
タムムちゃんがパートに出かける時必ず言う、合言葉がある。
「おブスは何時も?」と私が聞き「愛嬌!」とタムムちゃんが答える。
実を言うと24歳の時、私はこの考え方に感銘を受けた。
それを与えてくれたのは、デザイン事務所の先輩で、よく似顔絵の仕事で一緒になったnekoちゃんだ。nekoちゃんは猫と暮らし、猫を愛し、猫の話しかしないユニークな女の人だった。私は当時、全く猫に興味がなかったので猫の話を聞きながら、遠くを見ていた。するとnekoちゃんが突然「分かった!だから私達おブスは愛嬌で勝負するのよ」と息まいていた。何の話でそうなったのか忘れてしまったが、その時初めて「私はブスなんや」と教えてもらった。そう認識すると全ての謎が解けた。まず彼がいない。団体行動では何時も一人ぼっち。喫茶店の「ウエイトレス募集」と書いてあるのに、面接を希望したら「あっもう決まりました」なんて言われる。男友達に意見を言うと煙たがられる。食事に行った2次会では私の綺麗な友達を残し「キビちゃんは帰り」と周りの男の人に言われる。「そうか、そうやったんや」と目から鱗が取れたように世間が見えた。真実一路の私は「何と正直で、潔い人なんだ」とnekoちゃんを尊敬した。nekoちゃんは好きな人が出来て、片思いしていた。「だから私、何時も彼にニコニコしてやるの」なんて言っていたが・・・・・。此処からが少し合点がいかない事がある。nekoちゃんと似顔絵の仕事をすると「こっち向いてくれないと描けません!」なんて小さな子供にきつく言うし、お客さんが立て込んでいても、時間が少しでも過ぎるとニコリともせず、怖い顔で「此処で終わりです!」とピシャリと言う。私はnekoちゃんの愛嬌の良い顔を見るどころか、ブスーットした無愛想の印象がnekoちゃんにはある。nekoちゃんの自慢は「私誰とでもすぐに友達になるの」だった。何でも100人ぐらい友達が居るらしく「私が遊びに行くと喜ぶの」と鼻にシワを寄せクスっと笑った。その時私は初めて、nekoちゃんを「あっ可愛い」と思った。nekoちゃんの言っていた愛嬌とはこれなのかと思った。片思いの彼の話をしてくれる時もクスっと笑った顔が可愛かった。
『仕事中でもこんな風に笑って欲しいなー』
なんて思ったがnekoちゃんは『何か怒っているの?』
と思うほど何時も不機嫌な顔をしていた。けどnekoちゃんの
可愛い顔を知っている私はnekoちゃんが好きだった。
しばらくして私も猫と暮らすようになり
nekoちゃんが猫の話ばかりする気持ちが分かった。
ある日また仕事で一緒になったので
「猫って可愛いなー」と猫の話で盛り
上がるのかと思っていたら
「私、野良猫にご飯を上げる人が許せないの
私は絶対に上げない」と言い
「最後まで面倒を見ないのに無責任だわ」と続けた。
私はnekoちゃんの言い分も分からなくはないが
少しガッカリした。ご飯をもらって1日
生き延びたら明日の希望が生まれる。
そしてまた1日生き延びたら未来は開ける。
その瞬間を生きる事が、大切なのではないか。
そのチャンスに少しでも私の差し出すご飯が
役に立ってくれたら、それでいいのではないのか。
なんて思った。少しnekoちゃんが色あせて
見えた。そうなると私はnekoちゃんに興味が
薄れ、nekoちゃんの存在を意識しなくなった。
気がついたらnekoちゃんは何処かに
行ってしまったのか、それ以来逢えなくなった。
けどnekoちゃんの教えは今でも私の中に
息づいている。
「愛嬌」が一番大切なのだと言う事を
nekoちゃんは可愛い笑顔で、私に教えてくれた。
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