意外な表情と、意外な言葉だった。剛に見つめられて、健は、すぐにはうまく切り返せなかった。
 「……んだよ、……そんなんじゃ……」
 健は剛の視線から目をそらせた。それから、どうにか言った。
 「……そんなんじゃねえよ。……大人からかうのがおもしろいからだよ。おもしれーじゃん、すぐその気になって」
 「……へえ」
 剛が、どこか馬鹿にしたように答えたので、健はよけいムキになった。
 「……人間なんて、誰だってほんとはひとりだろ! 妙な同情なんてまっぴら……!」
 そのとき、レジの横から、帰ろうとする客が伝票を出した。剛がそれを受け取る。
 中途半端だったが、健は口をつぐんでドアに向かった。
 ドアに手をかけたとき、後ろから剛の声がした。
 「来んなよ、もう」
 「……」
 「……な。学校行って友達作れよ」
 嫌な声ではなかった。

 それから、健はその店に行かなくなった。なんだかあいつに言われたから行かないみたいなのもしゃくに触って、何度か店に入ろうとしてみたのだが、どんな顔をすればいいのかわからなくてやめた。
 一度、偶然のようにして、店の裏を回ったことがある。二度三度行ったり戻ったりしているうちに、汚いエプロンをつけた剛が、空のビール瓶の入ったケースを抱えて出てきた。
 健に気づいて、剛の方が声をかけてきた。
 「あれ、おまえ……」
 健はあわてて知らない顔をした。健が制服姿なのに気づいて、剛が優しい声で聞いた。
 「学校行ってるんだ?」
 「……」
 健がやっとなにか答えようとしたとき、店の中から剛を呼ぶ声がして、剛はちょっと健を見た。笑顔だった。それだけで、剛はもうなにも言わず店の中に戻って行った。
 その週末、久しぶりに健がその店に顔を出してみると、剛はもうその店をやめていた。酒やたばこも、大人たちにちやほやされるのも、いや、その店全体がなんだか急に色あせて見えた。健は二度とその店に行かなかった。

 剛に再び会ったのは、それから4ヶ月もしてからだった。
 あれから、学校へもどうにか行っていた。他にすることもなかったが、学校も楽しいわけではなかった。では、なぜ学校へ行くのかと言えば、ただ、「学校行って友達作れよ」というあの声を忘れられなかったからだった。
 その日も、健は学校帰りだった。5月というのに冷たい雨の降る午後、駅から自分のマンションへの途中の裏道に、傘も差さずに不動産屋の張り紙を眺めている人影があった。ごく小さな不動産屋で、6畳だの4畳半、中には3畳の貸部屋の張り紙がガラス戸に並んでいる。その人影のそばを通り抜けてから、健は振り向いた。
 しばらく立ち止まって見つめてから、健はその人影に近づいた。相手は健に気づかない。健は後ろから相手に傘をさしかけた。そして、
 「……あんた、なにやってんの?」
 わざと冷たく言ってやった。
 言われて、剛はゆっくり顔をこちらに向けた。自分から声をかけたくせに健はぎょっとする。もともとやせていた剛が前よりさらにやせて、獣みたいな目で自分を見たからだ。最後に見たときの笑顔とは、別人みたいだった。だが、剛が自分を見た表情で、自分を覚えていたことがわかった。うれしかった。
 「へえ、部屋探してるんだ」
 しかし、なにげないように健は言葉を続けた。
 「……いいのあった?」
 「……」
 剛は目をそらす。前髪から雨が滴った。
 「急いでるの?」
 「別に」
 投げ捨てるような言い方だった。
 「……でも……」
 言ってから健は急に気がついた。剛の、宿なし猫のような様子に。
 「あのさ」
 どうしても、そこに剛を置いたまま立ち去れなかった。なにをどう言えばいいのかわからないまま、健は続けた。
 「ねえ」
 「……」
 「俺んちそこだよ。……寄ってけば? ……傘くらい貸すから」
 あんまりムキになったら、剛はこのまま逃げてしまうだろう。健はなんでもないように続ける。
 「俺んち、俺ひとりだし」
 「……」
 剛は答えない。ちょっと考えて、健はいい口実を思いついた。それをいたずらっぽく口にする。 
 「あんたに、前に、ミルクおごってもらったお返し」
 それを聞くと、剛がこちらを見て、やっと口元だけで笑った。
 健は先に歩き出して、少し離れた場所で、ためらっている剛が歩き出すのを待っていた。

