朧月はお前を思い出す。
地球に降りて、初めての夜は何の因果か、そんな月夜だった。
ぼやけて見えるくせにその月光の力は変わらずに雲を照らす。
けれど、どうしてか闇に溶けてしまいそうな危うさ。
これは、不安だ。
この腕で抱いていても時折、消えてしまいそうに思う。
更に今は抱くこともかなわない。感じることぐらいは、出来るけれど。
戦場で会えば間違いなく、俺はお前を殺そうとするだろう。その自信はある。
ただ、未だ、お前を失う覚悟は出来ていないのかも知れない。
お前の全てなんて全然見てないのに失うなんて勿体ないだろう。
でも、きっと全てを知ってしまえば失えなくなる。そんな気がしていた。
「…はーあっ、なぁんか矛盾だらけだな、俺ら」
「何のことだ?」
「はっ?」
突如、背後から聞こえた声に勢い良く振り向くとそこにいたのは当の本人。ここにいるはずのない、ラウ・ル・クルーゼ。
ベージュの大きな布で全身を包んで、顔もよく見えないが僅かに見える見事な金髪と、覚えてしまった唇の形で分かる。
何よりもこの声を俺が聞き間違うはずがなかった。
「だ…っ?な…っ?な、んで…ここ…っ!?」
「ちゃんと話せ」
ひどく慌てた俺に対し、いつも通りに冷静な対処。普通ならいるはずない、なんてこいつには無関係な常識だったようだ。
「そっちこそ、ちゃんと説明しろよっ。何だって、お前がこの砂漠にいるんだ?まさか艦ごと降りてきたんじゃ…っ?」
「いや、私一人だ。わざわざ追わなくても、ここはザフト圏内だからな」
「じゃあ、何で…」
「さて…何でかな」
そう言って、ラウは頭部を覆っていた布を外し、誘うみたいに笑う。いや、実際、誘ってるんだろう、これは。
無意識だったら怒るぞ、俺は。
風に流れる髪を手で押さえて、風が来る方向を目を細めて見据える姿にどきっとした。
何だって、この男はこんなにも夜やら闇やらが似合うんだろう。やはり、月によく似ている。
「…お前って月に似てるよな」
「月?」
「時々…怖くなるよ。消えそうで」
夜が、闇がお前を連れていってしまうんじゃないかと。朝日の光に掻き消されてしまうんじゃないかと。
このまま触れても、お前は消えやしないだろうか。
「馬鹿者。我々の戦場は宇宙だぞ。宇宙で月が消えるか」
ラウが呆れたように吐いた言葉にそりゃそうだ、と妙に納得し
た。
俺がどんなにシリアスに考えてみても、お前はそんな風に簡単に答をくれるんだな。俺はお前らしいと笑った。
「しかし、月か…そうかもな」
「ん?」
「月はお前がどこへ行っても追いかけて行くだろう?…まぁ、愛する為か、殺す為かは分からんがな」
そう言うラウの顔がとても穏やかに見えた。最後の方は多少、物騒ではあったが俺達にとってはそれが真実。
俺は抵抗されないのを確認しがてら、ゆっくりとラウを抱きしめた。
「今日、追いかけてくれた目的は前者なんだろ?」
「お前のキス次第だな」
「りょーかい」
ラウの唇を塞ぐ最後、下手だったら殺すぞ、などと囁かれたがむしろ笑えた。俺がそんなヘマはしないって知ってる顔だったから。
寒いはず砂漠の夜が妙に熱くて気持ちいい。
ラウと一緒に砂漠に倒れ込んで、ラウを包む大きな布をそこに広げながら耳元に唇を寄せた。
「こんなの着てきてくれたのはこうする為?」
「お前の忍耐力の無さは私が一番良く知っている」
同じように耳元で囁かれて、やはりラウのが一枚上手だと再認する。
俺が黙ってザフトの軍服に手をかけながらラウの首筋に口づけると、ラウは勝ったな、と言って笑った。
「…そんな余裕無くしてやるよ」
負け惜しみにそう言ってもラウはまだクスクスと笑っていた。
それが何か、幸せそうだったのでまぁ、いいかなんて思ったり。
お前は俺の光。包み込むなり、撃ち殺すなり好きにすればいい
。
俺は最期までお前を見て逝くから。
それが俺の最期で、お前の最期でありますように。
手なんて繋いで逝ければ最高だけどね。そんなことありゃしないだろうからさ。
END
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儚いクルーゼ隊長は、まるで月の妖精さんのようです(〃T∇T〃)
と言ったら吉野さんに大ウケされたんですが(笑)///でも何もしてなさそうで
何かしてるハズの隊長は、隠れて色々な所に出没されてるのかも(∋_∈)とか
思ってみたり///素顔はだれも知らないですし
砂漠の民っぽい衣装の隊長はまた麗しくてうっとりでしょうねーーー(〃∇〃) !
隊長の殺し文句に、タラシのフラガの方がタラされまくってます(笑)
ああ隊長〜///