『終焉に捧げる星』シリーズ

 アデス、ザラ×クルーゼ
小説 紫水様


『グリマルディ戦線にて』








C.E.70.6.2.

地球連合の重要な資源供給基地であった、エンデュミオン・クレーターでの攻防戦。

この戦いに連合は第3艦隊を投入した。月面では、鉱床・施設破壊を兼ねてレアメタルの混ざった氷を融解する為の施設「サイクロプス」を暴走させ、ザフト軍を撃破する。

この月面戦線を「グリマルディ戦線」という。

第3艦隊にはこの時、ムウ・ラ・フラガが所属していた。

彼は、少年時の出来事から、フラガ家の事業を継ぐことを拒否して、士官学校に入学、卒業、地球連合に所属していた。現在は操縦が難しいといわれ、操縦センスがある、熟練パイロットが乗る、MA「メビウス・ゼロ」のパイロットを務めていた。

特に、フラガ家は、代々勘が良いといわれる家系で、フラガ家が投資する事業も、その勘の良さで成功してきたといわれていた。
ムウの抜群の勘の良さは、戦闘時に特に発揮された。戦闘空域での空間の認識に優れ、MA「メビウス・ゼロ」の難しい有線ガンバレルを操れるパイロットとして活躍していた。






この日、ムウは何か異常に胸騒ぎがして、苛付いていた。今までの戦闘でも一瞬掠めてきたことのある気配なのだが、この日はとても強く、殺意のような意志の強さを感じていた。その気配の元を知りたくひたすら敵を追い求めていた。

通常ジン1機を倒すにはMA5機が必要といわれるほどの戦力差があった。しかし、この日ムウはMAメビウス・ゼロ1機で、ジン5機を撃破した。


それでも、胸の奥に湧き上がる異様な気配はなくなることは無く、敵を追い求めた。最後に取り逃がした、新型のMSパイロットとの交戦に一番気配を感じた。殺意だけではない、一種異様な感じなのである。
この気配の意味を知りたかった。

MSは通常のジンではなく、新型のシグーだ、一般のパイロットではないことは分かった、
全体に白のカラーリングがほどこされていた。指揮官クラスであろうとは理解した。

ジン5機を撃破した喜びよりも、そのパイロットの事が記憶に残った。




しかし、ゆっくりと考えるまもなく、月面基地を失った穴埋めに、地球連合軍側は責任追及をから逃れるためにムウ・ラ・フラガは、一躍ヒーローとして祭り上げられ、第7艦隊へ転属となった。

しかし、連合にとっては、MAメビウス・ゼロの特殊なガンバレルを操れるパイロットが、ムウ以外いなくなり、急遽ノーマルタイプのMAメビウスが大量生産されることになった。
連合は大敗を帰し、それを糊塗するために、彼を「エンデュミオンの鷹」と英雄化した。






一方、ザフトでも同じこと・・・
第3艦隊を、クルーゼ所属の艦隊が、撃破。それは、月面での敗退を覆い隠すことに使われた。
この戦いでは、ローラシア級戦艦の新任艦長としての、艦の責任者としてのラウ・ル・クルーゼが求められていた筈だった。
が、クルーゼ艦長の取った行動は・・・?!










C.E、70.6.2.

この日、ラウ・ル・クルーゼは、ザフト軍、ローラシア級戦艦カルバーニの艦長として、戦場にあった。
地球連合軍第3艦隊と接触・・・

今はまだ連合軍側もザフト軍側も共に双方のレーダー網に艦影を見つけてはいなかった。

今回の作戦の指揮官を乗せるナスカ級旗艦の艦長の名はアデス。
彼は、新米艦長クルーゼの動向を密かに危惧していた。よって、すぐにカルバーニの行動を察する事が出来た。

「!!」
「カルバーニ!それ以上前へ出るな!!」
「通信士!カルバーニへ打電だ!」
「カルバーニ艦長!貴艦の行動はまだ指示されてはいない、勝手に動くな!艦隊から離脱してはならない!」

