ここでは、プロスペクターが設計監理業務を行う際の仕事の進め方を、建物ができるまでの流れと合わせてご説明いたします。
●目次
1. 設計監理者が行う業務の範囲
2. 仕事の流れ
3. 完成までに要する時間
4. 業務報酬について
5. 設計料の支払い手順
● 1. 設計監理者が行う業務の範囲
プロスペクターの業務としては、建築の設計が主なものとなりますが、これまでの豊富な経験と独創的な企画力により、空間デザインにかかわるほぼすべてのことを対象にしています。
具体的には、その規模と種類に応じて以下のような内容があげられます。
A.建築的提案: 新築、増築、リノベーションなど、建築の設計および企画。
住宅、集合住宅、美術館、商業施設、オフィス、ランドスケープなど。
B.空間的提案: インテリア(内装)、家具デザイン、色彩計画、運営計画を含めた空間的プログラムの提案。美術館の会場構成、舞台美術など。
C.都市的提案: 都市環境の総合評価、敷地の環境評価、アーバンデザイン、都市再生プログラムについての調査・研究およびアドバイスなど。
具体的な空間デザインを行うにあたっては、単純な条件しかないケースというのはほとんどないのが現状です。そして、条件が複雑で難しいほど、高度な専門的知識と独創的な提案能力が問われることになります。私たちは、そうした特殊な要望に十分に対応し、むしろそうした困難な条件のときこそ、自分たちの能力を発揮できると考えています。
上記およびこのHPより、プロスペクターの活動は極めて多岐に渡ることがご理解いただけるかと思いますが、ここでは以下、住宅の設計を念頭に置き、仕事の進め方を具体的にご説明いたします。
● 2. 仕事の流れ
まず、我々は3人の建築家によるネットワークです。ある程度の規模のプロジェクトであれば、3人で一緒に設計を進めますが、住宅規模ではそれでは却って効率が悪く、また連絡の面においても混乱が生じることが予想されます。よって当方がその計画にもっとも相応しいと思われる者、もしくはクライアントの方が気に入られた者1名を担当者と決め、以後その者が責任者として打合せ、設計を進めることにいたします。ただし、その計画全般に渡ってメンバー全員による意見交換をくり返し、よりよい提案を目指すとともに、計画に対してメンバー全員で責任を持って対処いたします。
仕事の進め方は、その計画の内容によって様々ですが、ここではもっとも一般的な建築設計の場合を例に解説します。
A. 相談
始めに、現状の問題点や、新たな要望に関してのご相談をお受けします。
この段階では、漠然としたイメージしかお持ちでなくとも構いません。むしろ、始めはそうした状態からスタートすることが一般的ですし、打合せを重ねることにより、何が可能で、何が必要なのかといったことが、少しずつはっきりとしてくるものです。小さな住宅であっても、検討すべき事項や様々な与件が複雑に絡み合っているものですが、それをわかりやすく整理してお伝えするのも我々の得意とするところです。
内装等の小規模なものから、長期間に渡る都市レベルの企画に至るまで、空間にかかわることであれば、どのような事柄であってもご相談させていただきます。
この段階では、費用は発生いたしませんので、まずはお気軽にご連絡ください。
B. 調査・分析
この段階から、正式な仕事の依頼として、お受けすることになります。
相談内容をもとに、敷地の現地調査や関連法規のチェックを行い、これまでの事例やデータを参照にしながら、計画についての基本的な調査、分析を行い、そのポイントをまとめて報告書を作成・提案します。
C. 設計
前記の検討内容をもとに、計画の提案を行います。ご要望に応じて、複数の提案や、長期にわたる段階的な提案等を行うことも可能です。計画の大枠を決める基本設計を経て、詳細を決め工事契約用図面を作成する実施設計に移ります。
この過程で、少しずつ工事費や仕様が具体的になり、設計完了とともにそれらが決定されます。
D.工事
設計が終了し次第、いよいよ工事開始です。工務店の選定や、工事費見積りの査定につきましても、ご協力いたします。工事が始まりましたら、工事が設計意図どおりまた工程どおり問題なく進んでいるか監督し、必要に応じた工務店との打合せを行います。
(参考:
「国分寺Y邸現場レポート」)
E.完成
前記のプロセスを経て、完成を迎えます。工務店立会いのもと、依頼主様にも問題なく完成しているか確認いただき、引渡しをさせていただきます。また、後日発覚した不具合に関しても、早急に対応するよう、工務店に指示します。完成後、半年後、もしくは1年後に、再度不具合等ないか、再度3者立会いのもと検査をし、不具合の対応に努めます。
● 3. 完成までに要する時間
設計・工事に要する時間は、新築の住宅設計の場合、設計期間:6ヶ月、工事期間:6か月、合計1年が、標準的な目安となります。
