diary
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8月30日 (日)  建築系ラジオ公開収録配信

先日、渋谷のアップリンクにて行われた、建築系ラジオ公開収録が配信されました。
今回のテーマは、「新しい地形としての東京」。下記。

http://tenplusone.inax.co.jp/radio/

(みなみ)




8月28日 (金)  鬼のいた時代

大井町の集合住宅の現場へ。ちょうど鉄骨階段(写真)の建て込みを行っていた。全9戸のうち、7戸がメゾネットタイプで、かつ3層のタイプもあるので、内部にいくつものスチール階段を計画している。上までコンクリートの躯体を立ち上げてしまうと、下の階の階段の据え付けに重機が使えないので、各階のスラブができた段階で、その箇所の階段を設置するという手順になる。繊細に出来ているので、工事中に痛めてしまわないことを祈っています。

ある展覧会の準備のための勉強会。今日の話はまた内容が濃かったので、戻ってから興味を惹かれたトピックや人名を調べ直す。吉田秀雄や松永安左エ門といった名前から、何の展覧会だかわかる人はまずいないでしょうね(もちろん建築の展覧会です。)

吉田秀雄は、電通を今のように世界を代表する広告代理店に押し上げた人。松永安左エ門は、耳庵という近代数寄茶人を代表する人。7年ほど前に、国立博物館での大きな展覧会を見たことがあったが、その時は建築と結びつけては全く考えられなかった。吉田は「広告の鬼」と呼ばれ、松永は「電力の鬼」と呼ばれた。こうした鬼たちと建築家が渡りあっていた時代。建築でも「カワイイ」が時代の標語となる現代とは、あまりにも違いますなあ。

(イマム)

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8月27日 (木)  建築家のTPO

午前、エビスにて金融コンサルタント会社の社長さんにお会いする。月曜日に人を訪問したときにこちらはジャケットを着ていなくて恐縮したので、今日は暑い中ジャケット着用。ところが社長さんはポロシャツであった。TPOを考えるのは難しい。特に建築家は、現場にも行き、大学にも行き、大企業の本社にも(ごくまれに)も行きと、全然違うシチュエーションに登場する必要がある。それが一日で重なると、どういう格好をしていくべきか悩ましい。

午後は、辻堂にて蕎麦屋さんを訪問。こちらでは、細身のパンツにアイロンの利いた白シャツという恰好がまた不釣り合い。相手を緊張させてしまう。

この蕎麦屋さんでは、そば粉100%のそばを打っているのだが、原価から計算すると、どうしても、かけそばが700円、800円となるのだという。かつてはファーストフードのような存在だったそばが、今では高級食ですねとおっしゃっていた。

(イマム)


8月26日 (水)  ホームセンター

打合せのため芝工のある豊洲へ。実は豊洲駅前にあるホームセンターが結構使えることがわかり、最近重宝している。特に建築資材が充実しており、プロも使うお店の仕様。釘、ネジや小さな金物関係だけで、普通サイズのコンビニくらいの面積があり、最初はちょっと感動。家の近所というと、ハンズに行くくらいしかないのだが、それよりも格段の品ぞろえでかつ安い。本日も、L型金物、平金物、ネジなどを購入。

その後、あざみ野にて、大井町の集合住宅の定例打合せ。躯体も進み、設備とのすり合わせももう皆で集まってという段階を過ぎたので、全体定例は今回で終了とする。

(イマム)


8月25日 (火)  珈琲・ロン / いろいろ

松田達さんたちと、熱海のプロジェクトの打合せ。帰りに、もうちょっと話そうかということで、松田さん、松田さんのオープンデスクの学生さん、モサキの大西さん、田中さんと一緒に、四谷駅近くの喫茶ロンに入る。

この喫茶店、コンクリート打ち放しのファサードに2層分のガラスのスリットが入っていて、ちょっと入りずらく、今まで足を踏み入れたことがなかったのだが、高橋テイ一さんの設計との噂を聞き(確認がとれていません、だれかご存知か?)、今回初めて入ってみる。内部にもファサードのスリットがつながり、2階席を分断した面白い空間がある。これまでMDRに通ってさんざんこのあたりに来ていたのに、なぜ今まで来なかったのか。駅前なのにガラガラなのが、打ち合わせにも読書にも好さそう。築40年といった感じなので(1968年築らしい)、本当に高橋テイ一さんの設計であれば、割と初期の佳作ということになる。楽しんで設計されたのだろうなという感じが伝わってくる。

