diary
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8月31日 (火)  ハンス・コパー / 『現代思想』9月号

午前中、麹町の会計士さんの事務所へ。昨年度の会社の会計のまとめを済ませる。

帰りに汐留のパナソニック・ミュージアムで、ハンス・コパーの展覧会を観る。こうした小振りの美術館に、良品のみが丁寧に並べられているのは、気持ちがいい。はじめてまとめてみるコパーを堪能。また、ここはパナソニックが運営している場所なので、ライティングがよい。コパーの焼き物を端正に、清潔に見せています。焼き物の見せ方の場合、フラットに光を当てるのか、スポットでドラマチックに見せるのか、それによって表情が全く異なり、そのどちらも同時にというわけにはいかないので、そのたびごとの展示の仕方に観る方は従うしかないのですが、今回は納得できるものがありました。

それにつけても、焼き物を鑑賞するのにガラスは何とも気になる。展示上どうしようもないことはわかるのですが、ガラスがあるとどうものめり込んでという気になれず、少しひいて眺めている自分に気づきます。

一月ほど前、ホテルオークラに小嶋一浩さん、赤松佳珠子さんの展示のオープニングに出かけた際に、同ホテルの骨董屋さん水戸忠交易に寄って、一点飾ってあったコパーの陶器を、生で見ることができました。ケースに入っているのと違って、自由にいろいろな方向から見ることができるとやはり違います。熱心に見ていたら、お店の方が、コパーの展覧会の招待券をくださいました。タダ券をもらったから、それで展覧会に行ったというわけではありません。

(イマム)


『現代思想』2010年9月号、「現代数学の思考法」特集が届く。
この号では僕は、「都市の多数性をめぐって」を寄稿しています。下記。

http://www.seidosha.co.jp/index.php?%B8%BD%C2%E5%BF%F4%B3%D8%A4%CE%BB%D7%B9%CD%CB%A1

(みなみ)


8月30日 (月)  日光

本日からブリティッシュ・コロンビア大学の授業が開始。今週はまだスタジオは始まらず、イントロダクション的に、いろいろな見学会を予定。初日の今日は、日光方面へ。

浅草で集合して、電車で日光へ向かう。途中、工事中の東京スカイツリーのすぐ脇を通る。日光東照宮(写真左は同陽明門)は、小学生の修学旅行以来、実に30数年ぶり。思っていたよりも小振りで、好みの分かれる装飾過剰のテイストも、頭に描いていたほどの迫力はなく、少し以外。

宇都宮に移動し、バスに乗って、大谷石資料館(写真中)へ。ここは地下にある旧採石場が見どころで、広さは何と東京ドームと同じほどあるという。四角い柱がグリッド状に配されているあたり古代遺跡をほうふつとさせる。こちらに来たら多少涼しいことを期待したのだが、市内は残念ながら東京と変わらず、しかしこの採石場内は気温10数度ととても涼しい。

宇都宮からJRで二駅、隈研吾さん設計の宝積寺駅、ちょっ蔵広場(写真右)を見学。

初日から、充実した内容。

(イマム)

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8月29日 (日)  ジェイムソンによる「日本的なるもの」書評

近所の図書館へ。『新潮』の今月号に掲載されている、フレデリック・ジェイムソンによる磯崎新著『建築における「日本的なるもの」』の書評「茶匠たちが作り上げたもの」をコピーし、読む。こうした書評があること、それが建築メディアではなく、一般文芸誌に掲載されること(建築関係者の多くはこの書評の存在に気づかないであろう)、についていくつかの思いが生じてくる。

そもそも、この本はこの書評の訳注にあるように、当初から日本語と英語とで同時に出版されることが意図され、英語版は磯崎さんの日本語のテキストをもとに、デヴィッド・スチュワートさんが内容を整理し、独自の編集が行われている。つまり、日本語は、磯崎さんが個別に書いたテキストを集め、英語版ではそれを再構成しているというわけだ。(私は、『美術手帖』誌上での日本語版の書評にて「同じ話題の繰り返しや内容の矛盾も多い」と生意気にも書いている。それが、英語版では整理されているのだろう。)とすると、英語版の方が、定本と扱われるべきかもしれないし、実際世界ではほとんどの人が英語版を読むわけである。(日本語版では、磯崎さん独自の言い回しを楽しめるという利点はある。)

