

「この世で何が一番嫌?」なんて聞かれたら「束縛」と答える。
束縛は私の意思を奪う。束縛からは何も生まれない。束縛は全てを閉じ込めた嘘。嘘からは何も生まれない。
私は昔、束縛を体験した。はじめちゃんの伯母との同居が原因だった。
毎日が地獄だった。私は伯母さんに好かれていると勘違いしていた。だから地獄なのだ。伯母さんは私に「嫌い」と言ってくれなかった。だけど私に対する態度は「嫌い」だった。私を蔑んでいた。それをヒシヒシ感じるのに伯母さんは私の事を「嫌い」と言わない。私は自分が至らないのだと思いこんだ。これも地獄。
泣きはらした顔で映画を見に行った。題名も俳優の名前も忘れたが内容はプライドを守るために乞食を選ぶ話だった。世間からどう思われても自分の意思を貫く主人公に感動した。「美しい」と思った。その帰り道、占いの館に立ち寄った。私と伯母さんの相性を見てもらった。「伯母さんはどんな人とでも合わない」と占い師は言った。私は「私が悪いわけではないのだ」と初めて思った
一瞬で呪縛から解放された。少し元気になった私は、伯母さんが私を本当はどう思っているか、どうしても知ろうと思った。もし私の事が好きだったら伯母さんと仲良くなろうと決めた。私は伯母さんの日記を盗み読みした。そこには私の悪口が一杯書いてあった。嬉しかった。「私が感じていた事に、間違いはなかった」と本当に嬉しかった。私は好かれていると思っていたから束縛されていたのだもの。私はやっと「伯母さんと別れられる」と言う理由を手に入れた。
しかし伯母さんとはじめちゃんは、切っても切れない仲だ。
私は誰にも告げずヒッソリと姿を消そうと、小さなカバンを一つ下げて家を出た。朝1番の電車に乗る為、オールナイトのファミレスに行った。ココアを飲んでいると、ふとはじめちゃんの顔が浮かんだ。『締め切り前なのに探しているだろうなー』
なんて思った。彼を安心させたかった。
「もう帰らない」と電話をした。
彼は「伯母さんには出て行ってもらう」
と言った。ビックリした。
私を選んだ彼の決心に驚いた。
伯母さんは近くのアパートに
引っ越しをした。私はもう2度と、
自由を失いたくないと思った。
これからはどんな事があっても
自分の気持ちに正直に生きて行こう
と思った。自由に生きることが
どれだけ幸せなのかを改めて
知った。世間の冷たい眼なんか
束縛に比べればどうってことはない。
地獄とは「自分を見失う」事だから
地獄から生還した私には、もう何も
怖いものはなかった。
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