作戦行動中は、敵に通信を傍受されるのを防ぐために直接の会話や映像は使わない。
のが鉄則、それを・・・

「艦長! 通信はいります! カルバーニから直接音声です。」
「なに?」
「隊長!! MS隊発進させて下さい!全艦制動を掛けて下さい!第3艦隊、MS隊、メビウス・ゼロ来ます!」
「索敵!!」
「まだ当方確認できません!」
「カルバーニ、MS隊発進させます」
「カルバーニ艦長!!まだ発進命令は出ていない!」
「カルバーニよりMSの発進をを確認」
「隊長!本艦、敵機機影発見!10時の方角。連合軍MA数約200と推測、続いて、第3艦隊の駆逐艦、護衛
艦と思われる艦影他・・・・待ってください・・・空母を含む本隊はいりました!!!」

我が旗艦の索敵に捕捉された敵影。アデスは先程のクルーゼの声を聞いてから、身体が熱くなって行くのが分かった。
この隊長は?アデスは隊長を見る。
ようやく、彼は全艦のMSの発進命令を出した。

一連の流れに、隊長を乗せる旗艦の艦長として、アデスは頭を抱えた。

そうなのだ、見つけてもいない敵にむやみにMSを発進させるわけには行かない。
私としてもクルーゼ艦長の指示は出せないだろう・・・
しかし・・・この隊長としても、今成りたてという訳ではない、隊長として不足は無い人物ではあるが・・・







地球連合軍のMAとザフトのMSとの交戦が始まった。
圧倒的なMA数には関係なく、MSが優位のはずが、均衡が崩れる箇所が出て来た。
原因は1機のメビウス・ゼロの働きだった。

その様子をメインモニターで見ていたカルバーニ艦長は呟いた。

「ふん、奴もやはり出てきたか・・・このままやらせるわけにはいかんな。」
「クルーゼ艦長?」
「私のシグーを用意しろ!私も出る!副長!私が出たら制動をかけろ、そのまま旗艦まで下がり、本隊と合流。隊長の指示に従え」!」
「はっ!!」

一方アデスの旗艦では、

「隊長、カルバーニ制動をかけません」
「あっ!カルバーニから、もう1機MS発進を確認!新型の・・・MSの・・・待ってください、シグーです!そして、艦制動を掛けました。」
「そのシグーを追って、記録を頼む!映像を、モニターに出せれば出してくれ!」

アデスは、先程からの前面のメインモニターに映し出されていた戦闘映像を分割、シグーを写させた。
単独で、ある特定のMSだけ追尾、撮影することなどは初めてだった。

シグーは、あるMAを執拗に追い込んでいた。
他のMAを屠って行く切れ味の良さをも見せ付けながらも、あるMAへの攻撃の手は緩めなかった。確かにその機体を操るパイロットの腕は良かった。ナチュラルでは有るもののコーディネーターの我われの腕と比べても遜色が無かった。
他のゼロが健闘むなしく徐々に数を減らして行く中、攻撃を避けながら此方のMSジンを落として行く。
そのMAよりも苛烈に攻撃の手を休めないシグーによって、双方とも一気にこの戦いは激化、収束を早めた。

破損したMS収容の指示を出しながらも、アデスの頭は冷静にシグーの行動を追っていた。
そして、ある会話を思い出していた。

「私には、どうしても倒さなければならないパイロットがいるのですよ。多分彼が出撃してくれば、たとえ、艦長席に座っていても出撃しますよ。」

先日出会った時に聴いた彼の言葉だった。
この宙域の広さで、たった一人の敵のパイロットが見つけられるのですかと、聞いてみた。
彼はあの時なんと言った?
ゆっくりと獲物を前にした時に舌なめずりをするかのように、唇の端を引き上げて・・・