個人的な事情としては、この本は僕のUBC学生も多くが読むであろうし、でも彼らは英語で僕は日本語でとなると、微妙に内容が食い違うものを読んでいることとなる。とはいっても、大枠でも議論が異なるわけではないし、彼らがその細部に違いに気づくほどのレベルでもないだろうから、それほど問題はないのだけれども。

(イマム)

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8月28日 (土)  ザハ

ザハ・ハディッドについて原稿依頼をいただいていたので、今日は終日ザハのことを考えていた。長い原稿ではないので、特にあらためて調べなくとも、いきなり書き始めても書けるのだろうけれども、久しぶりにザハについて考えるのも一興だと思った。

ザハといえば、最近の活動の勢いはとどまるところを知らず。量産化で質が落ちていると見る向きもあるけれども、確かにプロジェクトごとの質のむらはありそうだが、優れたものは結構いいのではないいかと僕は思っている。実物を全然見ていないからなんとも言えないけれども。単に奇妙な造形というだけであれば、世界中のこれだけ多くのクライアントが依頼することは考えにくい。ロンドンのシージェイ・リムさんに1月に会った際、ローマの現代美術館のオープニングに行ってとてもよかったと言っていた。

昔のエルクロッキーを見ていたら、ここしばらくのCGのプレゼに比べ、かつてのザハのドローイングや模型は素晴らしいですね。まさに、才能があふれている、圧倒的な才能を持つ人というのがいるということを、つきつけられる気分がする。

写真は、2006年の原美術館でのザハのインスタレーション。

(イマム)

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8月27日 (金)  welcom party / 帰京

来週からの授業に先立ち、今日はUBCの学生が集まってウエルカム・パーティ。今回はスタジオが野方のため、学生の多くが中野か高円寺に部屋を借りている。彼らは、自転車でスタジオと行き来するのである。

というわけで、高円寺にある伊東豊雄さん設計の「座・高円寺」のレストランに集まることにして、一週間前に予約を入れた。(このレストラン、公共施設の中にあるためでしょう、価格がとてもリーズナブルで食事もおいしい。)「座・高円寺」を訪れるのは2度目ですが、学生に説明する必要もあり、いろいろ資料を読んで予習。これからしばらくこうしたことが増えるが、それぞれの建物をくわしく検証するのは僕にとってもいい機会です。

この建物は、波打つスチールの外皮が特徴となっているわけですが、あらためて考えると、構造解析、施工ともに困難なことは一目瞭然で、海外で自由な局面を作っている建物など、たいてい3次元トラスの構造部材の上に張りぼてで滑らかなサーフェスを作っているのだからある程度逃げがきくわけだが、この建物は構造がそのまま仕上げなので、いかにこの曲面のスチール面を作るか、スチール面の下にコンクリートを打設するか、GA JAPANの座談会で大成建設の現場の方が、はじめはどのように作ったらいいか想像もつかなかったと発言されているが、その気持ちはよくわかる。しかし、実際にこのように見事に実現してしまうのだから、やはり日本の施工技術は素晴らしい。

また構造に関しては、『建築技術』の中で、構造家の佐々木睦朗さんが、今回の解法は「必ずしも満足できる解であったとは言い切れないことは事実である」と書かれている。意匠、構造、施工、予算のせめぎ合いの中で、これがベストの共通解であったなどと言ってごまかさない姿勢が潔いし、この構造を研究する後のものからすれば、貴重な証言である。

とはいうものの、この難しい条件の中で、このように明快に最終形が導かれたことに対しては、率直に見事だと思う。2度の目の訪問で、この建物の理解が進んだが、やはり劇場なので、一度はここで舞台を見なければ、そうすればこの構成ももっと実感が沸くことと思う。

(イマム)


朝、小倉駅で松本清張の『点と線』を買い込み、新幹線で東京へ。推理小説に読みふけっているうちに、昼過ぎ、東京に着く。
そのままアトリエへ。もろもろ仕事。
夜、渋谷へ。沖縄から来ている、琉球大学の入江徹さんと、松田達くんと、3人で飲む。

(みなみ)

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8月26日 (木)  小倉へ

朝、特急で福岡から小倉へ。
昼頃、小倉着。
時間があったので、バスを乗り継ぎ、10数年ぶりに、磯崎新さん設計の北九州美術館を訪れる。
久しぶりに訪れたが、空間に手応えがあり、とても良かった。
建築の力を信じていた時代の、エネルギーが建築に充ちていて、元気づけられた。

