「最果ての愛」

小説吉野さま


君に私が触れるのを許すのは私が権力者だからだろうな。

もし、そう問えば彼は何と答えるだろう?迷うことなく、YESと?偽りの声でNOと?

彼の中にある答えは決まっているのだろうが。

最初に権力者として彼に触れたのは私。そうすることでしか、手に入らないと知っていたから。

身体は勿論だが、心も露わにした彼を見たのはそれが初めてだった。

力ずくで会議室の机に彼を押し倒し、必至で抵抗する彼の動揺は却って私を煽った。

いつも冷静沈着な彼が見せる弱さは非常に私を喜ばせ、より強い欲望を生んだ。

耳元で立場上の弱みを囁けば、一瞬、抵抗が弱まり、その隙につけ込んだ。

再び、抵抗の為に伸ばされた白い腕は次第に力を失い、細い足は床を離れ、宙を彷徨いだした。

仮面を剥ぎ取り、交わった瞳は涙に濡れていたが構わずに先に進んだ。

最後まで抵抗され、私が掴んでいた彼の手首には赤い跡が残った。

行為を終え、床にぺたりと座り込む彼に私は上着を掛け、次の約束を勝手にすると部屋を出た。

優しくするつもりはなかった。優しさでは本当の彼に触れられないと思ったから。優しさでは彼は自分を認識しないと分かっていたから。

暴行で痛みを、屈辱で怒りを。とにかく、本当の彼が欲しかったのだ。

現在、彼は私を利用することを覚え、自分から誘うようにもなった。それも希だが、抵抗することは少なくなった。

どれ程ひどい抱き方をしても抵抗されなかったが、優しく触れるのだけは嫌がった。それが彼のプライドなのかも知れない。

私が本当に君を愛していると知ったら、君は一体、どんな顔を見せてくれるのだろう。

きっと、二度と触れることを許してはくれないだろう。だから、私は決して言わない。

さぁ、今日はどんな方法で君を苦しめてあげようか?



「あ、うぅ…っ」

切なげな声を上げる彼をじっと見据える。彼はベッドの上に裸で転がり、私は服を着たまま椅子に座っていた。

今、彼の中では私が埋め込んだ、いびつなローダーが動き回っている。

「足をこっちに向けて、広げて。よく、見えないな」

「い、やぁ…」

「私の言うことは素直に聞いて欲しいな、クルーゼ」

私はリモコンで彼の中を動き回るローダーの動きを激しくする。彼の身体は跳ねるように動いた。

「はうっ!…うっ、あ…っ」

彼はそろそろと足を開き、私にそこをさらけ出す。白い足の間は果実が熟れたように赤く、それを隠す白い指がまた美しく見えた。

「隠すんじゃない。その指は…そうだな。その起っているものを自分でイカせてやればどうだ?」

私が喉で笑えば、彼は背けた顔を赤に染めながらも言う通りに動く。器用に動く指の動きは実にしなやかで私よりもいやらしい。

「っはぁ…っあ、ああっっ」

彼が一際大きな嬌声を上げると、彼は白い液を放ち、全身の力を失う。手はスルッとベッドの上に落ち、開いていた足は支え合うように内へと閉じる。

私はやっとという風に立ち上がる。

「そう…いい子だ、私の言うことを聞けば君も良くなる。さぁ、ご褒美だ」

「っ!?やめ…っあ、あっ」

私は彼の身体の上にスケルトンレッドのスライム状の玩具をしかける。冷たい感触に彼の身体は震えた。

「元気なのを買ってきたからね。君の身体を動き回って…最後は君の身体で一番熱い所を探し当てる」

「っや、んっ…ああ…!」

「ほら、足を開いて、美しい君を見せてくれ…」

私は再び、椅子へと戻り、彼をじっと見つめる。スライムは彼の身体をゆっくりと這い回り、まとわりつく。

胸や足なんかでは特に動き回り、彼の反応を楽しんでいるようだった。

「は、うぅ…や、め…」

「もうすぐだな…ほら、辿り着きそうだ」

「っあ、あ、は…っやっ…んうっ」

赤いスライムがずるずると彼の中に飲み込まれるゆく。そして、その中で蠢いているのだろう。彼の身体が暴れ出す。

「く…っっ、や…っもう…っ!!」

「もう少しだ…我慢を」

「あ、は…っふ…っ」

彼の熱で溶けだしたスライムがとろとろと彼の中から出てくる。真っ赤なそれは血のようでひどく綺麗だ。

引きずられるようにローダーも一緒に彼の体内からずるりと出てきた。

「っは、はぁ…ふ…」

「ああ、すまない。急に全て無くなって、淋しくさせてしまったな。そろそろ…一緒に楽しもうか」

私はゆっくりとベッドに上がり、スラックスのジッパーを降ろすと既に起ち上がったものを取り出し、彼の心構えを待たずに早急に彼の中に入る。

「っか、は…っくぅ…っっ」

「ふ…大分、慣れたな…」

「あ、あああっっ」

彼は腕で顔を隠して、ひたすら耐える。耐えて…いるのだろう。快感にか、不快感にか。

私にはもう彼の弱さは見えなくなっていた。彼の本当の弱さはもっと彼の奥にあるのだろう。

私には辿り着けない、もっと奥に。


一時間後、彼は何もなかったように軍服を纏い、私に背を向ける。

「では」

「余韻に浸る暇もないな、君は」

君は何を馬鹿なことを、とでも言いたげな笑みを浮かべて私を振り返る。それだけで彼は去り、私は残される。

私は彼を引き止める術を持たなかったし、彼に留まる理由は何もない。

初めて、彼を抱いたあの日以来、彼は抵抗もしないが、涙を見せることもなかった。

私はきっと偽物の彼を抱き続けている。

それでも手放せないのは本当に愛しているから。

それでも優しくできないのは彼を失うのが怖いから。

今のままなら繋ぎ止められる。そう思う私は正気では無いのかも知れない。

私が彼に仕掛けた鎖は彼に届きもしなかったというのに。

罠にかかったのは私の方か?

…それでも。


私が君に与えられるのは権力と痛み。存分に利用すればいい。

私は君にとって”その他大勢”や”誰か”にはなりたくなかった。

痛みでしか君は私を認めない。ならば、その痛みでパトリック・ザラの名をその魂に刻みこめ。




「隊長?お出かけだったのですか?どちらに?」

「…忘れた。つまらん所さ」

そう言って彼は嘲るように笑った。


                            
                          END



吉野さんによるとこの小説は『ちなみにザラパパと隊長の初めては少年と青年の間くらいと
考えて書いてまひた。ザラパパももちょっと若い頃で。』という事で、
クルーゼはまだ優秀なアーマー乗りの少年って感じでしょうか(*^∇^*)
もうもう隊長ってば可憐ですーーー(〃^◇^〃)そしてセクハラオヤジは使えるキャラでっ!
もっと読んでいたいんでvvv書いてくださいvvvv
クルーゼ隊長とザラパパは元々権力者のパトロンと美しい将校って感じで、
微妙に口説かれてたりしてましたけど、第20話は決定的でした。
隊長のあのザラパパへの憎みぶりだと、絶対相当なことをされているっ(照)。
ザラパパすごいキャラです。あの隊長の白い軍服も、美少年軍団をクルーゼの下に配したのも、
ザラパパの趣味にしか思えなくなりました。流石パトリック・ザラ国防委員。
やはり大人の世界はディープで楽しいです!もうこのまま走り抜けて独走しましょう(≧∇≦)


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