ギルバート×レイ
小説 吉野様


『例えば面接 〜本当はずっとやりたかったこと〜』 











今日も今日とてよく晴れた金曜日。

デュランダル邸の住人はいつもより少し早起きだった。


「おいで、レイ。髪を結んであげよう」

共に朝食を取り終えて、席を立ったレイに向かってギルバートがそう告げた。

「…結んだ方が良いのですか?」

「今日は面接だろう?ああ、リボンは黒か紺だろうね」

「い、いえ、リボンは…」

「大丈夫、君は可愛いから」

意味が分かりません、と心の中で返していたレイに構わず、ギルバートはレイをサンルームに誘った。

ガラスのドームは陽光が隅々まで行き届き、レイとギルバートがしばしばティータイムを過ごしたりプラネタリウム代わりにする場所である。

ギルバートはそこの椅子にレイを座らせると、楽しそうにレイの髪を器用に束ねて、最後には本当に細めの黒いリボンをつけてくれた。

「やはり、サイドの髪は短いから無理だったな」

「…ありがとうございました」

礼を言うことに少し疑問を感じながらも、レイは立ち上がって頭を下げた。

「赤のリボンも似合いそうだが面接だしな」

「ギル、私は女子や犬猫ではないのですが?」

「分かっているよ、私もレイの話をしているのだが?」

いつも通りに優しい笑顔を返してくるギルバートにレイはもう何も言えなくなって苦笑だけを返した。

「…では、行って参ります」

「ああ、気をつけて。今日はレストランを予約してあるから夕食は外で食べよう。君の入隊祝いに」

「?本日、結果までは出ませんが」

「受かるさ、レイなら」

「…ご期待に添えますよう努力します」

レイは再び一礼して、ギルバートに背を向けて行った。そのレイの背中が見えなくなってからギルバートは独り呟いた。

「本当に気をつけて…な」


面接は一人ずつ。最初は控え室で待たされ、名前を呼ばれるのを待つ。

レイが控え室に入ると、その場の空気が一気に変わる。それは真夏に降る雪のように、誰もの目を奪い、興味を引いた。

黒い細身のスーツを纏い、綺麗な金髪を黒のリボンで束ねた、極上の美少年。

それでも、場違いだと感じられなかったのは彼のアイスブルーの瞳に何物をも貫きそうな力があったから。

レイは手近な椅子に座るとそれから名前を呼ばれるまで微動だにしなかった。

そうして、レイの番となり、レイは面接室のドアをノックして入室すると綺麗な一礼と敬礼を見せる。

「失礼致します。レイ・ザ・バレルと申します。宜しくお願い致します」

レイは冷静な顔で面接官達を見つめていたが内心、不思議で堪らなかった。

何故、この面接官達は自分を見て、驚いたような顔をしていたり、驚きの余り立ち上がりかけたり、鼻血を出してたりするのか。

ついには震えていた拳を突き立てて、ガッツポーズをする者が。

「やったぞ!天使は再び我らの元に舞い降りた!!」

何だ?天使って。

「クルーゼ隊長がいなくなられて、どれ程沈んだ毎日を送っていたことか…!」

クルーゼ隊長が毎日どうしてたというのか。

「我々のアイドル伝説は途絶えさせてはいかんのだー!!!」

どうして軍にそんな伝説があるんだ。

面接室はまるでステキな演説でもあったかの如く、歓声で湧いた。そもそも面接のくせに数十人の軍関係者がいるのはどういうことか。

レイはいっそこのまま帰ってしまおうかと思ったが、ギルの為、という呪文を10回程唱えることでこの場に留まった。

「はっ…すまない、取り乱してしまったな…掛けてくれたえ」

面接官長らしき男の言葉でレイと立ち上がっていた面接官はようやく席に着いた。

「では、面接を始める」

「はい」

「まず…っご趣味は?」

至極、真顔で息を飲んで質問してきた面接官長。その顔は若干赤く染まっている。

これは果たして見合いか。獅子脅しこそ聞こえてこないが、これは見合いか。

「………読書です」

レイが呆れたように間を置いて答えると、またしても面接室はわぁっと湧く。

「者共!図書館だ!新しい図書館を建設するのだ!!」

「はっ、今すぐに!!あ、いや、この面接が終わり次第!!」

「何だよっ?今すぐ行けよ!」

「嫌ですよ!まだ見てたいじゃないですか!」

「あの…」

「はっ、大丈夫!君のせいで喧嘩しているわけではないから気にしないでくれたまえ!」

「…はぁ。そうではなく…」

「ぐぁは!!!官長ー!!事件ですー!!」

「何だ!?」

「か、彼の書類の保護者名を見て下さい!!」

「んー?…な、何ぃ!?」

レイの保護者はギルバート・デュランダル。議長のギルバート・デュランダル。我らのギルバート・デュランダル。

そんな事実を目の前に(というか事前にチェックしておけ)彼らは打ちのめされ、何故だか着物を着て、ギターを持ってしまった。

そして、更に歌らしからぬ歌を歌い始めた。

  ♪そう言えばっ、うちの議長が金髪美少年を拉致保護したって言うじゃなぁ〜い?
    
    それがこの子で、もし手ぇ出そうものなら…俺達マジ切腹ですからぁああああ!!

    ざぁんねぇん!!!!


面接室には切ない叫びが木霊していました…。

「…あの、退室しても宜しいですか?」

レイは入室してからずっと言いたかった言葉をやっと告げた。じゃかじゃかとギターを奏でていた面接官長は涙ながらに頷くのでした。

「うん…っまた来てね!」

「…受かれば(嫌ですが)来ます…それでは失礼致します」

レイは最早一礼も忘れて、さくさくと出ていきました。その後、面接室は会議室と化しました。

レイの合否についてではなく、レイの合格など無言の内の大前提に置いて、彼の配属や彼のために出来ることを大真面目に話し合ったのです。









「おかえり、レイ。早かったね」

窓から見えたから、とわざわざ養い子を玄関まで迎えに出てきた家主はいつも通り優しく笑う。

レイがその広げられた両腕と大きな胸にポスッと飛び込むと、ギルバートは優しくレイを抱きしめた。

「………何で教えてくれなかったんです?」

「うん?面白そうだったものだから」

主語はなくとも何のことか、察しの付いたギルバートはやっぱり笑う。レイは抗議とばかりにギルバートをギュッと抱きしめる。

「君のそんな顔を見るのは随分と久しいから。恐かったか?」

「恐かったというよりは…不安です…受かれば、あそこで働かねばならないかと思うと…」

「随分だな。大丈夫、あそこは私の側だよ」

「それは…そうですが…」

「さ、嫌なことは忘れて、夕食前にドライブでもしよう。着替えておいで」

「っはい」

やっと笑顔を戻して、駆けてゆくレイを見ながらギルバートは一本の電話を入れた。

「…もしもし?私だ。今回の入隊希望者面接官陣を中央から外しておいてくれたまえ。ではな」

ギルバート・デュランダル。彼は決して敵に回してはいけない男である。





END









ぷはははははは(≧∇≦)ギター侍(笑)!!
もう面接官達の気持ちわかりまくり!!(≧∇≦)//
レイにゃんが面接に…面接に…面接に…///
はあはあ…それだけでヤバいですよマジ!!
レイにゃんを思いあまってハグとかしちゃったら
マジでデュランダルに死地に追いやられるのは…間違いナイ…(-_-u//
それでも良いのです!我らが金の天使アイドル伝説万歳!!万歳!!