精一杯上体を反らして、深く、緒方さんと繋がるようにする。緒方さんの膝に手をかけて、ボクの体から緒方さんの体の一部を出入りさせる。一生懸命に。
ひとつになる、とは良く聞く表現だが、こんな時、ボクは、悲しいくらいひとつになれない体を感じる。緒方さんの体は、出たり入ったり。そこに介在する快楽は、個々のものなのだ。どこまで行っても、個々のものなのだ。
ボクの体を使って緒方さんがオナニーして、緒方さんの体を使ってボクがオナニーする。そんな感覚が離れないことがある。絶頂のタイミングを合わせれば、快楽の共有を信じそうになるけれど、それは飽くまでも誤認にすぎない。馬鹿みたいだ。ひとつになるなんて、身体全体のうちの、ほんの一部。たかだかペニスの長さの分しか、体は合わさっていないのに。
そんなのじゃ、足りない。全然足りないのだ。
勿論、そんなことを言い出して緒方さんを困らせようとは思わない。何だか、変なふうな誤解をされて、緒方さんを変なふうに傷つけてしまいそうだから。そういう、下世話で滑稽な話では、無いんだ。
「緒方さん……」
ボクは心もとなく彼を呼ぶ。どうして、彼とボクとはひとつで無いのだろう。少しでも、彼をこの身のうちに込めようと足掻いて、ボクは繰り返し、彼の名を呼ぶ。緒方さんの腕が、ボクの肩を捕らえる。抱き寄せてくれる。キスしてくれる。腕が邪魔だ。唇が邪魔だ。胸が邪魔だ。もっと、彼と深く寄り添うために。ボクと彼との判別は、なし崩しになってしまえば良い。
「平気か?」
荒い呼吸の下から緒方さんが気遣ってくれる。平気か、平気じゃないか、いちいち尋ねられるのが煩わしい。何故、あなたに分からないのだ。お互いの、最たる理解者でありたいとボクは願うのに。いや、違う。そうでは無い。そうでは無くて……
緒方さん、ボクは……
「ボク、緒方さんと、同じが良い」
ぴたりと彼の動きが止まった。ボクは大きく息をついて、その顔をなんとか覗きこむ。緒方さんは、眉を引き絞るようにして目を瞑っていた。それから、薄く目をあけてボクを見る。
何だろう。
と、思う間もなく、ボクの身体の中に緒方さんが射精した。詰めていた息を吐き出しながら、緒方さんが、ごめん、と情けなさそうに言った。ボクは思わず笑ってしまった。可愛らしい緒方さん。こんなことは滅多にない。だって緒方さんは大人で器用だから。
……小さな声は、聞き漏らされたに違いない。
緒方さんはボクの身体から自分の身体を引き抜くと、ボクを下に組み敷いて、ボクの足を持ち上げて大きく足を開かせる。身体の奥がきゅっと動いて、後ろから、緒方さんの精液がいくらか零れた。思わず、ボクは顔を背けそうになる。
緒方さんがボクの足許に移動する。まだ何もされてなくても、予感がボクの身体を震わせる。緒方さんはわざとボクに見せるように、舌をだしてから、ゆっくり顔を下ろした。その先端が触れ合うか合わないかのうちに、ボクは裏返ったような声を出してしまった。
緒方さんが意地悪く鼻をならして笑う。
「おい……折角人がサービスしてやろうというのに、少しは我慢してろよ」
「あ…だって、ボクだって、もう……」
もう、何もされなくても惰性でこのままイってしまいそうだと思った。すると、緒方さんはボクの膝の裏側を微妙なタッチで撫ぜ始める。ボクの意識がそこへ流れる。くすぐったい。それから、もどかしい快感に移り変わってゆく。
「や…緒方さ……苦し……」
放置された熱が残るままに、次の火を点けられる苦しさにボクは喘いだ。
「嫌……早く」
「もう少し待てよ」
緒方さんの手が、今度はボクの肩口を撫で擦り始めた。そんなところが、こんな風に感じるのだとボクは初めて教えられた。ますます、苦しい。
「やだ……ッ、自分は先にイっちゃったくせに」
ボクがそう言うと、緒方さんが吹き出すように笑った。その後、ようやく、ボクの身体の核心に触れてくれた。
「あ……ッ」
遠のきかけた階の頂上へ一息に導かれる。緒方さんの手がボクのペニスを扱く。ボクはわけが分からなくなって、変な声をあげた。
「おい、ちゃんと見てろよ」
と、緒方さんが言う。きちんと見ておこうとボクは思った。彼のやり方を、出来る限り覚えられると良い。


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