「いや何でオレだよ」
「自分じゃできねェんだよ」
「ゾロにして貰えよ、ソフトに説明書付いてんだろ・・・・・・それか業者に任せるとか」
「ゾロに秘密で準備してえんだ!業者に頼むにしてもマスターが依頼ださねえと駄目だから、結局秘密に出来ねェだろ!」
オレには話の見えない言い争いをさっきから金髪とウソップが繰り広げている。
なんなんだ、一体。
「・・・・・・ったく、ほんとおまえらにゃあ勝てねェよ」
ウソップはぶつくさ言いながらも承諾したらしかった。
ぱっと金髪の表情が輝く。花が咲いたように。
金髪は嬉しそうにウソップの肩をバシバシ叩く。いってェ!とウソップが叫ぶ。なんとなく面白くない。
話にも加われねェし。
「おし、じゃあ、ゾロ、早速ウソップにパスワード教えてやれよ」
「・・・・・・・・・・・・」
金髪は調子にのって胸をはっている。
釈然としねえが、さっき約束しちまったから仕方ない。
すげえ言いたくないが、ウソップにパスワードを教えてやる。
はやくはやく、と金髪に急かされた。パスワードはこいつも知ってるはずだが、自分では他人に教えたり出来ないらしい。
「・・・・・・グルグルまゆげ」
ぼそっと呟くと、ウソップはキーボードをテレビに接続しながら「アア?」と聞き返してきた。
聞き返されると、なんとなく、アレだ。言い辛ェ。
「グルグル・・・・・・」
「あ?」
「グルグルまゆげ」
クソ。二度も言わされた。
「なるほど。平仮名?カタカナ?」
「グルグルがカタカナでまゆげがひらがなだ」
「そっか」
なんだかオレとあいつの間でしか分からないことを第三者に知られるのは、照れくさい気がして落ち着かなかった。
オレがパスワードを教える間、金髪はソワソワしながらもずっと黙ってた。
やけに人間くさい。
こいつがこんな、生きてるみてえな奴だから悪い。
オレにはもうこいつが家電になんか見えなくなってきたし、それでいいと思い始めていた。そのほうが違和感が無い。しっくりくる。
金髪を都合の良い家電だと思うのは無理だ。
そもそも全然言うこと聞かねえし。
もしこいつに不都合な点があるとすれば、それはこいつの欠陥じゃなくて、こいつの性格なんだ。そう考えようと思っていた。
多分それは、ルフィの考え方と近いんだろう。パソコンのシャンクスを、好きだと言った。
そんなことを考えてたら、ウソップがパスワードを入力するやいなやのうちに、金髪に
「てめえは出てけよ」
と言われた。それがまた、威嚇するような言い方だった。
なんだそりゃ。すげえ腹立った。壊すぞこのグルグル家電。



すごすごと部屋に戻ったが、落ち着かなかった。
あいつは一体何を企んでいるんだろう。
オレに内緒で準備したい、と言っていた。
と、いうことは逆に考えると、オレに関係のある事柄なんだろう。
ウソップに頼んだってことは、機能面に関わることだろうか。一体何を変更したいんだ。
こないだから急にはじめたバイトはそのためだろうか。
とにかく落ちつかず、うろうろ部屋のなか歩いたり、普段絶対そんなことしないくせに突然学校の教科書開いてレポートの準備をしてみたりして時間をつぶしていたら、夜になったのでバイトに出かけた。
深夜、アパートに戻り、木製の階段をギシギシ上った。
階段を上り終えないうちに、きい、と控えめな音がして、オレんちの部屋のドアが開いた。
「おか、えり」
どこか気まずそうに顔を出したのは、金髪だった。見慣れない、ラフなTシャツとハーフパンツ姿だ。バイト先のスーパーでもらったと、こないだ言ってたやつかも知れない。なんか見るからにスーパーで980円で売ってそうな服だ。
なんだァ。もうウソップのとこでの用事は済んだのかよ。
文句のひとつも言ってやろうかと思ったが、おずおずといった具合にこちらを見てる金髪見てたら、悪い気分じゃなかったのでとりあえず黙って部屋に入ってやることにした。
オレの足音聞きつけてドア開けたってのも、悪い気分じゃない。
「あ・・・・・・」
玄関口で金髪の横をすり抜けたが、金髪は立ち止まったままついてこない。パソコン用のシャンプーのあまったるい匂いがした。
部屋には布団が敷いてあった。
今まであらかじめ布団が敷かれていたことなどない。
違和感を覚え、振り向くと、がちゃりとドアの鍵がかけられたところだった。
今まで、ろくすっぽ施錠されたことのないドアなのに。
「・・・・・・?」
不審に思って問いただす視線を金髪に向けると、奴はにやりと口角を吊り上げた。
「覚悟しやがれ」

そしてオレはふと気がつくと、物凄い手際の良さで金髪のやろうにくみしかれていた。
しかも、その手つきは、やけに優しかったのだった。



06/8/02
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よーし、小出し作戦だー!予定通りだー!(嘘)