「ある夜の約束」
アデス×クルーゼ編
小説 紫水様
プラント本国のディセンベル市のザフト軍上級士官用官舎の一室。
今はベッドサイドのナイトテーブルからの柔らかな温かい光のみ。
ひそめられた声、穏やかな深みのある落ち着いた声が、今は少し焦りを含んでいるように思われる声の男と、いつもは、低く澄んだ声を滑らかに周囲に響かせている声が、今は切れ切れに、息遣いを聞く方が居た堪れないほどの、誰もが聞いた事が無いだろう、悩ましげな吐息や蕩ける様な声を響かせているその声の持ち主、との…
秘め事の最中だった。
「隊長っ!!!」
「くううっ!! うっ・・・はあぁ・・・アデス・・アデス・・・?」
「はあっ!はあっ・・はあ・・・はあ・・・
堪らない・・隊長がMS出撃される度に・・・私は・・・
こうしてこの腕の中の貴方をもう、離さない・・・離したくない・・・」
「ああ、今夜は付き合うから、アデス・・・泣くな」
「な、泣いておりません!!!
隊長!ありがとうございます。」
嬉しそうに、再度抱きつき、喉に噛み付いた。
仰け反った上半身に腕を回し、少し身体を浮かせ、熱い棒を軸に、肩に抱えていた足を下ろさせ、全身を反転させた。
「くっ!アデス・・・」
抗議の声が上がる前に、隊長の愛しい分身を手のひらで包み込んだ。
びくん!!!と身体全体が震え、金の髪が舞い上がった!!
「あああっ!!!」
急いで、手で口元を抑えた隊長の手を、片手で外し、そのまま抱き込んだ。
「聞かせてください、そのお声を・・・」
隊長の熱く変化して存在を誇示するものを、愛しく全体を撫で上げ、撫で下ろす。
袋までも揉み、強弱つけて扱き上げてやると、更に硬く震え上がった。
膝を立て、布地に触れそうな所でアデスの手で扱き立てられ、透明な蜜を湛え始めたのを、指先で感じるとアデスは、頭を下に潜り込ませ、手の平で啼かせていた物を、口の中にすっぽりと咥え込んだ。
「っああっ!! あああっ!!!っ」
金の髪が再度舞い散る。
そして、僅かな光にも輝く美しい髪はその後、何度も左右に舞い散り、シーツの中に沈みこんだ。
「しっかり、大丈夫ですか?」
「あ、ああ・・・」
「ご馳走様でした。 では、覚悟してくださいね。」
一度抜いたものを、先の名残のぬめりが残る、隊長の愛しい中に潜り込ませた。
「くっ! うううっ!!」
「…歯を食い縛らないで…声を出して…名前呼んで…」
「くっ!…くう…くはっ!…あっ・・はあ…」
「あ・・ああ・アデス!?…アデス!!」
「そう…隊長に名前を呼ばれると…ぞくぞくするのです…いつも熱くなってしまうのですよ
勤務中でもね・・・貴方は罪作りですよ・・・」
「あ・・・く・・あっ・・・アデス・・・アデス・・」
「ほら…貴方が呼んでくれるので…ウン・・もっと元気になりましたよ…」
アデスはクルーゼの汗で濡れた細い腰を抱え直し、更に動きを速めた。
クルーゼはシーツを掴み、顔を伏せているが、腰を打ち付けられる度に、くぐもった声と、吐息を聞かせていた。
「うっ!くっ…うっ…うっ…」
「声出して…隊長?…私を呼んで下さい…」
「うんっ!…うっ・・はあっ・あっ・あ・アデス・・アデス・・・アデス…」
「隊長!!ああ…堪りません!!」
乱れた息遣いと肌を打ち付ける濡れた音、お互いを呼び合う上擦った声…が部屋に満ちている
「ア・アデス…お前は、うっ…アデス、お前は私の名を呼ばない・・・」
「!!!」
一瞬腰の動きが止まる。
「あ…た、隊長…、そ、それは、上司を呼び捨てには…出来ません」
うろたえる声と表情をアデスの身体の下から見上げ、すうっと唇の片方の端を吊り上げた。
「ふっ…
アデス…かまわんよ?
お前は私より年上と思えば・・そして、お前を欲しがっているただの男と・・・何の支障も
無いだろう?
私が・・・望んでいるんだ…ア・デ・ス・うん?」
「せ、僭越ながら…では…」
「ク・クルーゼ?
