「キビの思いで日記」に戻る。

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シュンちゃんと知り合ったのは、もう30年ぐらい前になる。
シュンちゃんは、はじめちゃんが勤めていたデザイン事務所の同僚だった。
「僕、はじめちゃんの事尊敬してるねん」と言ったシュンちゃんを,私はすぐに気に入った。
シュンちゃんも我が家を気に入ってくれたのか、お金もないのに手土産を持参して毎日のように、
泊まりに来てくれた。ギターを弾いて歌も唄ってくれた。
気の良いシュンちゃんは、目を真っ赤にして、おしゃべりな私に朝まで付き合ってくれた。
まさに私が憧れていた青春がそこにあった。
何時も思っていた。『幸せは必ず終りが来る』今回も終りが来た。
終わりは常に無残なものだ。シュンちゃんに可愛い彼女が出来た。
愛想のいい可愛い彼女はシュンちゃんの自慢だった。
とっても可愛くて、芸能人みたいで、私は彼女と話すのが照れくさかった。
でも可愛い彼女は心も可愛く、シュンちゃんと一緒に遊びに来てくれた。
そうなると図々しい私は10年来の親友のように「もし嫌いになったら隠さないで言ってね」
なんてどんどん可愛い彼女の私生活に入り込んだ。
シュンちゃんが結婚して間もなく、シュンちゃん達は何の連絡もしてこなくなった。
タムムちゃんは私に言った。「キビちゃん、シュンちゃん達に嫌われているでー」
私は「タムムちゃんは、ほんまに鬼やな!何で人をそんな風に見るんや!」と激怒した.
シュンちゃん達にのめり込んでいた私だったが、真相を確かめるために
嫌がるタムムちゃんを連れて新居に遊びに行った。
やっぱりタムムちゃんの思い過ごしだと思った。
シュンちゃん達は笑顔で出迎えてくれて、おしゃべりに夢中になって
長居をする私にニコニコと付き合ってくれた。
帰りの電車の中でタムムちゃんに言った
「なー、良い子達やろ、楽しかったやん」するとタムムちゃんは
「楽しんでたんはキビちゃん一人や。手土産で持っていった中に
私らのお寿司もケーキも入ってたんやでー。あんなにたくさんあるのに
開けもせんと6時間もいて、出してくれたんはコーラーだけやん!」
太っちょのタムムちゃんは、お腹が空いていたらしく腹を立てていた。
私はおしゃべりに夢中になると、食事中でも我を忘れてしまう。
皆で食べようと買っていった手土産もすっかり忘れていた。
でもそんな理由で怒るタムムちゃんを
「ほんまに、食いしん坊やなー」といさめた。
しかしシュンちゃん達はそれからも連絡をしてこなかった。
真実一路の私は思い切って「私の事嫌ってるの?」
とシュンちゃんに電話で訪ねた。
すると今までそうとう我慢をしていたのか
「キビちゃんとは、はじめちゃんがいてたから
仕方なく付き合っていたんや!」
と、興奮して怒りながら本心を言ってくれた。
おかしな話だが私は嬉しかった。
どうであれ私のもやもやは解消したのだ。
好かれているのか、嫌われているのか分からないで付き合うのは
私にとっては、這い上がれない沼地にいる様で苦しい事なのだ。
私は心を許してしまうと、思った事を何でも隠さず言ってしまう。
思い出すとシュンちゃんの彼女と何時ものように電話で話を
していたら話題が彼女の弟の事になりその内容で
弟の行為や考え方に本気で
腹を立てた私は彼女の弟を批難した。
身内を愛する彼女が私を許せないのは当たり前だ。
いやいや、それだけではなく色々あったかも知れない。
何しろ職場で知り合って友達にもなっていない
陰気なタムムちゃんに「何でいっつもブスーっとしてるのー
そんなにこの世が嫌やったら死んだらいいやん」
なんて言っていた人間なのだから・・・。
シュンちゃんに嫌いと言われて、分かった事があった。
新居に訪ねた時コーラだけしか出なかったのは
「早く帰って下さい」のサインだったのだ。
タムムちゃんはそれを分かっていたけど私に言わなかった。
言っても『また、説教されるだけや』なんて思ったのかも知れないが
私に対する、タムムちゃんの深い思いやりを感じた。
そしてシュンちゃんに嬉し泣きをしながら
「言ってくれてありがとう」と何度も言って、電話を切った。
本心で付き合った私に悔いはなかった。
それから何年かして、NHKで「ソウルメイト」と言うドラマが始まった。
初めて耳にする言葉だった。
私の傍にも滅多に出会えない大切なソウルメイトが居た。
タムムちゃんと、はじめちゃんは私がどんな事を言ってもどんな事をしても
許してくれて理解してくれる。まさにソウルメイトだ。
そして
『そうか、シュンちゃんとはソウルメイトじゃあなかっただけかー』
なんて、妙に納得した.

シュンちゃん