「キビの思い出日記」に戻る。

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ラブレターは18歳の時、1回だけ書いた。相手は、松下電器に研修生として入社した同じ歳の男の子。彼は、親友が片思いをしていた人だった。「連鎖反応」。毎日彼の話を聞かされているうち、私も同じように彼に恋をした。
恋って凄い。見るものすべてが彼に見え、この世には彼しか存在しなくなった。
彼は私達と同じバレーボールに入部していたので、同級生同士、5人ぐらいでグループ交際をしていた。グループ交際と言っても部活が終わった後、喫茶店でペチャクチャ喋るだけの他愛のない交際だった。彼は歌手の伊東ゆかりさんが好きだと言って、伊東ゆかりさん似の女の人を好きになっていた。しばらくして、彼等は研修が終わり、地元の九州に勤務地が決まった。
私は当時ヘルマン・ヘッセだったと思うが「好きになった意思を、相手に伝えなければ知り合った意味がなくなる」見たいな内容の詩を読み、いたく感動していたので、それを実行した。「ラブレター」を渡した。何を書いたのか全く覚えていないが、気持ちだけは伝えようと思った。結果、私の恋は何処かに行ってしまった。
彼は何の屈託もなく私に言った「あんまり面白いから、自分だけ読むのはもったいないので寮の皆にも見せた」・・・・ですって。何とつまらない人を好きになったものかと、スーッと一瞬で、恋が醒めた。

生まれて初めてラブレターをもらったのは、はじめちゃんだった。はじめちゃんは、私がまんが教室に行っていた事務所の一人だった。ある日、そこのバイトで似顔絵の仕事がありその時、一緒になったのがはじめちゃんだった。はじめちゃんは漫画が上手で、帰りの電車の中色んな絵をおねだりして描いてもらった。数日後、はじめちゃんは、春夏秋冬のイラストを絵巻物にして送ってくれた。添えられた手紙に「付き合って下さい」と書いてあった。
純粋さが眼に沁み、キュンと胸が痛くなった。
私の方が8歳も年上なので、これは犯罪ではないのかと思ったが
全く、付き合った経験がないので好奇心が湧いた。

16歳のはじめちゃんと、24歳の私のデートは
当時、イカ玉が大好きだった私の提案で、
何時もお好み焼き屋さんだった。
お勘定は、年上の私がいきって出していた。
でも、そんな事が4回続きフト
「そんなん、私ばっかり出してめちゃ損やん」と思った。
そしてはじめちゃんに「私他に好きな人が出来てん」
と言って別れを告げた。

半年後、ひょんな縁があり私は、はじめちゃんの
勤める事務所に入社した。
そこで、はじめちゃんの描いたイラストを見た。
何だか切なくなって涙がこぼれた。
彼の絵はとてつもなく純粋で
とてつもなく優しく、とてつもなく愛おしかった。
家に帰って丸めた絵巻を取り出し彼の心を思い出した。
そして自分の書いたラブレターを思い出した。
何を書いたのかさえ思い出せないラブレター。
「つまらない人間」とは本当は私の方だった。

ラブレターは美しくなくてはならないと
自分の浅はかさを反省した。

ラブレター