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第76回 植村直己・帯広野外学校 サバイバルキャンプ2011の記録
参加者の感想文は、こちら
「可能性への挑戦と野外活動の基礎を身につける」をテーマとした、野外学校ではもっとも長期でハードなプログラム『サバイバルキャンプ』を8月4日〜10日に6泊7日の日程で開催しました。十勝管内・北海道内はもとより東京から集った小学5年生〜高校2年生の総勢17名が、北海道・十勝の自然の中で多くの困難に挑戦しながら、苦しくも楽しい一週間を過ごしました。

◆参加者(◎=班長)
◎佐柄千鶴(音更町・高2)、武藤花乃子(芽室町・小6)、宇久村皆歩(札幌市・小5)、諌山莉奈(釧路市・小5)
◎佐賀雅登(広尾町・中3)、吉田和希(東京都・中1)、坂井 天(陸別町・小6)、小西巧真(札幌市・小6)、増田知見(浜中町・小5)
◎大石巧起(大樹町・中3)、竹本 凱(東京都・中1)、伊藤萌林(帯広市・小6)、酒井大地(白糠町・小5)
◎吉田拓未(標茶町・中3)、佐内 祐(東京都・中1)、横塚 樹(帯広市・小6)、中谷天斗(陸別町・小5)
◆スタッフ
小貫耕喜(校長)、山本義明、佐々木誠一、矢満田啓明、酒井伸吾、北沢 実、増田 泉、平林結実、内田菜穂子、宮谷恵美子
佐柄啓二、安井 治、梶美恵子、山本耕平(=助っ人)
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◆1日目(8月4日) 天気:おおむね晴れ
 13:40、定刻より遅れて開校式・オリエンテーションがログハウス前で行われた。校長のあいさつ、スタッフの紹介、参加者の自己紹介・決意表明などが行われた。この後はログハウスで装備品・忘れ物のチェックなどをみっちり時間をかけて行った。15時ころからは「野外活動基礎学習1」として、期間中に使うテントの設営と撤収の実習。期間中に設営と撤収が少なくとも3回はあるため、まずはこれをきっちり身につける必要がある。そのあとは、夕食やごえもん風呂焚きに使うマキ割り。大きなマサカリと手斧を使って汗だくになりながら作業を続けた。
 この日の夕食は、カマドを使っての「飯ごうで作るカレーピラフ&トマトスープ」、奇跡的に?各班とも上々の出来上がりだった。
 夜はログハウスで「植村直己さんの冒険の足跡」などについて小貫校長からビデオを使ったお話しが約1時間。その後は反省会、ごえもん風呂入浴ののち、22時ころに全員テントに入った。

開校式

テントの設営

マキ割り

夕食の準備

植村さんの学習会
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◆2日目(8月5日) 天気:おおむね晴れ
 午前6時に起床。朝のつどい・体操を済ませ、まずは朝食。この日は携帯ガスコンロを使って野菜炒めを作る。材料はウインナー、キャベツ、ピーマンなど。これとバターロール、野菜ジュースで手際よく済ませる。
 この日のメインプログラムは「学校林の整備」と「自分たちのテント替りの小屋作り」。
 「学校林の整備」は、野外学校基地内の林の間伐作業が主体で、カラマツ、ハンノキ、シラカバなどをノコギリを使って切り倒すという、危険も伴う重労働。全員ヘルメットをかぶって樹齢20〜40年ほどの木に挑んだ。倒した木は枝払いをしたのち、幹は乾燥させて後日のマキとなる。午前中一杯かかって約10本の木を始末した。
 昼食のラーメンを作って食べ、少々の休憩の後、各班ごとにブルーシートを使った小屋作りに取り掛かった。貸し出されるのは3.6×5.4mのブルーシート1枚、ひも、ノコギリ。間伐ででた太い枝を支柱に使ってブルーシートで覆って出来上がり、これで一晩を無事に過ごすことができたから、まずは上出来か・・!
 この日の夕食は飯ごうもコッフェルも使わない調理に挑戦! 空き缶を飯ごうの代わりにしてメシを炊き、肉をホウの葉で包んで焚き火の下に入れて蒸し焼きにするというもの。焚き火の加減が難しく、失敗作もあったようだが、なんとか全員が食事にありつくことができたようだ。
 夜は、ログハウスで研修会。前進基地での生活(とくにトイレの正しい使い方、クマに会ったらどうしようなど)が中心。その後は反省会、ごえもん風呂入浴などで、22時ころにブルーシートで作った小屋で就寝。
 