クルーゼ、私はあなたと共に生きて行きたい…、私の元に…いて欲しい。」
「!!!」
ビクリ!と背中が大きく震えた。
「?!」
「それは駄目だ!」
即答だった。
「? それでは、ラ ウ では?」
「そうだな…」
「ラウ、ラウ? ふふっ可愛いですね。」
と、顔を覗き込むアデスの目に、そう呼ばれるのが恥ずかしいのだろう、珍しく朱に染まった隊長の顔があった。
見た途端にドクン!と身体の中心が更に疼いた。喉が渇いた感覚に襲われ、声がかすれた。
「さ、再開しますよ! ラウ」
と、今までクルーゼの背後を襲っていたのを、自らの熱棒を少し抜き彼を反転させ、自分の正面に向けた。
膝の間に身体を入れ、両足を抱え、再度貫いた。
「くぅっ!!!」
「ラウッ!!」
クルーゼはアデスの硬い熱棒で、更に抉り上げられ、歯を食い縛る暇も無く腰の動きのまま、翻弄されるままに声を上げる。
そこには、クルーゼの身体を気遣ういつものアデスはいなかった。
「アデス…アデス…アデス…」
うわ言の様にクルーゼはアデスの名を呼ぶ。
全身で、アデスにしがみ付き、加えられている衝撃と苦痛に耐えていた…
その有様は更に胸を焦がし、愛しい人の熱い身体を突き上げ揺さぶる事になった。
クルーゼの声と身体を堪能して、アデスは何度目かの熱いものを解き放った。
そのとき、クルーゼの耐える苦鳴と自分の歓喜の声を口付けで黙らせた。
そのまま深くお互いを貪りゆっくりと唇を離した。
それでも金の髪を抱えた腕をはずそうとせず、全身で覆うかのようにクルーゼの中に入ったまま抱きしめていた。
少しづつ二人の狂喜は鎮まり、呼吸も落ち着いてきた。
「う・うん…重い…」
「あっ!申し訳ありません!」
と、アデスは慌てて汗で濡れている身体を起こした。
「くうっ!!」
その動きで、まだ少し硬さが残っていたアデスの棒で突き上げられクルーゼは息を飲んだ。
「早くシャワーに行って来い!」
「はっ!あ、しかしそれは…お先に…」
「お前のお陰でしばらくは動けん。早くそれを抜け!!」
「はあっ? はっ!!」
今度は、代わりに首筋まで赤くして身体を離しかけた。
が、ふと動きを止め、名残惜しくもう一度とばかりに突き上げた。
「うっ!!」
「ア〜デ〜ス〜」
と仰け反ったクルーゼの唇からは、アデスの名を呼ぶ。今迄よりも殊更ゆっくりと、まるで地の底からのように、冷酷な声が響いた。
これ以上怒らせては不味いとばかりに、再度彼の唇をふさぎながら頭を抱きゆっくりと、留まりたがっている熱棒を漸く抜き出した。
クルーゼの中も意識しているのか無意識かアデスを締め付け、離そうとしないところが、なんとも嬉しいアデスである。
いつもながら口惜しい一瞬ではある。
ほおっと息を吐き、身体から力を抜くクルーゼにシーツを掛け、グラスに水を用意した。
目を閉じている彼の枕元のナイトテーブルにグラスを置きシャワーに向かった。
目を閉じていたクルーゼは、水音が聞こえてからゆっくりと身体を起こした。が、眉をひそめ身を竦めてまた横になった。
腕を伸ばして、引き出しからいつもの青いカプセルと粉薬を取り出し水で飲み下した。
情事の名残を残した色香を漂わせている唇をゆっくりと片方吊り上げた。
『お前に名前を呼ばれるのは堪らないな、クルーゼ、好い声だ。』
『私の元にいろ。望みを叶えてやる…私の元に…』
あれほどパトリックに言われても、尽くされても、利用させてもらっても…
アデスにたった一言名前を呼ばれるだけでこの身が熱くなるとはな・・・面白いものだ・・・
人の心とは計り知れぬもの…
「!!!」
人の心?こころ??
この私に?
人ではないものの私が?
あの薬が無くては生きては行けぬ、この化け物の私が?