検索したらホームページもありました。

珈琲・ロン http://www.yama.ne.jp/yotsuya/shop/lown/index.html

(イマム)


アトリエと研究室を行き来しながら、コンペと住宅設計と現場定例と、原稿執筆と研究プロジェクト作業ほか、いろいろ。
夏休みで、いろいろな大学のオープンデスクの学生が、アトリエに来所。

(みなみ)


8月24日 (月)  表参道のかつてのようす

神宮前にて、印刷会社の社長さんにお会いする。会社は最近まで浜松町にあったので、ずっとこの地というわけではないようだが、社長さんはこのあたりが地元なのだという。表参道のラルフローレンの裏手あたりに実家があり、かつてはそのあたりには、大きなお屋敷があったのだそうだ。今では想像がつかないが。キャットストリートが、渋谷川から暗渠になったときのことも覚えているという。今日はそういう目的でお会いしたのではなかったが、一度表参道あたりの履歴を詳しくうかがってみたいと思った。表参道ヒルズにはやはりご不満のよう。

(イマム)


8月23日 (日)  洗足の住宅

押尾章治さん設計の、「洗足の住宅」を見学。押尾さんの建物を拝見するのは初めて。以前、オープンハウスへはあまり行かないと書いたが、現地へ足を運ぶメリットは、その建築家のディテールへの感性と、建物のスケールがわかること。特に住宅は、建築雑誌では、部屋のスケール感やプロポーションはわかりにくい。無理に広角で納めようとするから、スケールだけではなく、プロポーションもめちゃくちゃになっていることがある。都市住宅では、コンパクトに詰め込むことに精いっぱいで、快適なプロポーション等を検討する余地がないという設計段階での事情も多いのだろうが、今回の「洗足の住宅」のような、余裕のある建物では、建築家が意識しているしていないにかは別にして、その建築家の寸法感覚が分かって面白い。

(イマム)

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8月22日 (土)  坂倉の思いで

坂倉建築研究所は長らく東京ミッドタウンのすぐ横にあったのだが、というか坂倉はずっとあって、近年ミッドタウンができたという方が正しいが、この度建て直し集合住宅+商業施設に生まれ変わったとの連絡をいただき、見学。都心ですぐ目の前が安藤忠雄のデザインサイトというロケーションで、素晴らしい環境。磯崎新さんもこちらに越されるようだ。

坂倉事務所は、大学2年の時に山名善之君に誘われ、バイトに通うようになった。その夏は、東京造形大学のコンペで、大きな模型の作り込みのために、他大学の学生とともによく働いたものだった。(コンペは磯崎さんが取った。)設計事務所で本格的にバイトをしたはじめであった。

AAスクールから戻った後も、坂倉にはお世話になり、フルタイムで半年ほど通わせてもらった。この時は桐生の文化会館のコンペに参加させてもらい、山本想太郎君とはここで出会い、同じチームであった。(このコンペも指名で、磯崎さんもまたエントリーしていたが、今回は坂倉案が一位であった。)

というわけで、この場所にはそれなりの期間通ったものであったが、ここしばらくですっかりと様変わりをしてしまった。

ここで内野さんとばったり会い、近くでお茶をする。

その後、神保町に行き、工学院の後期の授業のために街歩きをして、課題のイメージを考える。このエリアは20年近くに渡って馴染みのあるエリアだが、課題の対象として見ると、また見え方が違う。南洋堂にも久しぶりに寄る。

(イマム)

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8月21日 (金)  温泉熱の活用

熱海経由で修善寺で日帰り出張。熱海駅で、温泉の専門家の方と合流し、修善寺との往復の間温泉の話をいろいろ伺う。前回の妻有の足湯や孤風院での足湯など、プロスペは何かと温泉への関心がありましたが、さすが専門家の話は興味深いことが、多くこの機会にいろいろと知識を吸収。(なぜ渋谷の温泉は爆発したかなど話題は多岐にわたる。東京の温泉は、メタンガスが含まれており、関東ローム層が原因だそうです。)

