小説 どにのりんかっぱ4様
アデス×クルーゼ
ヴェサリウス・クルー×クルーゼ隊長vvv

■アデス艦長の苦悩







L4コロニー群で、不審艦が探知されたため、クルーゼ隊旗艦ヴェサリウスが偵察に出ることになった。
今回の任務から新規配属兵を迎え入れたため、艦長として彼らの動向にも気を配らなければならず、私も忙しい日々を送っていた。


7日間に及ぶL4コロニー群周辺での探索もむなしく、我々は、何の収穫もなく帰還することになった。

途中、公海上で偶然出くわした地球軍の戦艦一隻を戦闘不能にした以外は、特に大きな戦闘にもならなかったが、今回の任務から我が隊に配属された新兵にとっては、実戦に慣れるためのいい機会となった。新米パイロットの搭乗した一部のMSには損傷があったが、戦死者も無く、まずまずの結果だった。
ブリッジとMSデッキ及び艦内の指揮系統に乱れも無く(あろうはずがなく)、訓練の成果が出せたのではないだろうか。

しかし、それでも初めての戦闘とあって、新兵たちは興奮冷めやらぬ様子で、それに引きずられたかのように、どことなく艦全体が浮き足立っているようだった。
士気が高揚していると言えば聞こえはいいが、行き過ぎるのは非常によろしくない。冷静な判断ができなくなるからだ。

艦の通常航行中は、ブリッジは三交代勤務となる。現在、クルーゼ隊長は、休息時間で待機要員扱いとなっていた。隊長に続いて、私も交代時間となったため、航海長に後を任せて、席を立った。
ブリッジを出ると、まっすぐ自室には戻らず、艦内と新兵の様子をチェックするため、各部署に顔を出すことにした。




まずは、MSデッキ。
整備班長からニューフェイスたちの仕上がり具合を聞く。
おおむね良好ということだが、精神的疲労の濃い者、精神が高揚してしまって、ナチュラルハイになってしまう者などが出たと言う。ザフト軍随一のクルーゼ隊に配属になったことへの気負いなどがあるらしい。
整備班の中にも緊張とやる気が空回りして、睡眠もとらず、がむしゃらに仕事をこなすものもいたそうだ。整備班長命令で、無理やり休息をとらせたようだが……。
また、肩に力の入りすぎた操縦で、機体の一部を損傷したパイロットがいたが、本人に怪我もなく、機体の損傷も軽微だったという。

「他になにか、気になる事例があるか?」

私の問いに、整備班長は一瞬変な顔をした。なにか考え込むような雰囲気で答える。

「いえ……他は、特にないと思われます」

彼が答えるまでに妙な間があった。……そんなふうに言われたら、余計に気になるというものだが、班長自身が、報告するまでもないと判断したのだろう。ここは、長年、ザフト軍の整備班に所属し、新造艦の頃からヴェサリウスのMSデッキを守ってきた彼の意思を尊重する。

「そうか、なにかあれば、すぐに私に報告するように。新米どもがあまり舞い上がらないように監督してくれ。君のようなベテランの忠告なら若い兵も納得するだろう」

そう言い置いて、MSデッキを後にした。




次に私が向かったのは、機関室だ。ヴェサリウスのメインエンジン、通称「シリウス」の整備と維持管理を行う部署である。ヴェサリウスの心臓部と言っても過言ではない。MSデッキと違って、一般兵の立入が制限されており、非常に閉鎖された空間である。

技術は高いが、偏屈な(いや、プロ意識の高い?)技術士官が多いことでも有名だ。
新規配属者にとっては、初めての任務で機関室はいかに訓練を積んだとはいえ、精神的に辛かろう……そう思って、様子を見に行ったのだが、声紋と網膜チェックをクリアし、二重扉のロックを解除して驚いた。

―――なんだ、この朗らかな空気は……。

常ならば鬱屈した空気に入室を躊躇うのだが、これはどうしたことか!?あの偏屈オヤジ、もとい、機関長がかすかに笑みまで浮かべて、部下たちを整列させ、何やら訓辞しているではないか。しかも、それをありがたく、けれど苦痛を耐えながら拝聴しているはずの下士官たちの表情は、今は陶然としている。