「くくく・・・・・」
「隊長?どうぞ!」
「眠っておられましたか?」
気分が最悪な方向に落ち込んで行くのを防ぐかのようにタイミング良く声を掛けてくれた。
バスルームのドアが開いたのも気づかなかった。
「お連れしましょうか?」
「いや、いらん!! 2回戦に持ち込まれては堪らんからな!!」
「酒でも作っておいてくれ。」
即効性の痛み止めのお陰で自分の身体の始末がどうやら出来そうだった。
身体には良くない薬で、常用してはいけないとは言われていたが、アデスが手伝うと翌日足腰が立たなくなるまで求められ、自分も断りきれないのが辛いからだ。
シーツを身体に巻き付けゆっくりと歩いて行く。
アデスが残す赤い印が時折愛しく思うが、今夜も数回身体の中に残された物は歩くと存在を主張する。
どのように言葉で、指で、唇で愛されても、この情事の結果はクルーゼにとってはいつまでも屈辱でしかなかった。男である以上仕方がないと思っている。ここまで自分を晒していても、これを始末して貰うのだけは我慢出来ないのだった。
「大丈夫ですか? ご気分は如何ですか?」
声に促されてシャワーを終え出て来ると、グラスを手渡してくれた。
相変らず手際が良い男だ。脱ぎ散らかしていた互いの服類も片付け、ベッドメイキングも終えていた。
「ありがとう、アデス」
とグラスを少し上げ、ぐっと呷った。
「!!!」
「バ・バーボン?」
渇!!と喉が焼ける。
一瞬香りに疑問は持ったが、喉も渇いていたのでそのまま呷ったのだ。
「ええ、隊長のお好みのウイスキーは流石に手に入りませんので、珍しいかと。」
「お前の好みか?」
「あ、あ、いえ、飲んだことはない酒ですが代りにどのような物が宜しいかと・・・最近色々とたしなんでおります。隊長のお陰で」
「それは良いが、水で割ってくれ、ストレートは流石の私もな。」
あたふたとミネラルウォーターのビンを開けるアデスの背に告げる。
「アデス? 今夜は隊長と呼ばない約束では?」
「あっ!!
あ・あの… クルーゼと呼ばれるのは・・・お嫌ですか?」
クルーゼは珍しく察しの良いアデスの顔を見詰め、ゆっくりと酒で濡れている唇の片端を吊り上げた。
アデスはいつも仮面で隠されている素顔と、その笑みに、美貌であるが故に一瞬ゾッとした。
「あー、あの、こういう二人の会話を『ピロートーク』と言うようですよ。」
「私はなかなか苦手ですが。」
と、焦った口調で、動揺を誤魔化した。
「妬いているのか? 一体幾つの子供だ?」
からかい口調で訊ねながら、クルーゼは焦って立ち尽くしているアデスの手からミネラルウォーターのビンを取り、自分好みの濃度に割ったグラスを持ったまま、ベッドの裾に腰掛けた。
「アデス、そのような事は『聞くのは野暮』、『秘するが花』だろう?」
「も・申し訳ありません」
と、アデスは首を竦めて立っている。
クルーゼは、喉奥でくくっと笑いながらグラスを口にしていた。
「ラウ、は、新鮮だったな、幼子の頃に戻ったような気がした。」
「いや・・・それよりも、アデス?
お前の声は私を熱くさせたよ。好かった・・・」
と、上目遣いに見上げるクルーゼの口元は、酒を舐め取っていた赤い舌が、更に唇をゆっくり舐めた。
アデスはその様子を見ながら、誘われていると確信する。
照れくさそうに、頭から、首筋まで朱に染めながら、ベッドの上に上がり、中央の位置を占めた。
そして、初めてであろう言葉を紡いだ。
「隊・・・ア、ラウ・・・あ−ラウ、私の胸に来なさい。」
「一緒に眠ろう・・・ラウ、愛している。」
と、少し腕を上げ、広げて誘う仕草をする。
その言葉に合せるように、面白そうに、ゆっくりと笑みを深くしたクルーゼは、そのしなやかな身体をバスロ−ブに包んだまま、アデスの広げ待っていた腕の中に横たえた。
金の髪をアデスの胸に寄せると、呟いた。
「アデスのピロ−トークか・・・又聞かせてもらおう・・・」
「は、はあ・・・・」
「く、くく・・・」
アデスは、自分の胸で、面白そうに、笑っている大切な人の、金の髪から背中にかけてゆっくりとさする。大きく手のひらを広げ撫でる。
やさしく何度も・・・
「ラウ おやすみなさい。」
暫くすると、ゆっくりと身体の緊張が解け、アデスに掛かる重みが増した。
微かに規則正しい寝息が聞こえてきた。
「ゆっくりとお休み下さい、隊長・・・、今夜だけでも、暫しの安らぎを・・・・」
と、アデスは声なく呟き、金の髪を撫でキスを落とした。
『そして、願わくば、もう一度チャンスを・・・』
<終>
素敵な作品ありがとうございました(〃∇〃) //
ベッドの中で、受けに「僭越ながら…」と前置きして名前呼ぶ攻めに反応しまくって
しまいました(照)//
クルーゼという名前に、過敏に反応する隊長が痛々しくて…//
ラブラブな二人で微笑ましいのに、切ないのです//素敵です〜vvv
また素敵な小説いただいてるのでアップさせていただくのが楽しみですv