翌朝、いつもの時刻に金髪に起こされた。
起きぬけだと言うのにやけにニヤニヤした顔をこっちに向けている。
「なんだよ」
「いや、ありがとな、シャンプーとリンスとローション」
夕べのことだってのにいきなり礼を言ってくるのでオレはぎょっとした。そんなに嬉しかったのだろうか、と思うと何故か落ち着かない気分になった。よくよく考えてみれば、夕べはあのあとすぐスリープさせたんだから、金髪にとってはついさっきのことのように感じるのかも知れない。
とりあえず起きて、顔を洗ってる間にメシが出来てた。食ってる間ずっと金髪がニヤニヤこっち見てるからムカついた。
だが今日もコイツを学校に連れてくか、と思い立った。
太陽で充電するとかいうし、ノート代わりにもなるというし、いいだろ。サンジを風呂にいれろと文句言ってたナミの奴に、きっちり洗った金髪を見せてやるか。
「おい、学校行くからついてこいよ」
昨日投げ出したまんまの鞄を手に持って金髪を呼ぶと、犬みたいにまろびながらついてきた。よっぽど出かけるのが好きなんだろ。
……オレと。
「ラブパソコン」の異名はダテじゃねえな何だこの設定。
外は晴れだったから、充電もばっちり出来るだろう。





大学につくと、一時限目の授業でいきなり問題が勃発した。
教授が学生全員に授業中はパソコンをスリープさせろと言い出したのだ。
どうやら奴はパソコンが嫌いらしい。
最近の学生は、パソコンにノートまでとらせてちっとも勉強しない、と厳しい顔で教室を見渡す。
何でもかんでもパソコンでやらせようとする大学の方針に対する、精一杯の抵抗か。
その考えには大いに賛同する。
だが金髪をスリープさせようとして、はたと我に返った。
オレは当然、金髪の手を握っていつものように「手の甲にキスしてスリープ」の手順を踏もうとしていたのだが、まわりの連中はそんなことしていない。
それぞれパソコンに合図のようなものを送ったり、軽く頭部に触れるなどして簡単にスリープさせている。
ナミとかはどうしてんだ、と思って前の席に座ってるナミを見ると、ナミはチョッパーの腹を探ってヘソのところを押していた。あんなとこにボタンがあんのか。
(くそ……)
オレは舌打ちする。
ナミがこっち見てやがる。
さっさとスリープさせろって目で、見てやがる。
できるわけがない。
「おい、どうしたんだよゾロ」
片手を軽く握られたまま、金髪はきょとんとしていた。
きょとんとしてる場合じゃねえよ。どうしろってんだ、この状況。教授までこっち睨んでるし、にっちもさっちもいかねえ。

やっぱりこいつはとんでもねえ珍品だ、とつくづく思った。

結局オレは金髪をその場でスリープさせることを断念して、アパートに帰らせることにした。
金髪は「来てばっかりなのになんでだよ」とふてくされるし教授はさっさとスリープさせろと怒り出すしナミは不審そうにこっちを見てやがるし、参った。
ウソップは、カヤを学校に連れてきた意味がないじゃないかと、講義のあとふてくされていた。
なんでもカヤ2号には授業の要点をまとめるためのソフトをわざわざインストールして、それもあちこち奴にとって使いやすいような改造かなんか、そういうことをしているらしく、折角のそのご大層な機能の使用を禁止されたので、不満らしい。
パソコンのそんな使い道を考え付きもしなかったオレは驚いた。
そうか、パソコンってのは、そういうことに役立てるものなのか。
と言ってもうちの金髪にそんな便利機能はついてねえだろうし、ついててもオレには使いこなせない。何のためのパソコンなのか。
……本当に、何のためなのか。
家事はしてくれてるが、それにしても、何かがおかしい。
考えれば考えるほど、オレは参った。





帰宅するともっと参ることが待ち構えていた。
アパートの部屋の中がやけに騒がしく、玄関に見慣れない靴が3足ある。
何事かと思い、台所を通ってその先の和室のふすまを開けると、見慣れた顔の来客が3人来ていた。
ダチのルフィとルフィの兄貴のエースと、二人の父親であるシャンクスだ。
そしてその三人の客に、丁度金髪が茶を出してるところだった。





05/07/29
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一話目なので短めにしてみました。
これから宜しくお願い致します。