一体、何を話していたの非常に気になるのだが、私の入室に気づいた機関長が、話を切り上げた。途端、部下たちは、表情を改め、一斉に敬礼をすると持ち場へ戻って行った。

「……艦長、何かご用でしょうか」
陰鬱な声が響く。いつもの機関長だ。

「新規配属の技術士官たちの様子を見にきたのだが…どうだ?」
「まだまだ、知識も技術も足りませんが、これからビシバシ自分が鍛えますので、ご心配には及びません」

取り付く島も無い。
心の中で、盛大なため息をついて、話を変える。
「そうか…。……ところでシリウスの調整はどうだ?本国から新システムの導入の話があるのは聞いているな?君の考えはどうなんだ」
当り障りのなさそうな話を振ってみた。

「!!もちろん聞いておりますとも!シリウス以上のシステムにはもうお目にかかれないと思って言いましたが、あの新システム!あれはいいですよ!!シリウスの機関最大出力値を100とすると、本国の技術スタッフの提示してきた数値はですね…………」

水を向けたのは自分とはいえ、失敗した。
機関室には、他のことに興味を示さないくせに、自分が興味のあるものに対しては、異常なまでの執着を示す、いわゆる「オタク」系技術者が多い。
この男はその筆頭なのだ。

そして私は、この後、三十分近く彼の『ご高説』を伺うことになったのだった……。



彼の一方的な情熱に満ちた話に耐えられなくなった私は、無理やり話を切って問いかける。
「ところで、機関長!先程、部下を集めて話していたのは?」
気分よく、『新システムにおける熱対流効率とランニングコスト』について語っていた男は、多少、気分を害した様子で答えた。
「先程の?……ああ、あれですか」
「何の話だったんだ?部下たちの表情がやけに、その…楽しそうだった(?)のだが?」
「………別に、大した話ではありません。ヒヨッコどもに、技術士官としての心がまえを教えていただけです」
ニヤリと口元を歪める機関長。

見たことのないような不気味な薄ら笑いを浮かべる機関長が薄気味悪くなって、それ以上の追求は避けることにした。
これからもよろしく頼むと形だけの言葉を残して、足早に機関室を出た。




―――おかしい。

機関室を出て、士官食堂に向かいながら、整備班長と機関長の態度の妙な符号が気になった。二人とも何か隠している――いや、二人だけではなく、どう考えてもヴェサリウスのクルーたちの様子が変だ。

ろくに休息もとらずに働き続ける新米整備兵。
テンションが上がりすぎて機体を損ねた新米パイロット。
あの、機関長の訓辞をうっとりと聞く技術士官たち。

―――悪い病気でも流行っているんじゃなかろうな。
ふと思いついてしまった考えに首を振りながらがら、軽く壁を蹴って通路を進む。

突然、通路の先から女性兵士の悲鳴が聞こえてきた。
何事か!?と駆けつけると、男性兵士が女性士官にのしかかるようにして倒れこんでいる。セクハラ現場を目撃かと思いきや男の方は気を失っていた。悲鳴の原因は、倒れてきた男に女性士官が驚いただけだった。

この艦に女性に乱暴を働くような者がいるとは思えない。ましてや、婦女暴行はザフト軍法会議において極刑の対象になる。それを知っていて、愚をおかす馬鹿がいるとは、到底考えられなかった。

「大丈夫か?」
女性士官に声をかけ、彼女を立ち上がらせる。男の方も無重力が幸いして頭など打っているような形跡は無い。顔に見覚えがあった。新規配属の報告に自分を訪れた十数人の中にこの顔があった。
確か名前は、リトナー。MSパイロットのはずだ。彼の首と口元に手をかざし、脈も呼吸も特に問題ないことを確認する。
先程の悲鳴を聞きつけたのか、何事かと兵が集まってきた。

「君は衛生兵を呼べ。それから、そこの二人!彼を近くの休憩室へ運んで、衛生兵の到着を待て」

女性士官に医務室へ連絡させ、野次馬の中の男性下士官二人に病人を運ばせる。程なくして、衛生兵が到着し、ストレッチャーに病人を乗せ、医務室へ連れて行った。

「私は、自室にいる。彼の容態が分かり次第、連絡を。それと、確か、彼のサポートはアスラン・ザラだったはずだ。様子を聞きたい。艦長室へ出頭させろ」

衛生兵にそう命令して、私は、自室に戻ることにした。





◇◇◇◇

新規配属の兵士には、階級の上下を問わず、一ヶ月〜半年間、同じ任務につく先任士官がサポートに就く。新しい隊での決まりごとや細々とした艦内生活についてのアドバイスなどを行うためだ。
もちろんアスランは、倒れた兵士よりも年下だったが、クルーゼ隊では先輩であることに変わりはない。アスランは、こちらの期待以上の働きをしてくれる優秀な部下だった。
今回の任務では、ザフトの赤い軍服を着ているのは、アスランのほかは、彼と同期のラスティのみだった。