朝食を作る

学校林の整備

木を切り倒す

倒した木を運ぶ

完成した夕食
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◆3日目(8月6日) 天気:おおむね晴れ
 この日も午前6時に起床。朝のつどいののち、翌日に登山をする「十勝幌尻岳」の全容が見えたので、全員で散歩がてらにじっくり観察。多少怖気づいた者、闘志を燃やした者がいたのかどうか・・・。朝食はスパゲティー、野菜サラダ、インスタントスープ。ガスコンロを使って麺をゆで、レトルトの具を温めてスパゲティーは完成。サラダは野菜を切って袋に入れ、ドレッシング(レモン汁+オリーブ油+塩)をその中であえて出来上がり。
 この日は、いよいよ前進基地への移動。電気も水もない、基地から16キロほど山奥へ入ったところで3泊4日の生活が始まる。移動の準備を済ませ、自動車のに分乗して林道の入口まで移動。この先8キロは、戸蔦別川に沿った林道を徒歩移動。途中で行動食の昼食休憩を挟み、14時前に前進基地へ到着した。
 到着後はただちにテントの設営などの作業に取りかかる。一時的な降雨の予報もあり、テント周りには側溝も掘り準備は万全。午後5時ころから夕食作り。メニューは「ぶた丼とインスタント味噌汁」。コンロを使って飯ごうでメシを炊き、ふた肉とタレをからめて焼いて出来上がり。夜は焚き火を囲んでしばしの談笑。空を見ると満天の星空!早速星座の観察講座が始まった。テントに入ったのは21時30分ころ、明日はいよいよ登山だ!
 

基地から十勝幌尻を望む

林道を歩く

前進基地でテント設営

前進基地で

星座観察会
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◆4日目(8月7日) 天気:おおむね晴れ、残念ながら頂上はうす曇 夕方に一時雨
 いつもより早い5時に起床。朝のつどい・体操を終え、登山用の朝食(おにぎり=前夜に基地でスタッフが作った+ミニカップめん+バナナ)で腹ごしらえ。
 その後、あわただしく登山の準備をし、水筒に水、ザックには行動食などを詰め、6時50分に前進基地を出発し、十勝幌尻岳山頂を目指した。
 十勝幌尻岳は標高1846m、日高山脈の中央部にある独立峰。前進基地は標高およそ600mなので、1200mの標高差がある。また、初級者向きとは言えず(健脚で上り3時間・下り2時間半。野外学校では上り5時間、下り4時間半を目安としている)、きつい上りが続くけわしい山だが、頂上からは日高山脈の主連峰や十勝平野の眺望が期待できる。
11時50分には全員が頂上に立った。この日は眺望がいいはずの稜線〜頂上が薄い雲の中だったため、パノラマを楽しむことは出来なかったが、無事に頂上を極めた満足感で一杯だったようだ。頂上で昼食・休憩ののち。午後1時に下山開始。下りは例年より順調で、16時前に全員が前進基地へ無事に帰着した。
 スイカを食べ、着替えをして、さあ夕食を作ろうというときに、遠くで雷鳴が・・・まもなく大粒の雨が降り出した。このため、夕食作りは本部用のブルーシートの下で作って食べることに・・・(夕食は各班で「煮込みうどん」を作って食べた)。まもなく雨も上がり、焚き火をしなが班対抗のロープワーク競争(とっくり結びでスコップを吊り上げる競争)ののち、翌朝に焼いて食べるパンの仕込み作業(カメリア粉+ドライイースト+砂糖を水を足しながら、愛情をこめて練る)をして、21時30分にはテントに入った。

十勝幌尻岳登山

登山中!

ヤブをこいで進む

ヤブこぎ

稜線に出た!

頂上目前

頂上で記念写真

下山完了!

夕食のようす

パン作り
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◆5日目(8月8日) 天気:おおむね晴れ 夕方に一時雨
 6時に起床。この日は前日の登山の疲労がピークだったためか、一部のスタッフは参加者に起こされて、やっと起き出した。朝食は前夜に仕込んだパン生地を木の枝に刺したり巻きつけたりして焚き火で焼いて食べた。しかし満腹感は・・・。
 午前10時からは、このキャンプの目玉「サバイバルに挑戦」が始まった。このプログラムは、食料を手に入れることの困難さ、食事をするまでのいくつもの工程を体験することと、空腹のつらさを体験することを目的に毎年行っている。翌日の正午までに支給される食料は米1人に1/4合、あとは共同で調味料類があるだけ。魚(オショロコマ)を釣るか、付記を調理するしか食料の入手方法は無い。
 最初は釣りの手ほどきから。ヤナギを切って作った釣竿にテグス・道糸をしばる方法のレクチャーがあり、全員が自分でマスターしなければならない。これが出来たら、前進基地の横を流れる渓流に出かけて、釣りを開始! 午後3時ころには全員、釣果を手に帰還。例年より数も多く、魚体も大きめ(これだけ釣れたら、空腹は感じないかも・・)。さらに近くからフキも採ってきて夕食作りの開始!魚は内臓を出して、あとは焚き火でじんわりと塩焼き、小麦粉をまぶして油で揚げたりと十分な量を満喫してしまった。フキは醤油と砂糖で油いため、これに少量の米でたいたおかゆ状のご飯(少ない米を増量するため、水を多くして炊いたもの)に混ぜたりしてこれも完食した。なお、この日も夕食を作り始めたら、前日と同様に大粒の雨が・・・1時間程度で止んだものの、またしても炊事はシートの下となってしまった。
 あたりが暗くなってきたころ、各班でテント内で反省会。そのあとは焚き火を囲んで談笑し、9時にはテントで眠りについた。

パンを焼く

パンにかぶりつく

魚釣りの説明

釣りの準備
釣れた!

