しびれるお話し
  しびれ 1

はじめに
 患者さんが訴えられる”しびれ”の多くは、あまり心配のいらないものが多いか、完全に回復するものだと思いますが、たいしたことはないと思っておられるとそうでもないのが”しびれ”でして、重い病気や生死にかかわる病気の症状である場合もあります。”しびれ”た時には一度医師に診てもらうことが、”案ずるよりはやすし”でしょう。しびれといっても多種多様でしびれを起こす病気もたくさんあります。そこで、このパンフレットを作成して、この症状をよく理解してもらい、何故診察や検査が必要なのか解って頂けたら幸いと思っています。

しびれの種類
 さて、しびれという言葉にはいろいろな意味が含まれています。皆さんがしびれという時、大きく次に述べる3つの異なったしびれがあります。

1、 感覚低下:文字どおり痛みや冷たい感覚、触った感覚が鈍くなったり、
         全く感じなくなったりすることです。
2、 運動麻痺、筋力低下、脱力:筋肉の力が弱くなったり、全く力が入ら
       なくなったりすることです。
3、 異常感覚:これは感覚が鈍くなっり、感じなくなったりするのではな
       く、安静にしていても例えば手や足にジリジリとかチクチ
       クとか普通ではない感覚が出現することで、安静にしてい
       る時だけでなく、動いた時に起ることもあれば、皮膚を触
       ったり叩かれたりした時に出現することもあります。

上に述べた3つのしびれは、どれか一つの場合もあれば、すべての”しびれ”がいっしょに出現してくる場合もあります。


どうしてしびれが起るの
 しびれが出現してくるメカニズムの詳しい点については、いろいろと研究されていますが、すべて解明できたわけではありません。ここでは、あまり詳しいことは述べないで、運動するため、あるいは感じるために、人は脳から皮膚までどのような神経の経路があり、この経路のどこが障害されても、しびれが起ってくる可能性があるのだということを理解して頂くようにします。
 さて、皮膚や関節、筋肉からの感覚は、皮膚・関節・筋肉などから末梢神経を通って、脊髄の中を昇り大脳まで刺激を伝えるのですが、大きく二つに分けることができます。それは別々の経路を通って大脳に刺激が伝わるためです。皮膚での熱い・冷たい・痛いを感じる経路と、皮膚での触った感じ、関節の位置、身体の位置などを知る感じ、触って物の形や重さなどを知る感じなどの経路が異なっているのです。そのため、障害される場所によっては、熱い冷たい痛いはわかるのだけれど、触った感じがわからないなどといったことが起ることもあります。
 運動の経路は大脳での例えば手を動かせという命令が脊髄までおりて、末梢神経を通り筋肉に刺激を与え、手を動かす筋肉が収縮するわけですが、脊髄に行く前に右の大脳から出た命令は左側に、左の大脳から出た命令は右側に経路を変えます。そのため、例えば大脳での運動の経路が障害されると、反対側の腕や足が麻痺するわけです。しかし、脊髄や末梢神経での障害では同じ側の腕や足が麻痺します。

しびれを起こす病気にはどんなものがあるの
 上で述べた感覚や運動の経路を障害する病気なら何でもしびれを起こしてくる可能性があります。したがってとてもたくさんの病気がありますが、ほんの少しにすぎませんが、主な病気を表に挙げてみました。

しびれを起こす主な病気
 1、 大脳や脳幹部の障害
      脳出血、脳硬塞、脳腫瘍、パーキンソン病、てんかん、梅毒、脳炎、
      多発性硬化症
 2、 脊髄・脊椎やその付近の障害
      頚椎症、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、ギラン・バレー症候群、
      脊髄炎、悪性腫瘍の遠隔効果、脊髄空洞症、脊髄腫瘍、悪性貧血
 3、 末梢神経の障害
      頚腕症候群、手根幹症候群、多発神経炎、糖尿病、尿毒症、腫瘍、薬物
      悪性腫瘍の遠隔効果、副甲状腺機能障害、胸郭出口症候群、金属類
 4、 筋肉の障害
      多発筋炎、筋ジストロフィー

 聞いたことのない病気が多いかもしれません。しかし意外と身近な病気や脳や神経と関係ないような病気までがしびれを起こしてきます。  主なしびれを起こす病気について しびれ 2 でお話ししてみましょう。

しびれ 2 へ