「アスラン・ザラ、出頭いたしました!」
「ああ、ご苦労」
挨拶と共に敬礼したアスランが、心配そうな面持ちで訊ねる。

「リトナーの容態は、どうなのでしょうか」

「ああ、先程、軍医から報告があった。特に身体に異常は見受けられなかった。問題ないだろう。―――で、診断の結果、睡眠不足だそうだ」

「は?」

「過労でも、病気でもなく、睡・眠・不・足だそうだ!」

「睡眠不足……?」
アスランは呆然とその単語を繰り返す。

軍人にとっての基本は、自己管理。精神面もそうだが、何より体調管理ができていないと軍人としてやっていけない。食事と睡眠とトレーニング。これは、軍人として欠くことのできない要素でもある。
アスランが唖然とするのも無理はない。コーディネーターは、体力的にもナチュラルを圧倒している。一日や二日寝なくても倒れるようなことはない。
まして、寝たくても寝られないような、長期間にわたる戦闘など、今回なかったではないか。ということは、あとは、精神的なものに起因する睡眠不足が考えられるのだが。

驚いたことに、軍医の報告によると、ここ一週間の間に、睡眠不足が原因で体調を崩し、医務室の世話になった者が六人。そのうち五人が、新規配属兵だった。カウンセリングのみに限定すれば、新規配属兵の約七割が医務室を訪れている。

精神的な悩み……眠れないほどの――?

一体、彼らに何があったのか?

このまま放置して、艦の運行や戦闘に支障が出るようだと問題だ。原因究明のため、新米MSパイロットの身近で彼をサポートしていたアスランを呼んだのだ。彼ならば、年が近いということもあって悩みを打ち明けられたり、若い兵の間の噂話などが耳に入りやすいだろうと思ったのだが。

「悩み……ですか?特に彼の口から聞いたことはありませんが…。彼は、職務遂行に非常に熱心でしたし、クルーゼ隊に配属になったことをとても喜んでいましたので、原因が任務内容にあるとは考えにくいと思います。もちろん私は専門家でもありませんし、二十四時間、彼を見ていたわけでもありませんので、断言はできないのですが……」

「そうか……。アスラン、君は、近頃の艦の雰囲気が変だと思わないかね?」
「変…とは?」
「こう……明るいのはいいのだが、浮き足立っているというか、明るすぎて気味が悪いというか……」
「気味が悪い…ですか?」

「ああ、―――先程、機関長に会ったのだが……笑顔だった」

「……は?機関長の笑顔?……気味が悪い…ですか?」
「いや、そうではなくて…いや、そうとも言えるのだが……普段、にこりともしないような男が笑ったんだ。それは、驚くだろう?」

「そうですか?自分はよく、隊長と笑顔で話される機関長をお見かけしますが?」

「隊長と…笑顔で……?」

アスランの言葉に驚きを隠せなかった。
誰に対しても憮然とした表情で、陰鬱に話す男が、隊長にだけ笑顔とは…。

―――あの男!隊長に色目を使うとはけしからん!

憤然とした。そのとき、
「あ…!」
突然アスランが声を上げる。
「なんだ?」
「いえ、すみません……」
「?気になることがあるなら、言ってみろ」
「あの、リトナーの件ですが、原因に心当たりがあります」
「うむ」

「……隊長です」

「なに!?」

「私も配属当時、非常に悩んだ覚えがありますので、おそらく間違いないかと」
「どういうことだ?」
アスランまでもが、同じ悩みを抱えていたとなると、事態は深刻なのだろうか。

「憧れのクルーゼ隊に配属になって、実際に隊長ご本人を間近で拝見できる機会を得れば、誰だって、普通舞い上がります。まして、パイロットともなれば、隊長の戦闘をこの目で見られるんです。共に戦場で敵と戦い、帰還した後、自分の働きについてお褒めの言葉の一つでも頂こうものなら、卒倒するぐらい嬉しいものだと思われます。大概そういうときの隊長は、笑顔ですから…。先日の戦闘後にリトナーが有頂天になるのも無理はありません。そして……ある時、ふと、気づくんです」

