クルーゼ隊長追悼

小説 上条結月様


理屈 








一瞬──



改めて思った。人は、人が死ぬのはいかにもあっさりと…呆気ないものだ。ことに、戦場という場所においては。


痛み。
それは感じない訳ではない。


だがそれ以上に…





愉悦。
死に対して…の。


私はずっと望んでいたのだろう。他の者のように、生への執着などは無かった。

欲しかったのは、ただ…欲しかったのは、ピリオドをうってくれる、手。力。思い。


あの幼い少年は、確実に私を無へと誘ってくれた。
いや…最初から私は、無だったのだ。精神の…無。
他にどう言えばいい?
実際何も存在しなかったのだから。


意味のある存在。
生まれてくる意味はあった。媒体、入れ物として必要とされたから。
だが、すぐに必要とされなくなった。
命の短い肉体は不要とされて。
無意味とされて。

そう言い放った、私のオリジナル。



見えるか?


自分が作り出してしまった生命体が…誘った世界の姿だ。
だが選んだのは人。
私が拓いた道を、自らの足で踏み込んだのは皆、お前と同じ…愚かな人間だ。


停戦協定を結び、戦をやめたとしても、人は争いも、諍いも、憎みあうこともやめられはしない。


だから消し去りたかった。
醜くて、卑しい世界が…ただ、憎くて。

世界を。
無へと返して。
それが私の意志。



私の理屈。






END














もっともっと隊長の言い分を聞いてあげたかったです
そして選んだのは人々。
隊長だけが真実を全て背負っていかなくてはいけないなんて(涙)
人の業と罪によって生かされ消される運命だった彼に
もっと世界の美しいものを見せてあげたかったです
そんなものがちゃんとあるとするならば…ですが…

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