 その日、健のマンションについて、剛は健がコーヒーをいれている間にソファーで眠ってしまっていた。軽い眠りではなく、やっと眠る場所を見つけた、泥のように深い眠り。
 それを見つけたとき、健は、自分の部屋で眠っている剛が、奇跡のように思えた。人慣れない猫を捕まえたようにも思った。コーヒーの入ったカップをテーブルに置いてから、健はゆっくり剛に近づいた。鋭いまなざしをして、健に、学校へ行け、などと意見したくせに、剛は健より華奢なのだった。女の子みたいに小さな顔をしていた。健はどうしても剛の寝顔から視線をはずせなかった。そしていつのまにか、そのままソファーにもたれて健も眠ってしまったらしかった。
 目が覚めると、自分がソファーに寝かされていた。目の前に、心配そうな剛の顔がある。驚いて起きあがろうとすると、体が膨らんだように重い。だが、それは健にとって、とても親しい感覚だった。剛の冷たい手のひらが、ひんやりと額に置かれた。
 「おまえ、すげえ熱ある」
 「……」
 「ずっとうなされてた」
 「……」
 健は、目の前の剛の顔をぼんやりと見つめた。幸せなのに……不安に胸がおしつぶされそうな夢を見ていた。それだけは覚えている。
 「俺、いつもだから」
 かすれた声で健は答えた。
 「ちょっと雨に打たれたりすると、すぐ熱出るんだ。子供の頃からずっと体弱くて、それで……」
 言いかけて、健は止めた。剛がしばらくして尋ねた。
 「それで……?」
 聞かれて、健は目を上げた。剛のまなざしがあった。健は横を向いた。
 「いつもだから、平気」
 剛は黙ってそんな健を見て、そして言った。
 「……まだ朝じゃない。もう一度寝てろよ」
 「……」
 「大丈夫。俺、お前が治るまでここにいるから」
 健は、なにを言われたのかわからなくて、尋ねるように剛の顔を見た。その表情に、剛が顔を曇らせて言った。
 「おまえ、こんな熱出ても、いつもひとりでいたわけ?」
 どこかさびしい声だった。それを聞いた健は、自分がもう、一人きりではいられないことを悟った。

 健が元気になった頃、すでに剛は健の部屋の住人のようなものになっていた。
 剛は、自分のことをなにも言わなかった。健も聞かなかった。聞けば、剛が出ていってしまうことをは、簡単に想像できた。
 時々剛は出かけた。でかけると真夜中に帰ってきた。寝ているふりをして、健は、帰ってきた剛の、死人のように暗い表情を見た。それでも、剛が帰ってくれば、健は寝入ることができた。
 
 明け方になってやっと眠ったから、起きたのは昼すぎだった。今日も天気がいい。
 なにをしているのか、岡田の気配は感じられなかった。暑いしすることもなくて、午睡でもしているのだろうか。
 健は身支度をすると家を出た。
 剛は岡田を通じて、帰るのが3、4日遅れると伝えてきた。今日で、それでも二日経つことになる。今日帰ってくる、ということはなくても、剛は明日にはたぶん帰って来る。もし遅くなっても、あさってには絶対帰って来る。
 あさってなんてすぐだ。明日なら、もっとすぐだ。
 そう思ったらずいぶん気が楽になった。
 1時間に1本の、時間を守らない路線バスを待つのも、そう気にならなかった。
 今日はとりあえず街に出て、いろんな店を見て、買い物をして、疲れたら喫茶店をはしごしよう。そういうふうに時間を無駄に過ごせる、いい機会だと思えばいい。
 ほこり臭いバスが止まって、健は明るい表情でそのバスに乗り込んだ。

 ここに来るのを思いついたのは、もちろん健だ。
 「……八ヶ岳?」
 剛が聞き返した。
 「うん。……そっちに、ずっと使ってない家があるんだ。……だれも気づかないよ。……すごい田舎なんだ。俺が子供の頃、体壊してたお袋用に親父が買ったの」
 「……」
 「まわりに数件別荘があるくらい。たぶん、そう変わってない。とにかくなにもないよ。でも、静かだよ。……ほら、東京なんて、このごろどこに行っても落ち着かないから」
 「……」
 「夜は涼しくってエアコンなんていらないし、車も滅多に通らないようなとこ。……どう? 剛、一緒に行かない?」
 不安そうに見つめる健の前で、剛は考えこんでいた。
 「考えることないよ。夏の間だけだもん。ほんと言うとさ、俺も、あんまり連れってってもらったことないんだ。小さかったし。……でも、場所はちゃんとわかるよ」
 「……」
 自分を見た剛の瞳に迷いがあることはわかっていたが、健は気がつかないふりをして言った。
 「空気のいいとこ行ったら、俺、丈夫になるかも」
 健は力を入れた。
 「ね、行こ! 剛、約束して」

 東京を離れれば、剛は知らないうちに出かけることもなくなるはずだった。なにかにとりつかれているみたいな、剛の暗い表情も、きっと消えるはずだった。

 白い光に満ちた駅前でバスが止まった。
 このごろはしゃれた店が並んで、肌を露出した若い女の子が笑いさざめいているのは東京と変わらなかった。シュプレヒコールや、スピーカーの声がどこからもしないのが、かえって不思議なくらいだった。バスを降りた健は、なんでもないように、そんな人の群の方に歩き出した。


   暑いとアタマがぼーーっとしてしまいます。夜にならないと動き出さない……。まだ夏は始まったばかりというのに……。(98.7.11 hirune)


第1回へ

(メインのページへ)

第3回へ