「……何に?」

アスランの言葉に私は気づかぬうちに声をひそめていた。続きを促す。

「アデス艦長は、気にならないんですか。クルーゼ隊長の、あの仮面の下にどんな素顔が隠されているのか……」

気になるもならないも、自分は既に知っているので、何とも答えようかない。しかも、私が知っていることは、他人に悟られてはならない。

「それは……もちろん……気になるだろう」
アスランの言葉に曖昧に答えながら、隊長の秀麗な顔を思い出していた。



金髪に縁取られた、白い面に冴え渡る青い瞳……。

普段の厳しい声が嘘のように甘い囁きに変わる―――。

彼は、私の頬に手を伸ばし…………



口元が緩みそうになり、あわてて手で隠す。
「そうですよね。気になりますよね。夜も眠れなくなるくらいに」
「……そう………えっ!」

思い出し笑いを堪えていた私は、アスランの言葉の意味を理解するのが遅れた。

「それでは、………これは、つまり……そういうことなのか?」

唖然とした。
新規配属兵とはいえ、正式な軍人だ。
厳しい訓練カリキュラムをこなし、適正試験をパスして入隊した、ザフト軍きっての精鋭だぞ!?(一応・・・)
だんだん腹が立ってきた。

―――隊長の素顔が気になって眠れないだとうッ!?子供じゃあるまいし、いったいうちの連中はなにを考えているんだ!

「アデス艦長?」
「あ……ああ、ご苦労だったアスラン。一応事情は分かった。何らかの対策を講じなければと思っていたが、こればかりはどうにもならん」
怒りながらも、ため息をついてしまう。隊長に素顔を皆に見せてくださいとは言えないし……第一、本当に隊長が原因なら、この件について報告すらできないではないか。お手上げだ。

「いえ、それが、解決策もあるんです。しかも既に機能しています」

「何だと!?」
本気で、どうすべきか悩み始めた私は、拍子抜けした。

「先程の機関長です」

「彼が、どうかしたのか」
「おそらく、今回の新規配属兵の中で、精神不安定な状態になった者が出ていないのが、機関室勤務の技術士官だと思います」
確かに軍医の提示したデータではそうだった。
「しかし、それはほとんど隊長の姿を拝見する機会がない部署だからではないのか?」
「ですから、偶然艦内でお会いできた時の嬉しさは、他部署とは比べものになりませんよ」
「……わからんな」

「次にいつお会いできるかわからない。でも、隊長のことをもっと知りたい。そんな彼らの要望にすぐに応えられる人物が身近にいるんです。―――機関長は『クルーゼ隊長マニア』なんです」

「!!」

「機関長は、隊長のスケジュールチェックから嗜好品、シャンプーの銘柄までチェックしているそうです。その機関長の口から語られる数々の隊長秘話。彼の部下たちは、それを糧に日々の任務をこなしているそうです。そうした毎日が培った『想像力』。―――隊長の素顔を想像するための様々な情報を機関長が与えている
と言われています。各々が、どんな隊長を思い浮かべているのかは知りませんが……」

―――それが、機関長の訓辞になっていたのか…。

機関室での部下たちの笑顔の謎が、意外な形で明かされた。
が、これで納得していいのだろうか?自問する。
こんな馬鹿みたいな話を理性的に理解しようというのは無理だ。
半ば自棄気味に言う。
「………わかった…で、いずれ他部署の者にもその『想像力』という技が伝播するわけか」
「はい」
アスランもかつての当事者だ。謎解きは、ほぼ的を得ているのだろう。本気であれこれ悩んだこちらが本当に馬鹿みたいだ。皮肉のひとつも言いたくなってしまう。

「そして、君も以前その恩恵に与ったということかね?」
多少、八つ当たりになってしまった私の言葉に

「いえ、自分は、別ルートで」

にこりと微笑んでアスランは、問題発言をした。
「え?ちょっ…」

ピピッ
アスランの手首の携帯端末が鳴る。
「あ、申し訳ありません。呼び出しが。では、アデス艦長。搭乗機の調整が残っておりますので、これで失礼します!」
表情を改めて、敬礼を一つすると、アスランは、こちらの動揺もおかまいなく足早に退出した。

―――ちょっとまて…。どういう意味だ?それは。

問題が一つ解決したと思ったら、また……。
しかも、自分にとっては、こちらの方が重大だということは、間違いなかった。





◇◇◇◇

結局、あれこれ悩んだ挙句、寝付けなくて、隊長に直接報告を兼ねて伺いを立てることにした。隊長の執務室を訪れ、開口一番、問いただす。

「隊長!お聞きしたいことがあります」
「何だ?」
クルーゼ隊長は、戦闘報告書に目を通しながら、そっけなく答える。

「最近の艦内の雰囲気に何か感じませんか?」
「何かとは?」

「こう…おかしいとか……浮つきすぎているとかですが」
しどろもどろに話す私に、隊長はため息をひとつ。
諭すような声で私に語りかける。
「アデス、質問は具体的に。それでは、なんのことか分からんぞ」

「単刀直入に申し上げると!」

「何だ」

隊長の目線がまっすぐと私の顔を見ているのが分かる。急に言葉に詰まってしまった。

「その………」
自分は、何を聞こうとしていたのだろう。


―――あなたの素顔を知っている可能性のある者を教えてください?

