能天気な私だが、鬱の入り口に立った事がある。
高校を卒業してすぐに、松下電器に就職し流れ作業の仕事に就いた。
今の松下電器はどうか分らないが、当時、
社員教育に「PHP]と言う小雑誌を配っていた。
またこれが、良く出来ていて「人生とは何ぞや」を色々な視点から、
色んな著名人が語ると言った、何かを探し求めている若者には、
とても刺激になる雑誌だった。
ご多分に漏れず、私も何かを探していたので乾いた砂漠のように、
スースーと頭に入り、何時しか『今の自分は、これでいいのか?』
なんて、私の脳には今まで無かった考えが誕生してしまい、
私は悩む事を覚えた。仕事中、私は誰よりも速く工程を終え、
次の流れ作業が来る数秒間に、
忍ばせておいた百人一首を少しづつ読み進んだりして、
心の充実感を得ようとした。
しかし、そんな事では私のモヤモヤは解消されず、
会社に行く事に疑問を持つ様になった。
段々、朝が来るのが怖くなり、一晩中本を読んで現実逃避をしたり、
会社が始まる8時30分までに新聞配達をして、
私の頭の中はゴチャゴチャになった。
気が付いたら私は笑う事が出来なくなっていた。
喜怒哀楽が失われた。
それでも微かにある判断力で,1年半勤めた会社を辞めた。
すると嘘みたいにモヤが取れ私は自分に帰る事が出来た。
私の体験は、本当の鬱病とは、
かけ離れているかも知れないが、
人間の脳は嘘をつかないのではないだろうか。
鬱はそれを教えてくれる助っ人の様な気がする。
神様は良い人なので意地悪はしない。
「鬱になった原因を探り、隠した自分の本当の
心を取り戻しなさい」と言ってくれてる様な気がする。
それ以来、鬱にはならなかったが、
記憶を失くした事がある。
ネムハジメの癌が再発したと聞いた時、私はあっちの世界
に丸1日行ってしまった。
そして我に帰った時、興味深い体験を
を思い出した。タムムに言わせれば、タムムの問には
答えているが、それをタムムが確認すると「分らへん」
を繰り返す状態が延々と続いたようだ。その時の私の頭
の中は、そういった現実の出来事を、空の上から私が夢を見
ているみたいに覗いている。正常なら夢は現実ではないの
だが、あっちに行った私は逆になってしまった。
私がこっちに帰る事が出来たのはタムムが怒鳴ったからだ
った。記憶を失くした夢の中でも怒られた事は妙にハッキ
リ覚えている。怒るって大切な事なんだとつくづく思った。
自分に帰った時、最初にたくさんの猫耳人形が私の目に
飛び込んだ。「おかえりなさい」と言ってくれているみた
いで不思議な感じがした。その横で「ほんまに、分ってん
の!分ってんの!」と喚くタムムが可笑しかった。今思うと
あの時記憶が飛んでいなかったら、私の脳は悲しみで破壊され
ネムの残された時間を平常心で、供に暮らす事が出来なかった。
精神的に弱いのだ。現実を受け止める力がなかった。それでも
あのまま記憶を失っていたら、ネムを見送る事が出来なかった。
「自分だけ逃げるな!」とタムムが怒鳴って叫んだのがよかった。
タムムの怒りが私の心に響き、私は逃げる事を止めた。
頼りない2人だが、お互いに無い所を埋めあい、少しずつだが
「成長していけたらいいなー」と思う今日この頃である。

体験

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