もちろんご要望に応じて、より短い時間で完成させることも可能ですし、また設計の内容や諸条件によってこれより長くなる場合もあります。
ただし、建築設計にあたっては、よりよい空間を目指して、十分な検討と提案を繰り返すことが望ましく、そのためには余裕ある日程をいただいた方が、結果としてより満足いただける建物となることは、私たちの経験からも間違いなさそうです。また、土地の取得を含めて、できるだけ早い段階から相談していただいた方が、総合的に判断し、細やかな対応をしやすくなると考えています。
● 4. 業務報酬について
業務報酬(設計料)は、業務内容に応じて変わりますが、一般的な住宅設計の場合、総工事費の10%が一つの目安となるでしょう。(建築設計については、旧建設省の告示により、業務報酬の基準値が公示されていますが、私たちは、その基準よりも安価に報酬基準を設定しています。)
設計料は、その計画の内容に即して以下のようになっています。
A. 調査、分析:20万円を下限とし、業務内容に応じて適宜、相談
B. 企画書作成:20万円を下限とし、業務内容に応じて適宜、相談
C. インテリア(内装):50万円を下限とし、総工事費の10~15% 程度
D. 建築設計:200万円を下限とし、総工事費の10~12%程度
ここでの総工事費とは、工事請負契約時における消費税込みの金額です。また、地盤調査費、確認申請等の申請費用は含まれていません。計画地が遠方の場合は、交通費を別途いただくことがあります。
住宅や内装の場合、規模が小さくとも作業量があまり変わらないこともあり、小規模の場合若干料率が上る場合があります。そうしたことや諸条件を考慮し、上記のように多少の幅を持たせています。
ただし、実際の設計においては、多くの場合、必要な作業のみをするという風にはならないものです。と言いますのも、建築は、依頼主や使用者にとって、高額な費用を払うものであり、また生活などの場となる重要なものです。そして私たちに設計者にとっても、使用される方と一緒に空間をつくるプロセスの楽しさを共有できる方が、仕事としてずっとやりがいを感じます。ですから、建築の設計には、形式的な仕事を超えた、使用者との信頼関係とコミュニケーションがとても大事なのです。
ですから、私たちは、いったん依頼を引き受けた業務にたいしては、上記の報酬や契約にかかわらず、できる限りのサポートや相談、提案をさせていただきたいと思っています。
● 5. 設計料の支払い手順
建築設計における設計料は、すでに述べましたように工事請負金額に応じて額が決まります。しかし、一般に建築のコスト計画は複雑な作業であり、また依頼者にとっても設計の過程を通して、望むべき空間のイメージが具体化するものですので、当初から工事費を確定することは困難です。
したがって、最初の段階では大まかな予算を想定した上で、前記の料率を適用し、後日最終的な工事費が決まった段階で、再調整を行うことになります。
設計料の、支払い時期に関しては、業務の進行状況に応じて基本的に以下のようになります。
(1). 相談
繰り返しになりますが、最初の相談の段階では、報酬はいただきません。ヒアリングにより相談内容についての簡単なアドバイスを行い、業務の流れについて詳しくご説明します。
(2). 依頼、契約
正式な業務依頼の契約です。この段階で、頭金として設計料の中から10%を頂きます。その後、調査分析や計画の検討を経て、提案を作成します。
(3). 基本設計
前記の提案をもとに、基本設計図面を作成します。
作成物としては、平面図、立面図、断面図といった基本的な図面や、配置図、面積表、仕上げ表、パースおよび100分の1程度の模型などです。
基本設計終了時に、総工事費を仮決めし、設計料の30%を頂きます。
(4). 実施設計
引き続き、実施設計図書を作成します。
作成物としては、上記基本設計の図面に加えて、矩計図、展開図、構造図、設備図など、工事契約に必要なすべての図面を含みます。さらに、仕上げ等などの仕様に関しては、サンプルなどでご確認いただきます。また、概算工事費の作成や確認申請業務等も行います。
実施設計の終了時に、設計料の30%をいただきます。
(5). 現場監理
実施設計終了後、確認申請などの役所手続きを経て、工事業者と工事請負契約をしていただき、現場での工事が始まります。工事中は、コスト、品質、工程など様々な項目の監理とチェックを行います。
工事が完了し、検査を経た後、建物の引渡しを行い、最後に残りの設計30%を頂きます。
以上を持って、業務は終了となります。
● 私たちの業務に関するご説明は以上です。ご不明の点、その他ご質問等ありましたら、どうぞメールにてお問い合わせください。(
プロスペクターへのメール)