恐怖

アデス×クルーゼ

小説灯呂さま




小さい頃は、怖いものなどなかった。

お化けも、大人も、動物も、暗闇も、何も怖くはなかった。
だが時が経ち、大人になるに連れ怖いものが増えていった。
自身の命を失う恐怖、自身が傷付く恐怖、それはどれも利己的なものばかり。
相変わらず、誰かを失ったり傷付けたり、そんな恐怖はなかった。
誰かが傷付いてもそれは自分ではない、どこで誰が死のうが知ったことでははい。
あぁ、それは今も変わらないな。変わったことと言えば、自分の命などどうでもいい
と思うようになったことか・・・。

ただ お前と一緒にいれればいいと


「死んだら何処へ行くんだろうな」
「は?」
静かな空間にぽつりと浮かんだ言葉を耳にし、お前は不思議そうな顔で私を見た。
「天国か、地獄か・・・それとも何処へも行かぬのか、死んだ者にしか判らん。だが
死体は喋らない、だから誰も知らない」
「どうされたんです?急に」
「・・・さぁ、どうしたんだろうな」
死に近いところで生きているからかもしれない。
自分のその後、お前のその後はどうなるのかと、最近よく考える。

私が死ねば、お前は後を追って死んでくれるだろう。私も同じことをする。私はそれ
を望むから。
お前が私の将来の幸せのために死んだとしても、私は後を追う。
だってお前のいない世界での幸せなんて意味のないものだから。
それと同じに、私が先に死んだとしても、お前に生き残って欲しくはない。
だって私のいない世界での幸せなんて私が許さないから。

だが二人同時に死んだとて、その後の逝く先が違っていれば意味がない。
お前は天国に、私は地獄に・・・。
私は天国へ行けないだろう、お前は地獄へ来ないだろう。
お前も私も独りぼっち。
私は地獄で苦しみ続け、お前は天国で永遠に意味のない快楽を味わう。
あぁ、何て残酷なんだろう。

いっそ何処へも行けぬなら


「お前に怖いものはあるか?アデス」
「怖いもの、ですか?・・・改まって言われると判らないものですね」
「・・・そうか」
「隊長にはありますか?・・・なさそうですが・・・」
「そうだな、ないかもしれないな・・・」
お前を失うことが怖い。でもすぐに後を追うから。
だからそれは本当に怖いことなのか、判らない。
「あるかもしれないんですか?」
「しれないな。まだ、怖いと思うものに出会ったことがない。戦場にいても、人を殺
すことを恐ろしいとは思わなかったよ、初めから」
死ぬのは自分ではないから。
人を殺すことを罪だとは思わなかった。だってこれは戦争なのだから、何人殺しても
罪には問われない。
むしろ殺せば殺すほど英雄となってゆく。
あぁ、何て愚かなんだろう。

いっそこのまま死ねたなら


「なぁ、私達は同じ処へ辿りつけるのかな・・・」
死してなお途切れぬ想い。私達にそれはあるだろうか。
「貴方は、どこへ行きたいですか?」
「・・・同じ場所ならどこでもいい。ゴミ溜めでも構いやしないさ」
「貴方らしいですね」

二人一緒なら何処でも・・・しかし私達はきっと同じ処へは行けやしない。
「行きますよ」
「何?」
「もし別れてしまったとしても、貴方を捜して追って・・・どこまでもついて行きま
す。だから怖がらないで下さい、絶対の別れなどないんです」
あぁ何だ、お前は知っていたんだ。
私の恐怖も、何もかも全て。

お前は天国へ、私は地獄へ。
でもお前はきっと天国で罪を犯してでも地獄へ堕ちてきてくれる。
最も残酷な地で最も甘い夢を見るために。
あぁ、何て幸せなんだろう。

いっそ二人でどこまでも堕ちてゆけたなら


























ラブラブなアデクルありがとうございます(〃∇〃) ///
死がつきまとう戦場にいる二人の愛だけに、余計熱くて甘かったですv
夏なので、TVでは心霊特集とかやってたりしますが
何か、そういうのを見てしまうと、信じてみたくなったり…(感化されやすい(-▽-u)
何もできないのに、魂だけこの世界に残るのって、辛そうだ…
アデスが隊長を捜しあてる事ができますようにv寄り添ってられれば、それだけで幸せそうです

←ガンダムSEED目次へ

←SHURAN目次へ