【柴田 徹 : 石材の移動について新たな見解 2002年12月】 2002年12月14、15日、ひたちなか市文化会館において開催されたシンポジウム『茨城県における旧石器時代研究の到達点−その現状と課題−』で、石材の移動について新たな見解を発表した。 石器に使用された石材は、旧石器(先土器)時代の人々の生活を復元する資料の一つとして、非常に重要である。今回、同シンポジウムの準備の一貫として茨城県内全域にわたるかなりの数の遺跡から出土した遺物を観察する機会を得、報告書ではなく、直接観察し、ほぼ一定の鑑定基準で岩種名を決めることができた。 そこで石材から見た茨城県の旧石器(先土器)時代を論じた。 その結果、下総台地において石材から推定してきた事(柴田1994、2002)とかなり調和的な内容が得られた。むしろ補強する結果を得ることができたと言える。 精度の高い石材鑑定を行うことにより、石材ごとに見た採集可能地(石材産地)と石材の出土傾向とをまとめると、石材の移動ルートを推定することができる。 今回の遺物を基に推定できた石材の動きは、以下の6つである。 @ 茨城県中部地域からより海岸に近い平野部を通った南への動き A 栃木県方面からの鬼怒川に沿った南への動き B 久慈川流域から海岸に沿った北への動き C 移動量は多くはないが久慈川流域から海岸に沿った南への動き D 八溝山地の障壁としての役割と、那珂川の谷を利用した八溝山地を横断する動き E 量・時期ともに限定的だが利根川・大宮台地方面からの動き 石材の石器への利用の点から見ると、茨城県については多くの時期において、北部地域・中部地域・南部および南西部の地域に分かれる可能性を示し得た。 北部地域・中部地域においては、地域内もしくは近隣で採取できる石材を主としながらも他地域の石材も出土し、南部および南西部地域においては下総地域と類似した石材組成を示すことを知ることができた。 今回分析に用いることができた遺跡数が少ないこと、各遺跡出土の石器の点数が少ないものが多いこと、石器を観察する時間が短く鑑定精度が十分でないこと、テフラの堆積が薄く、キーになるテフラも見つけ難い結果、遺跡の層位の決定に曖昧さがあることなど、今後検討の余地は多々あるが、一定の成果を得ることができたと確信する。 機会を見つけ、さらに質の良いデータを蓄積し、より高い精度の結果を追求したいと考えている。 |
※ 図をクリックすると拡大図がご覧になれます。 トロトロ石、メノウ、碧玉、珪質頁岩、硬質頁岩、チャート、 硬質細粒凝灰岩の移動経路推定図 (柴田徹,ひたちなか市埋蔵文化財調査センター開館10周年記念シンポジウム,2002.12) |
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