その後、小倉市内に戻り、倉方俊輔さんと待ち合わせ。小倉のディープな市場や、リバーウォークを案内していただく。さらに、西日本工業大学にお邪魔し、倉方さんの研究室を訪問。
その後、小倉市内にて、倉方さんと飲む。遅くまで、いろいろ話す。
小倉泊。

(みなみ)


8月25日 (水)  スタジオ準備 / ワークショップ作品披露パーティ

中野にて、ジョージさん、東大博物館の松本さんと打合せ。UBCのスタジオの第一課題についてだが、松本さんの東大の生徒に加えて、慶応の学生も何人か参加することとなった。混成チームだが楽しみである。

野方に移動し、旧中野区立第六中学校へ。少子化で2年前に廃校となったこの中学校が今回のスタジオとなる。来日した学生たちもほぼ全員揃い、皆で机を運んだりしてスタジオの体裁を整える。学生たちは、全員僕の3月のバンクーバーでの講義を聴いているので、向こうはこちらを知っているが、こちらはこれから覚えなくてはいけない。NTTの工事もされ、エアコンもある。ただし、西日がきつい。

(イマム)


午前中、学生たちがワークショップで製作した作品が、ようやく完成。昼頃、九州大学の末廣香織さんと西日本工業大学の倉方俊輔さんが到着。さらに、地元の子供達や地域住民の方々も到着。
作品を観ていただき、広場にてバーベキュー・パーティ。
最後に、製作した竹のドーム内にて、建築系ラジオの収録。
今年も盛り上がって、良かった。

15時ごろ、ワークショップ終了。16時過ぎ、太宰府発。
その後、福岡にて解散。

某用件のため、僕は福岡に残る。
夜、末廣先生と福岡にて飲む。
九州における建築状況を、いろいろと伺う。

(みなみ)


8月24日 (火)  夏休み

三日ほど、仙台、白石に行く。例年と異なり、仙台方面も東京と同じ暑さ。避暑というわけにはいきませんでした。山間の滝などを巡ったのですが、かんかん照りの状態で、写真の通り、見事な夏休みの感じ満点。大そう久しぶりにかき氷を食べたところ、期待以上に美味。

移築されて改修された1730年代の民家をひとつ見たのですが、軒裏に水平に材が張られている。こうした形式は、あまり見た覚えがない。この地方は台風などで風が舞うこともあまりないだろうし、なぜだろうか。

(イマム)

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8月23日 (月)  太宰府建築ワークショップ

早朝、羽田空港へ。
学生、教職員とともに、総勢30名あまり、飛行機で福岡へ向かう。福岡から天神を経て、電車で太宰府駅へ。この日から、太宰府建築ワークショップがスタート。
国士舘大学の太宰府キャンパスへ集合し、14時すぎにキックオフ・ミーティング。
今年は、北九州市立大学、関西学院大学、九州大学、東京理科大学の学生たちも、遠方からはるばる、参加し、他大学の学生が約10名ほど来てくれた。
今回参加した、北九州市立大学3年の上條美里さんは、建築系ラジオのスタッフにもなっており、初対面。

この日は、キャンパス内の敷地調査をしつつ、竹を切り出す作業などを行う。
18時すぎ、作業終了。
19時、キャンパス近くの宿泊先に向かい、夕食時にミーティングと反省会、および明日の段取りについての確認。

(みなみ)


8月22日 (日)  耐震診断講習会

「国分寺市木造耐震診断士養成講習会」に出席。これは主に国分寺市にて設計事務所を主宰する建築士を対象にした、木造住宅の耐震診断についての講習会。4回にわたってテキスト代実費のみで参加でき、地震科学、建築構造、都市防災など、多角的な内容で優れた講師陣によるレクチャーを受けられ、さらに実際の民家における耐震診断実習まであります。ここまで充実した公共の耐震講習会はおそらく日本でもここだけと思われます。国分寺市の建築家であるからには参加しなければと思い、行ってきました。来週末はいよいよ実習。非常に楽しみです。

それから先週発売されました「住宅建築」誌10月号(http://www.ksknet.co.jp/book/jk/)に、私と中村研一さん、元倉眞琴さんの鼎談、「システムバスのシステムはどこへ?」が掲載されました。システムバスについて、かなりマニアックな製品にまで言及しています。機会がありましたらご一読いただけますと、住宅の浴室設計のご参考にきっとなると思います。
(山本)


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