ひとつ大きく肯いたのは、現在温泉が活用されているのはほとんどが入浴のためのみ。入浴に相応しい湯温となるよう、水で薄めたり沸かし直しをしたりしているが、環境の時代にあっては熱エネルギーは貴重な資源。石油と同じというわけです。

例えば熱海の場合、源泉によっては90度近いお湯が出るが、余分な分の熱を熱交換機で温水にしてしまえば、ガスを使って湯沸かしをする必要はなくなる。(実際、そのようなマンションが熱海でも数年前に完成している。今回の専門家の方が手掛けたプロジェクトですが。)温泉を単なる癒しの場とするだけではなく、環境エネルギーから見ても活用できそうであるし、またその点をアピールすることも可能だ。

夕方からは、東京ににてforo08のコミッティー会議。来年2月に予定している展覧会の打合せ等。前回は和菓子で、今回のテーマもすでに決まっていますが、まだ秘密。

(イマム)


8月19日 (水)  大地の芸術祭@住宅建築

住宅建築最新号は、「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」の特集です。なぜ、住宅雑誌で、アートイベントがと思われるかもしれません。といってもアートを特集しているわけでも、常道の建築家の改修工事を特集しているわけでもありません。過疎の地にあって、いかに民家が生き延びるのか。一過性のイベントではなく、どのように継続的な活動とするのか、そうした視点からの特集です。そして、大地の芸術祭自身が、その意義を作家の作品という視点から、共同体の営みへと重点を少しずつシフトしています。

今回も僕は数件の空き家改修を担当していたので、編集の方とそうしたことから話を始めたのですが、いざ具体的にという段になって、北川フラムさんと平良敬一さんがお会いになり、フラムさんから芸術祭の説明を受け平良さんはすぐさま深いところでこの活動の意義を理解され、その場で特集としようと決断されたのでした。

そして、越後妻有の風景を、写真家山田修二さんが撮り下ろすことが決まり(表紙をはじめ、風景にしても人物にしても、山田さんの写真は見ごたえがあります)、またテキストの書き手も、フラムさん、福武總一郎一郎さん、篠原修さん、安藤邦廣さん、森繁哉さん、入澤美時さん、平良さん、中村祥二さんと豪華なメンバーとなりました(ついでながら、私も空き家プロジェクトについて書いています。)

大変だったのは、編集のスケジュールです。大地の芸術祭のオープニングは、7月26日。雑誌の発売は8月19日(南洋堂には17日に入っていましたね)。お盆休みを挟むことを考えると、編集のプロセスを知っている編集者では無理といってしかるべき日程。しかも、大抵アーティストはオープニングの直前まで作業をしています。なので、完成したアート作品の写真も多く入っているのは、奇跡に近いことです。

前回は、プロスペクターの3人で、それこそどっぷりとこのイベントに関わりました。まずはコンペに入って参加者として選ばれ、その後空き家の調査をしたりで2年を費やし、自身の足湯のプロジェクト「コンタクト」、10件余りの空き家の改修、「農舞台」での空き家の展覧会、何十回と3人で現地に足を運びました。今回はそれに比べれば、私は3件の改修を手掛けただけで、関わり方はずっと薄かったのですが、こうして特集となってまとまると、この活動の意味を再確認できるようで、感慨深いものがあります。

都市と地方、高齢化、農業、共同体、労働など、さまざまな今日的な課題がここで集約的に現象し、いい検証の機会を提供し、そしていくばくかの希望を感じさせます。是非、この住宅建築を手に取ってみてください。

住宅建築 http://www.jutakukenchiku.net/

大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2009
http://www.echigo-tsumari.jp/2009/index.html

大地の芸術祭は、今週末のNHK日曜美術館で特集されます。「緑とおにぎりとアートの里 越後妻有の10年(朝9時から、再放送は来週日曜日の夜8時より)。

また、ついでながら山本君の今回の作品「建具の庭」が、artscapeのサイトの彦坂尚嘉さんの芸術祭のレビューにて、たいへん高い評価を受けています。
http://artscape.jp/focus/1208405_1635.html

(イマム)

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