―――それとも、アスランに素顔を見せたことは?

―――いやまて、それよりも機関長は危険です!―――だろうか。


「アデス?」
急に押し黙って俯いた私を不審に思ったのか、隊長が声をかける。その声に我に返ると、隊長の顔がすぐ目の前にあった。

「何を思い詰めているか知らんが、艦内のおかしな雰囲気は、そのうち治まるぞ」

「……え?」

「これまでにもよくあったからな」

「……ご存知で?」

「ああ」
さらりと言ってのける彼は、憎らしいくらい冷静で、拍子抜けした。あれこれ思い悩んだ自分が馬鹿みたいだ。同時に『さすが隊長だ』と、改めて彼の洞察力に敬服した。この様子なら、素顔のことは誰にも知られていないだろう。彼が、そんな手抜かりをするわけがない。
機関長にしてもそうだ。隊長自身が故意に適当な個人情報を流して、機関長の趣味をうまく利用しているのだろう。アスランの言っていた別ルートが引っかかるが……。あの国防委員長閣下の子息だ。噂話くらい耳に入るだろう。

安堵すると共に、自分の推測に納得しかけたその時、

「この状況は、自然と始まって、いつのまにか収束する」

―――は?

「なぜかは知らんが、新兵たちにとって、新しい職場での初の戦闘後は、そういうものなのではないか?」

小首を傾げて、彼が言う。
その言葉を聞いて、愕然とした。


―――分かってない………。この人は…全然分かってない!!自分の魅力というも
のが!

―――危なすぎる…。


私は肩を落として、盛大にため息をつく。
その姿を見た隊長が無邪気に「どうした?アデス」と聞くものだから余計に私の苦悩は深まる。
隊長に罪はないのだ。

―――分かっている……分かってはいるが…。

息を吐き、気持ちを切り替えた。
私は、隊長の両腕を軽く掴む。目線を合わせて、真剣に『お願い』した。

「隊長!機関長とアスランに気をつけてください」

しばしの沈黙。
「一体………何に気をつけろと言うんだ?お前、おかしいぞ。一度、カウンセリングでも受けた方が良くないか?」
隊長は、手で私の頬に触れ、頭を軍帽越しに撫でた。

「私が、カウンセリング……ですか?」
何だか釈然としないものを感じたが、隊長の手の感触が気持ちよくて、私の反応が鈍る。

「お前が、そんな状態だと、私が困る」
心配そうな彼の声色に胸が高鳴った。

「困りますか?」
「……ああ」

自然と彼の腰に手をまわし、抱き寄せる。
そのまま、口付けようとして、顔を傾ける。
彼も自然と薄く唇を開く。
瞼を閉じて、唇を近づけたとき、

「―――あ」

彼は、急に何か思いついたような声を出した。
唇が触れ合わないまま、離れる。

「―――そうだ、その機関長が若い兵の悩み相談を受け付けていると聞いた。なかなか評判だそうだ。一度彼に話をしてみたらどうだ?ちなみにアスランも良いカウンセラーを知っているそうだが、本国にいるらしいから今は無理か」

「……………隊長」

―――この人は……全く………。
分かってない―――――――。



私のため息と苦悩は、ますます大きく、そして深くなったのだった。






―――後日談―――
機関長には、本艦におけるカウンセリング担当アドバイザーという肩書きが追加された。もちろん隊長命令による特別措置である。
そして、隊内で密かに隊長の素顔当てコンクールなどというものが行われていることなど、我々は知る由もなかった。








うあああ(≧∇≦)///ヴェサリウスクルーに愛されまくってる隊長です〜///
すごく幸せですvありがとうございます(T▽T)///
艦内を見回るアデスも艦長さんぽくてカッチョ良いです〜(惚v)
自分の魅力に全然気付いてない隊長は、やっぱり守ってあげたくなっちゃう可愛さですv
やっぱり隊長はヴェサリウスのアイドルなんです!!
そしてアスランが微妙に黒くて(笑)!やっぱりヴェサリウスは良い艦です〜(〃∇〃) !!

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