最後の楽園
パトリック・ザラ×クルーゼ



コーディネーターによる、コーディネーターのための純粋な世界の構築…
それが私…パトリック・ザラの望む世界だ。

手酷い裏切りが身内に起きた事を知って、私は我が息子であった者に、ためらいなく銃の引き金を引いた。
元々敵対していたクライン親子は、父親の方は処分が完了したが、娘の方は、しつこく生き残り、ムシケラ同然のしぶとさで、混沌を助長する。

不快でたまらない。

イラつく気分を押さえるために、私はデスクのコンソールから、クルーゼの報告ファイルを再生した。

報告そのものは既に対処済みだ…。聴きたかったのは淡々と事実を述べるクルーゼの声。資料映像の合間に、仮面で顔を隠したままのクルーゼの姿が映る。

地球での戦闘は、クラインの裏切りによって激務であったと思われるのに、彼は常に落ち着いたまま、優美ささえたたえる口調で、味方の甚大な被害と、地球軍の野蛮な行為を、歌うかのように報告し続けている。

彼こそが、私が理想とするコーディネーター。彼こそが理想的な人類なのだ。
…私は彼に出会ったことで、理想の世界の具現化を現実に望み始めた。

私とクルーゼとで極秘の内に進めていたオペレーション・スピット・ブレイクが、内通者によって裏をかかれ、味方が全滅に近い被害を被った時、私の脳裏に浮かんだのは、クルーゼの安否だけだった。

彼を失ってしまったのでは、これから来たるべき理想の国家も、何の意味も成さなくなる。
コーディネートされた遺伝子によって生み出された新人類達は、揃いも揃ってお人よしの愚民どもばかりだ。ナチュラルとは格段に優れた頭脳と身体を持ち合わせながら、コーディネーターは永年ナチュラル共の下僕に成り下がって来た。その屈辱すら、彼らは自覚しようとしない。独立などでは最早生温い。ナチュラルを完全に否定しなければ、コーディネーター達の存在そのものが、その価値を眠らせたままになってしまうのだ。


クルーゼの報告ファイルは簡潔で、複雑で入手の困難なはずだった情報すら、報告する彼からは苦難を察することはできない。


初めて出会った時、彼は若年でありながら既に、その存在感と圧倒的な優美さを持っていた。強烈な印象を持った事を、今でもありありと思い出す事ができる。

コーディネーターの中でも他を圧倒する程の実力を発揮するアーマー乗りの青年。豊かな金色の髪に見惚れるばかりの整った容姿。素顔はその頃から隠していたのだが、プライベートで誘ってみると、彼は思ったよりも簡単に、私だけに素顔を晒した。


その美しさに夢中になるばかりでなく、政治と世界を共に語れば、端的で知略に富んだ会話を楽しむことすらできた。

私は彼に理想の人類の姿を見た。

その彼を、私は惑い無く、手中にする事を望んだ。

深い意味での誘いを、彼は不可思議な微笑みを持って受け入れてくれた。

瑞々しい肌の感触に、シーツに散る錦糸、堪えるように漏れる声音に…彼の全てに私は歓喜した。

政略結婚した妻や、遺伝子を掛け合わせて創った子供…そんなモノとは違う、彼こそが公私共にパートナーとなるべき存在であるのだ。



その頃から、私の望みは、政治的に頂点に昇りつめること…ではなく、コーディネーターによる新世界の樹立…というものに変わっていった。

人類とは須らく愚かしい存在だ。コーディネートされていてすら、その愚かしさは時に我慢の限界を超える。ましてナチュラルにおいては、問題にすらならない。
以前彼にそう語った時、彼がふと、口端に笑をのぼらせながら、私に謎めいた言葉をなげかけたことがある。


−−−−閣下は、もし私が、自分は実はナチュラルなのだと申し上げましたら、やはり私の消滅を望まれるのですか?


妙な睦言だと、その時は思った。
事が終わるとつれない程に手早く身支度を整える彼が、その日は何が気に入ったのか、繊細な織りのバスローブを身に纏わらせて、いくつか重ねた枕にけだるそうによりかかったままでいた。投げ出された白い足がなまめかしく…。

辿ったばかりの彼の素肌の感触を思い出して、私は目眩のような喜びに満たされていた。


彼がもしナチュラルなのだとしたら、神々の数少ない成功作品としての存在を、迎え入れることに迷いは無いだろう。

コーディネーターは、云わば人造宝石のような存在だ。
ただの石ころ達を、何とか見られる存在に作り替えているだけだ。
天然の宝石が希少なように、神々は常に不器用で、ひとかけらの成功例たる宝石を生み出すために、膨大な量の土くれを生み出すのだ。
確率という名の偶然で生み出される宝石達も、土や岩に埋もれ、その輝きで世界を満たすことなど途方もない夢でしかない。

クルーゼのような存在を、人類の手で生み出すことに成功した事こそが、人類の進化なのだと、私は考えている。
彼のような存在で、世界が満たされるなら、世界は救われ、輝きに満ちた人類の未来を得ることができるのだと、信じている。

それこそが私の望む世界。完全なる世界。



この所、私を苛つかせる内部の裏切り行為が立て続いている。

切り札である新型のモビルアーマーはクラインの娘と、馬鹿な血族によって新勢力の物となり、最新型艦船のエターナルまで、目をかけてやった死に損ないに奪われた。
連行途中で裏切り者の血族が、ゲリラの手助けで逃亡したとの報告も受けている。

何故こうも、世界は愚かな存在ばかりで満たされているのだろう。
こんな時は、私の理想をこの手に抱きたくて仕方なくなる。

この時期にクルーゼを戦線からはずす事は出来ないのは、十分承知はしているのだが。

信頼できるのは彼だけだ。彼こそが、私の理想の住人なのだ。
今まで彼は私の信頼に、期待以上に応え続けてくれている。

私を裏切らず、共に新国家を創っていくことができるのは…彼だけなのだ。
混沌から生み出された美。

カオスに満ち満ちた世界を、秩序ある結晶体に導くために。
その世界を、全てお前に捧げよう。…クルーゼ



見国かや

ザラたん可哀想です(≧◇≦)誰か救ってあげてください…
こんなに純粋でクルーゼには純愛な人なのに(笑 ←笑われてるし)
てゆーか、どうもザラたんは、クルーゼが初恋のようです。そんな感じ。
ホントは、Sさんからのメールで、42話のザラたんが、息子は反抗期だし
新型二機取られちゃったし、しかもエターナルまでどっか行っちゃって
隊長には影で笑われちゃったし(「けっさくだな」って色っぽかったvvv)
踏んだり蹴ったりで可哀想〜〜〜〜というメールをいただいて
なるほど!と思い、ザラたんを救ってあげたいな〜と書きはじめたんですけど
全然救えませんでした!(殴)宝石ばっかしの大地じゃ、花も育てらんないのよザラたん。
でもKは完璧主義者は嫌いではありませんvお馬鹿さんな所が可愛いのですvvv
書いてるうちに、やっぱ可哀想と思えてきたので、どなたか救ってあげてください〜


←ガンダムSEED目次へ

←SHURAN目次へ