アデス×クルーゼ
小説 吉野様

『不凍夜』






ザフト軍ヴェサリウス艦艦長。

そうなってから、もう幾月。

そして、貴方と二人で過ごす幾度目かの夜。

情事の後、バスルームから出てきた貴方は宙を彷徨う仮面の保護に向かう。

バスローブ姿でふわりと飛んでいる姿は何とも刺激的で。

それをベッドの上で眺めながら、つい、いつも思っていたことが口から滑り落ちた。

「隊長は無重力がお好きですよね」

そう言うと、貴方は少し驚いた顔で私の方を振り向いた。

「?失礼しました。何か気に障りましたか?」

「いや、そういう言い方をされたのは初めてだと思ってな」

貴方は小さく笑って再び、仮面の方に目を向けると細い指先でそれを掴み寄せた。

そういう言い方?

「どういう意味ですか?」

「私が何かを好きだ、と誰かに言い当てられたことが無かったということさ。実際、好きなことなんて自分にあるとは思わなかった」

貴方は笑って言うけれども、それはひどく哀しいことだったのではないかと思った。

自分が好きで出来ることなどないと思っていて。

無意識の内に好むものがあったとして、それを見極める人間が側には居なくて。

他人を惹きつけてやまないくせに、それは何と孤独なことか。

「そんな顔するな。今は自分でさえ分からなかったことを分かってくれるお前がいるんだ。それでいい」

どんな顔をしていたのだろう、と少し焦って右手で自分の口元を覆う。

貴方はまた笑った。

「好きなのはいいですが、戦闘中は危ないですよ。コントロールルームではお控え頂いた方が…」

「止まっているよりは動いている方が落ち着くんだよ」

「はぁ…」

「止まっているとそのまま息絶えてしまいそうだ」

「隊長…?」

冗談…ではなさそうだと感じたのはトーンの低くなった声のせいか、僅かに伏せられた瞳のせいか。

実際に止まられたところで本当に息絶えてしまわれることはないのだろうが、この人がそう感じてしまうことが問題で。

「…では、せめて私の側で」

心からそう願った。

私に貴方は止められない。

貴方の背後にある、黒い背景が私には見えないから。

私には貴方しか見えないから。

「…そうだな。付け加えて言うと…」

そう言って、貴方は何か企んでいるような笑みを浮かべて。

「眠っているよりは愛し合ってる方が好きだな」

貴方は折角捕らえた仮面を再び宙に泳がすと私に向かって降りてくる。

最後には私がその腕を掴んで引き寄せ、抱きしめた。

「それこそ私の側だけで」

「望むところだ、アデス」

貴方の口づけは誓いのキスのようで。

けれど、私達に必要なのはきっと誓いでも約束でもなくて。

ただ、お互いが側にいること。

それだけで良かったんだ。



それからだった。

隊長がコントロールルームでご自分の席ではなく、私の傍らに漂っていることが多くなったのは。

椅子の背もたれに置かれた手が時折、私の肩に触れて妙に熱を感じる。

クルー達は隊長が後方で控えている時より、視界に隊長の姿がある方がやりがいがあると言う。

それも複雑だが、それを話すと貴方は嬉しそうに笑った。

クルー達に慕われて嬉しいのですか、と問えば

『いや、お前が面白く無さそうな顔で話すのが嬉しい』

と、笑顔で返されて。


どうやら宙を漂う貴方より、貴方に捕らわれて動けない私のが落ち着かないようです。




アアア〜(≧□≦)///がはがはっ
隊長〜!!///
すみません、もう、あまりにもアデスと隊長が愛しくて…
フワフワ大好き隊長!!可愛いのに切なくて…
それを見つめるアデスの気持ちが暖かくて愛だらけです(〃T∇T〃)//
何か胸が苦しいです〜///
吉野さまのサイト自由屋本舗様のカウンター30000越し記念小説ですv
吉野さまのサイトでは、この小説にステキイラストがついています(*^∇^*)
アデスとクルーゼの幸せにも乾杯♪



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