「私と、彼とは互いにわかるのだ。殺し合う間柄なのだよ、宿縁とでも言うのかな? アデス艦長。」

彼の暗い愉悦にも似た喜びの声に、私は言葉を無くし黙ってしまったのだ。
また、存在を知ってもらえる敵に嫉妬の感情が生まれた。普通、敵陣のMAに誰がパイロットとして搭乗しているか等わからない。
彼に追い求められる敵へ向く感情・・・彼に追い求められる事を羨ましいと思い、馬鹿な事を考えた自分を嘲笑ったのだ。

今、彼の言葉通りの様子が映し出されている。

この旗艦の艦橋にいる誰が、シグーのパイロットが誰か、
そして、何を執拗に追っているのか分かっているだろうか?


この作戦の直前に、彼に、ローラシア級カルバーニの艦長でありながら指揮官機のカラーリングを施したシグーが渡された。
彼にだけ、渡された。

作戦の指示を受けに本部へ向かった折にはその話は議題に上らなかった、極秘とい事だろう。ただ、私はクルーゼ艦長とカルバーニへ搬入されるところを見ていた。
ジンの後継機で、ずいぶんとテストを行ったと彼は言っていた。

それは何を意味するのか?
それが、ネビュラ勲章の重みなのか?


敵MAがほぼ全滅の様相を呈し始めたとき、隊長は第3艦隊本体への攻撃に向かうことを各艦に指示した。
MAがほとんど落とされ丸裸になった艦隊など大きな的でしかなかった。


「各艦機関最大!全速前進せよ、主砲発射準備、MS射線上より撤退を打電・・・」

シグーの追っていたMAは護衛艦に向かって反転離脱。
シグーは追撃、此方の無傷のMSを率いて駆逐艦、護衛艦を次々餌食にしていった。執拗に追い込んで行く。

護衛艦隊の次は中型の巡洋艦クラスなど、ミサイルより、砲撃に威力を持つ戦艦クラスに攻撃の矛先を向ける。
機動性の高いMSに取り付かれては、大砲など何の役にも立たないことを改めて連合軍は知るが、もう遅い・・・
そして、シグーや、MSが第3艦隊の旗艦である航空母艦へと肉薄して行った。しかし、主砲発射の電文が入る
射線上から退避と。

主砲同士の激戦になった。ここでは射程の長いナスカ級の利点が発揮された。


確かにシグーの参戦によって、MSの損失は少なく人命も助かったとも言えるが・・・
彼は、カルバーニの艦長であった。アデスはこの作戦に参加する前に、艦長であることを忘れないでください、と確かに伝えたのだ。
私が今回お乗せしている隊長は、この作戦実行に際して、彼の命令違反をどう判断するかな?

だが、彼の行動はアデスの杞憂とは全く違う評価を与えられた。
アデスは自分の杞憂は、この対地球連合の、ナチュラルとコーディネーターとの戦いの中ではあまりにも些細なことだと気が付いた。彼はもっと大きな政治の流れの中にいたのだ。




ローラシア級カルバーニ艦長ラウ・ル・クルーゼは一夜にして、ザフト軍の更なる英雄に祭り上げられた。

翌日のニュースはプラント中だけではなく地球へも、新しい隊長誕生の映像を流した。

月面のプトレマイオス基地が連合側によって、「サイクロプス」暴走という自爆によって、侵攻していたザフト軍の受けた被害は甚大だった。この被害の重大性をニュースですっぱ抜かれるのを恐れた国防委員会は人々に好まれる餌を配置した。

ニュース画面には、3ヵ月半前にネビュラ勲章を授与された若き英雄、ラウ・ル・クルーゼの白い隊長服の美しい映像が流されていたのだ。白銀の仮面に波打つ金の髪が掛かり、肩を覆う様子は白を基調とした制服に映え、人々の手を、足を耳目を釘付けにした。

