映画



私の父は何一つ良いところがなかったが、子供の頃映画にはよく連れて行ってもらった。私は市川雷蔵が出てくると、映画館なのに「キャーッ」なんて叫んで大騒ぎしていた。あの時代は日本も「ニューシネマパラダイス」のように映画が唯一つの娯楽だった。はじめちゃんも映画が大好きで、レンタルビデオが一般的に借りやすい値段になるまで、私達はオールナイトまで出かけ、3本立てを朝まで見ていた。交通事故にあって、足が腫れても映画館に通った。私達の生活に「映画館」はなくてはならない存在だった。交換手をしていた頃の楽しみは、夜勤帰りの映画鑑賞だった。一人で飲み物や食べ物を買いこんで、ドップリ映画に浸るのは、私にとっては極上の贅沢だった。ただ困るのは暗くて見えないせいか、こんな私にさえ時たまだが、チカンが忍び寄って来る事だ。今から思うと「若い」と言うのは見かけなど関係なく、チカンのおじさんにとってはそれだけで、魅力なのかもしれない。交換台にビックリするぐらい、おブスな女の子が入ってきた。しかし彼女はすぐに結婚した。相手はかなり年上の男性だった。彼女の武器は「20歳と言う若さ」だ。この子は偉いと思った。「若さが取り柄」と言う自分を知っている。そんな風に、人生をうまく生きるのは良い事だ。私も25歳だったから結婚出来たのだ。美人は婚期を逃しても良いと思う。美人がいるだけで、その周りにはドラマが生まれる。美しさを振りまいてやれば良いのだ。映画のヒロインが美しくなければ「お金を返せー」なんて言ってしまう。飛びぬけて美しい人は、結婚をして家に籠ってなんかいないで、歴史に残る映画に出演して私達に夢を与え続けて欲しい。美しく生まれた以上、見せる義務があるのだから、当然全裸にもなってもらいたい。神が造った「美」をすべて見てみたい。芸術もそこから生まれるのだから。などと屁理屈を言っているが、はじめちゃんと見る映画は、殆どがホラーや、SFや、サスペンスや、アクションや、喜劇で恋愛ものや、シリアスなものは1回も観なかった。彼は現実が苦手だった。ニュースさえ見るのを嫌がった。現実は自分の手では、どうにもならないから、現実なのでそこには夢が生まれない。だから彼は映画にのめり込んだのだ。
ほんと映画はすごいと思う。
一瞬で別世界が広がる。
一瞬で夢の世界に引き込まれる。
一瞬で他人の人生を体験出来る。
一瞬で嫌な事を忘れられる。
一瞬で未来を信じられる。
一瞬で自分は一人ではないと思う。
皆生きて生活しているのだと、分からせてくれる。
自分に人生があるように、人にも人生があるのだと
知らせてくれる。未だに映画が君臨しているのは
良いものは残ると言う証拠なのかも知れない。
「人間って案外捨てたものではないなー」
なんて思っているのに、
最近ビデオがDVDになったので
我が家の古い録画器ではもう映画鑑賞は
夢の夢となってしまった。
映画大好きなのに
アー何時になったら
観れるようになるのかしら。

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