釣りのようす

女子班の釣果

から揚げにする

塩焼き

焚き火を囲んで
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◆6日目(8月9日) 天気:おおむね晴れ 夕方に一時雨
 この日は5時に起きて釣りに行く予定だったが、予定通り出発できたのは1班(女子班)のみ。あとは準備に手間取りスタートが遅くなってしまった。さらに、空腹の絶頂で力が入らず、校長に介抱される参加者も出るなど、「サバイバル効果?」が早速みられた。この日は前日ほどの釣果は上がらなかったものの、前日と同じようにフキの調理や、残しておいた米を炊いたりして朝食とした。この朝食では、「シャリバテ」した班員のために釣ってきた魚を提供したグループもあり、野外学校の目的のひとつ「助け合い」の気持ちが発揮された。なお、空腹で動くことが出来なかったメンバーも、わずかな朝食で無事に回復できたもよう・・・。
 サバイバル生活は正午で終了。テントの撤収・荷物のパッキング・後片付けなどを行い昼食のバナナ(極小サイズ)を食べ、記念写真を写してから、装備を背負って前進基地を後にした。フル装備を背負って2kmほど林道を徒歩で下り、あとは車に分乗して14時20分に野外学校基地へ無事に帰還した。
 基地に着いてからは、テント設営、2日目に作った小屋の撤去、マキ割り、ごえもん風呂の準備、アジャカナックの準備などの作業が早速始まった。
 16時30分ころ、待ちに待った「ジンギスカン+焼きそば」の盛大な夕食会が始まった。まともな食事は2日前の夕食以来ということもあり、用意された食材はすべてメンバーの胃袋に納められた!
 19時30分ころ、いよいよアジャカナック(キャンプ・ファイヤー)に点火され、夜空を焦がす大きな炎が上がった。火の周りで、登山やサバイバル生活を無事に終えた感想を各人が発表したのち、ごえもん風呂に入る順番を決める「班対抗ロープワーク競争」で盛り上がった。入浴後には班長ミーティングを行い、テントに入ったのは22時30分ころのことであった。

早朝の釣り

昼食のちっちゃなバナナ

アジャカナックの準備

ジンギスカン&焼きそば

アジャカナック
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◆7日目(8月10日) 天気:晴れたかと思ったら、にわか雨…その後は小康状態
 いつも通り起床は6時。朝のつどいの後の散歩で、3日前に登った「十勝幌尻岳」の姿を確認。朝食は「和定食」。かまどを使い、ご飯は空き缶を飯ごう替わりにし、魚は鉄板で焼き、味噌汁も本物を作り、あとは卵・のり・納豆でおいしくいいただくことが出来た。それにしても全員、野外での調理の腕は上がっている・・。
 食後は、テントを干したり、期間中に使ったコッフェル・飯ごう・ガスコンロなどをきれいに洗う作業など。その後は一週間を振り返る感想文を書き、昼食を食べ、閉校式を迎えた。
 式では、校長から参加者一人ずつに修了証書が手渡され、校長からのお話し、スタッフからの講評などがあった。最後にログハウスの前で記念写真を撮り、解散の運びとなった。
 1日目の参加者のようすを見て、この先どうなることかとスタッフの中で心配したものの、各人が日々成長し、助け合いながら自分の技術を磨き上げ、結果として、全員が同じプログラムをやり遂げることが出来た。参加したメンバーの努力に感謝、参加させてくださった保護者の皆様に感謝、そして野外学校を支えてくれている多くの方々に感謝の気持ちで一杯である。
皆さん、また野外学校で会いましょう!

朝食を作る

空き缶でメシを炊く

あとかたづけ

閉校式

修了証書授与

終わった!
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外で食べるからおいしい・・・サバイバルキャンプのレシピ
★カレーピラフ:飯ごうに米を入れ、水加減を確認⇒にんじん・玉ねぎ・ブロッコリーを適当な大きさに刻んで飯ごうに入れる⇒とり肉(手羽中を1人に1本)も飯ごうに入れる⇒みじん切りした生しょうが少々、カレー粉(大さじ1.5)・塩(小さじ1)・醤油(少し)を飯ごうに入れて火にかける⇒あとはふつうに炊く
★トマトスープ:コッフェルでお湯を沸かしブイヨンを加えてスープを作る⇒ざく切りにしたトマトとシメジ鍋に入れて煮込む
★空き缶でごはん:アルミ缶(今回は500ml、に米と同量の水を入れ、火にかける⇒吹き始めて数分で弱火にして蒸らす⇒はさみで缶を切って食べる
★蒸し焼き:ホウの葉(大き目のもの)に肉・しいたけのスライスを包む⇒焚き火の下に入れ、濡れ新聞をかぶせ、薄く土をかける⇒この上で焚き火(所要時間は約1時間)