美しき英雄の働きが映像として流された。従軍記者の映像ではなく、アデスが撮らせていた戦闘映像だった。
その華々しい撃墜の様子にプラントの人々はコーディネーターの誇りを更に燃え立たせた。

それは、アデスにもプラントの人々と同じ感想と何か焙られるようなチリチリとした焦燥感をもたらした。










   『創られた白き軍神』








〜C.E.70.6.2、グリマルディ戦線のしばらく前に戻る。〜



「今度の作戦の後で、お前にはこれを与える。シャワーをして着てみるがいい。」

先程脱いだ制服類を、いつものようにクリーニングする為に受け取りに来た執事が、代わりに大きな箱を置いていったのを思い出した。

今度は何を企んでいるのか、と苦々しく思う。

いつもより機嫌が良かったのはこれの所為か?もう好きにしてくれ・・・


月面 ローレンツ・クレーターに基地を設立。ザフトは、グリマルディ・クレーターを境に月を2分し小競り合いを繰り返してきたが、半月経っても決着を付けられなかった。
一方、地上部隊はカーペンタリア基地を完成、地中海への侵攻開始を決議した。

『月面作戦も早期決着を目指し、国防委員会議の案件に挙げ、決定が下された。』

と、パトロンでもある、パトリック・ザラは、国防委員会の報告を餌に、屋敷へクルーゼを呼び出したのだ。
いつもの通いなれたゲストルーム・・・・

勿論報告だけが目的ではない・・・パトリックの手に落ちたのは、もう何年前のことだろう?

艦長職を拝命して、戦艦に乗り込み通常の業務を他の艦と共にこなし始めると、流石に国防委員長閣下といえどもすぐに来いとは言えなくなっていた。

パトリック・ザラ委員長は、クルーゼに何かと理由をつけて本国へ、軍本部へ出頭するように連絡をするが、自分の命令が通らないことの方が多く結構苛付いているようだった。

カルバーニがドッグに入港した、と知らせが入るとすぐに国防委員長名で彼を呼び出した。
そして、軍本部から、直接自分の議員宿舎ではなく屋敷のゲストルームへ連れて帰った。
今夜もそのパターンだった。

その屋敷は、シーゲル・クラインの主導で改造された、農業プラントユニウス市へ単身赴任中の農学者のザラの奥方レノアが丹精込め作り上げたバラ園が素晴しく、現在は留守がちの奥方の代わりに執事が面倒を見ていた。

そのバラ園の中に作られたゲストルームの一つは、もうずいぶんと前からクルーゼの隠れ家のようになっていた。

今夜のクルーゼは、夜も早くからパトリック・ザラの腕の中にいた。

時間を忘れて、声を上げ熱を吐き出した。クルーゼは、今夜は、自分でも驚くほど求められれば易々と応じるほど、身体は自分の意思に反して人肌を求めていた事を知った。
深く沈みこんでいる気分を無理やり引き上げられることの恐怖や、嫌悪感が、以前より薄らいできているのは確かなようだった。


パトリックによって、与えられ続けれた屈辱と、心と身体に刻み込まれて来た苦痛と快楽は、まだ生きている事をクルーゼに強烈に教えてくれる。まだ生きている、まだ生きて行けると・・・

軍隊生活は思いのほか彼を蝕み、精神的な疲労も積み重なりつつあった。

かつて、まだ黄道同盟と呼ばれていた政治結社に参加し、ザフトと名称を変えると共に軍事化していく中で、訓練や、MSの開発に参加し始めるのを彼の後見人のドクターは賛成せず、身体を心配してくれた。

ドクターは定期的な検査と、薬を処方してくれていた。先日も検査結果の連絡と共にカプセルの中の薬を変えたこと、状況によって飲む量を増やす必要が出て来るだろうと伝えられていた。

逃れられない運命と、もうパトリック・ザラに己の身体を委ねる決心をする前から知っていた。自分の運命から逃げないと、この運命を与えた者達に・・・・必ず、命尽きる前に償いを・・・決心したのだから・・・



クルーゼは生き急ぐように、何かをいつも追い求めていた。誰も知らない何かを・・・学生の頃、遊びに誘われても、軍港のドッグに停泊中、しばしの息抜きにと誘われても付き合うことは少なく、艦長になっても艦の整備や補給の合間の休息時間をも何かに費やしていた。コンピューター画面や書物に向かっている彼の姿ははまるで学生のようだった。


何を探しているのか?何を学ぼうとしているのか?何を手に入れようとしているのか?


そんな彼でも、ただ、何もかも投げ出したくなるほど疲れ果てるときがあった。
差し出されたのが、パトリックの手でもしがみ付きたくなるほどに・・・


その彼が、執拗に求められ、彼のモノは歓喜の涙を流す。
何年にも渡って、パトリックに仕込まれた身体は、彼の手が施す情けよりも早く熱を待ち望み、震え、熱い吐息を漏らすほどだった。

早く、早く、この戦いを・・・私にはもう先が無いのだから・・・そのためにこの身体を供してきたのだから・・・

そう考えるだけで、彼の身体は熱く震え、快感を求め硬く立ち上がるモノはパトリックを悦ばせた。

初めのうちは優しくされても、嫌悪感以外何も無かった。這い回る指と舌が気持ち悪く、身を硬くして、終るのを待つばかりだった。無理やりの行為は、パトリックの望む通りに感じるまで、時間が掛かった。今でも吐き気を耐えるときがある。

しかし、取引だと割り切ってみても、先の見えない恐怖に、時間が何時まで自分にあるか分からない命に眠れない夜も多いと、このまま一人夜が明けなくなるのではないかと恐れる時、僅かでも恐怖を消してくれる、考えなくさせてくれる存在を求める時がある。

身勝手な己、パトリックをただの手駒としか見ていない己・・・欲望のまま私を手に入れた、唾棄すべきは奴であり、そして、この己だ・・・

自らを呪いながらも、心は時間の恐怖を忘れさせて欲しかった、苦痛でも快感でも良かった、速くイカせてくれ!!束の間でも好いから気を失わせてくれ!

夢中でパトリックのモノを受け入れ苦痛の呻きを漏らしながらも手足を絡めた・・・金の髪を振り乱し、仰け反り、掠れるまで悲鳴を上げ、パトリックのモノを何度も何度も受け止めた。

「欲しかったのは私だけではなかったのだな?珍しいこともあるものだ。うん?とてもヨかったよ、クルーゼ。」
「パトリック!?まだ足りない、眠れない・・・お願い狂わせて、もっとおかしくなるまで、考えられなくなるまで・・・もっと貴方が欲しい・・・」

「金の星が落ちたか?聞いたことの無いセリフだな?クルーゼ・・・誰かに教わったか?私の目の届かない戦艦の中か?クルーゼ?部下の手を取ったのか?」

両腕を立て、上から見下ろしているパトリックは、初めて聞くクルーゼの言葉に、哀願とも取れる言葉の裏に、自分以外に抱いた人物の影を探した。背けているクルーゼの顔を無理やり自分に向けて再度問う。そしてゆっくりと唇を合わせた。この唇を味わうのは己のみという態度で、満足するまで貪った。

パトリックは、クルーゼのモノを長い指で扱きながら言葉で嬲る。
顔を腕で隠してはいたが、息遣いがクルーゼが快感を追っていることを表していた。今夜何度もイカされ、彼自身が吐き出し濡れたモノ・・・
それを口に含み、愛しく舐め取り舐め上げ、ゆっくりと舌で遊びだした。
根元をしっかりと掴み押さえ、先端から根元まで、舌と口で扱き出した。後ろの袋も指で揉み、口に含み甘噛みをしてやった。
クルーゼの身体の火照りは鎮まらず、更に小刻みに震え顔を隠していた腕を下ろし、パトリックの頭を両手で掴み背を弓なりにし仰け反った。いつにもまして高い声でパトリックの名前を呼んだ。

「パトリック!貴方だけ、ウウ、ううん・・・あ・ああ・・・あ・貴方だけ・・・もっと・・もっと・・・狂
わせて・・パトリック・・ああ・・・くっ!!!」

パトリックの監視の目が、パトロンを申し出た、あのクルーゼ15歳の時からずっと光っていた。彼以外の者が手を出すのを影で排除して来た。
また、誰も仮面を付け、素顔を見せない得体の知れない男に婚約や、結婚の話を勧める事も無かった。

それでもパトリックはクルーゼを見る者達の眼に賞賛と尊敬の眼差しの中に情欲の炎を見る。
・・・・クルーゼは誰にも渡さない・・・

口で追い上げ舌で絡め熱を吐かせ、更に指で最後の一滴まで扱き吐き出させた。いつもは色薄い彼のものが痛々しい程に赤く張り詰める。これ以上指では可哀想だと口に含んでやったのだ。

だがクルーゼは、パトリックの頭を掴んでいる腕を動かす。、まだ足りないとばかりに抜き差しさせた。そして、短い悲鳴と共に何度目かの熱い僅かなモノを口の中に放った。

パトリックはその少しのモノを、クルーゼの口に含ませ、聞いた。

「満足したか?珍しいこともあるものだ、もう少しかまってやりたい所だが、これ以上は駄目だ。
今夜は気を失っては困るのだよ。イイ物をやるからシャワーを使っておいで。」



バスローブを床に落とし、髪はタオルで包んだまま箱の中身を手に取った。
上下の下着、靴下、スラックス、ブーツを、そして、今まで目にしたことの無い色の制服の上着を手に取り腕を通した。

「やはり良く映えるな。その色にして正解だ、神々しくすら見える。なあ?」

と、呼びつけていた執事に意見を求めた。
「そうでございますね、大変ご立派でございますよ。では、すぐ用意をさせますから、髪を乾かして置いて下さい。」
「???」
「写真を撮りますから、その制服姿のを、ご準備ができましたら、庭にお越しください。まだ明るくなっていませんが、お時間も無いとのことですから・・・」

「パトリック?」
「言っただろう?グリマルディ戦線への作戦実行の許可が出た。次の月面での戦いで戦果を挙げて、お前はこの制服を与えられ、特別任務に就く。」

「ザフトの白き軍神の誕生だ。」

「クルーゼ隊の誕生だ、お前にふさわしいエリ−トの隊員を選抜してやろう、そして一番の船乗り達をな・・・
ナスカ級の新造艦が進水式を終えたらそれを旗艦とするがいい。」
「貴方のシナリオ通り出来ると?」
「ああ、何としてもな。」
「パトリック、貴方の為に・・・戦果を・・・」
「クルーゼ、お前が必要だ・・・お前だけだ、私の成す事に賛成してくれるのは・・・」
「ふっ・・うんん・・・」

乾ききっていない髪に指を差し入れ、引き寄せ今夜だけでも数え切れないキスを与える。真新しい制服の腰を抱き寄せ濃厚なキスは二人に時間を忘れさせた。

「ご主人様、もう宜しいですか?お時間が・・・」
「!!!  コホン!」
「無粋な奴だな・・・」
「折角の制服が皺になりますよ、スタッフの皆様がお待ちでございます。やはり場所を提供された当主としてご挨拶をお願い致します。
さあ、クルーゼ様?髪、もう少し乾かしましょう・・・」

と、言われパトリックは、口答えもそれ以上出来ず、名残惜しそうにクルーゼの腰を離し、ソファから立ち上がった。執事が急いでドライヤーを持って来て髪を乾かし始めた。

しばらくして、クルーゼが仮面を付け部屋から庭へ出る。


暗闇のなか白々とバラが浮かび上がり、カメラのライトが彼を照らした。

「ほおっ・・・」と、誰かの溜め息が聞こえる。

情事の後のなまめかしさが仮面を付けても滲み出て来る。白い肌に、貪られつくした後の赤い赤い唇とけだるい
腰つきは、いつもの優雅な物腰に加えて、更に見る者の官能に、情欲に訴えかけた。

カメラマンに求められるままに取るポーズはザフトに大きく貢献してくれるだろう。プラントのコーディネーター達、国民の目を奪うだろう・・・

夜明け前の暗闇のなか、真新しい制服は良く映えた。
デザインは同じなのだが、配色が通常の艦長色とは異なっていた。ザフトの基本色のダークグリーンの部分が白で、ブーツは黒。全体に見た目は純白のイメージが強く感じられた。

地球上で、古い特定の信仰に残っている神の御使いのイメージに似ている・・・
まるで、翼を持たない天使と・・・

この白い、今までザフトにはなかった色の制服は、特別に、彼のために作られたものだった。

国防委員会はこのナチュラルとの長い戦いの早期決着のためにも、国民の意思を一致団結させる『何か』を欲していたのだ。ザラ委員長の提案に満場一致で賛成した。ネビュラ勲章の英雄ならば、と。

国防委員会直属の広報局の従軍カメラマンを使い、事前に映像類を用意しておくことにしたのだ。

一番効果的に使える時のために・・・







そのような軍部のトップの思惑などアデスにはわからず、自分が撮らせたシグーと、メビウス・ゼロとの戦闘映像に被る形で流されている、白い制服を隙なく身に着けたラウ・ル・クルーゼの軍神の如き勇姿に見蕩れていたのだった。

あの映像は、隊長が、国防委員会の戦闘記録として求めに応じて提出したものだった。
確かにあの戦闘は特異なケースとして研究資料に使われる物だと思っていた。

プラント以外に、地球にも宣伝効果を上げるために、又地球への降下部隊の士気高揚のために。
Nジャマ−効果の為に電波状態が悪いのを克服して、なんとしても白き軍神を降臨させたいのだろう・・・

シグーはクルーゼ本人だ。相手は追い求めている宿敵なのだろう、撃墜してはいなかった、又会いまみえる事もあるだろう・・・

メビウス・ゼロのパイロットも今まで誰と戦っていたのか思い知っただろう・・・いや、もしかすると、旧知の間柄なのではないか・・・間違いないだろう・・・



アデスは、もう一度、彼と会いたいと望んでいた。

新しい白の制服を着た、彼に・・・
あの約束を果たしてもらう為にも・・・いや、それは、ただの口実だ。

ただ、何故かもう一度私の部屋に休みに来て欲しいと思った。

しかし、特殊任務につくエリ−ト隊を指揮すると聞いた。もう、隊長に成られては、親しく出会うことも、酒を酌み交わすことも出来なくなった。

あの夜、「急いで隊長に成らなければ・・・」と言って、笑った声が忘れられない・・・

私の新造艦にクルーゼ隊を乗せられたら、お祝いに、あの歓迎会の夜に買い込んだジンのボトルを開けましょう、と約束しましたね。酒が貴方に封を開けてくれるのを待っていますよ。

ラウ・ル・クルーゼ、彼にもう一度会いたい・・・



















毎回素晴らしい作品をありがとうございます///
クルーゼが白い軍服に身を包む…そこに隠された痛々しいまでの望みが…。
そして彼に見愡れるアデスは、その運命に既に巻き込まれて始めているのでした…。
クルーゼとフラガの対決も、全くと言っていいほどオリジナルでは語られませんでしたが
こんなドラマがあったのだ…と、思いが深くなります///
次回はアデクルですv皆様お楽しみにv




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