カカシ×イルカ編
小説 桃木 苺実様







「イルカ先生のこと、ヘンな目で見んなよな!」

 ウンウン、なかなかの観察力だね。普段の任務に活かされないのが残念だよ。
 頭二つ分以上低い位置から必死で睨みつけてくる部下に、大人気ないと知りつつ宣戦布告。
 余裕のあるフリで、でもそんなものありはしないから。

 可愛くて生意気な部下が、実はめちゃめちゃ強力な恋のライバル、だなんて。
 これはナイショの話。








   「ないしょのはなし」









 お日様みたいな笑顔に一目惚れをした。

 らしくもなく大人しく『片想い』しているその相手は、中忍のアカデミー教師。鼻筋を一文字に走る傷が特徴の、優しい『イルカ先生』。
 階級差を気にしてか、最初は声をかけても困った顔しか見せてくれなかったけど、今では子供たちの話題を振れば嬉しそうに笑ってくれるようになった。

 いつもなら、気に入ればソッコー頂いちゃうのに、彼に対しては我ながら笑えるほどに慎重だ。
 だってねぇ、かなりの重症でショ。
 特に整った容姿をしてるわけでもないただの男なのに、『可愛い』なんて思っちゃうんだから。
 それは肉欲を伴う感情で、それこそオコサマの目にもその邪さが判っちゃうくらいに、あのひとのことが好きだ。
 いまんとこ、望みなんてほんの爪の先ほどもないんだけーどね。


 行き会ったのは、本当に偶然。
 火影様に用があって、夕方の人気のないアカデミーをふらふら探してまわっていたら、声をかけられた。

「カカシ先生? どうかされたんですか、こんなところで」
 珍しいですね、にっこりとお日様の笑顔で近づいてくる。跳ね上がる心臓。その可愛さはほとんど凶器デスよ、イルカ先生。
「こんにちは、イルカ先生。いやね、五代目にちょっと話があるんですが、部屋にいなかったもんで」
「ああ、五代目でしたら早めの夕食を摂られているところだと思いますよ。……そうだ、」

何かを思い出したように、彼は急に俺のほうへ身を寄せてきた。触れ合う寸前で少しだけ伸び上がって、口元に添えた手を俺の耳に当てる。

 ばっくん。

 聞こえてしまうのではないかと言うくらいの大音量でひとつ打ち付けたあと、早鐘のように響く鼓動。ガキか俺は。でも。

「ご用を済ませたら。お時間があればですけど、夕飯一緒にいかがですか?」
 なんて。

 こっそりと耳打ちされた内容と、耳元を擽る吐息、伝わってくる体温に。
 このひとは俺を殺す気なんじゃないか、なんてバカなことを真剣に思ってしまった。

 その手を掴んで引き寄せて、腕の中に閉じ込める。無防備な彼はきっとあっさりと俺の思い通りになる。簡単だ、その手を捕まえてしまいさえすれば。
 なのに俺にできたことと言えば。

「喜んで」

 そんなふうに応えて、右目だけで笑って見せるので精一杯だったのだ。
 肉欲を伴う好意。だけど本当に好きだから、簡単に行動に移せない。
 いまはまだ、俺の答えにホッとしたように、嬉しそうに笑った、彼の笑顔だけで充分満足なのだ。








 定食屋のカウンターで、二人並んで食事を摂る。
 彼はカツ丼、俺は焼き魚定食。一緒に頼んだビールのジョッキを、乾杯、なんて打ち付け合って、ひとくち。
 彼が俺を誘ってくれるなんて、初めてだ。でも、彼の話なんて、子供たち絡みに決まっているから。

「何か、気になることでも?」
「……え?」

 きょとん、とした表情。カツを口に入れようとした状態のまま、不思議そうに首を傾げて俺を見る。そのしぐさが、子犬みたいで可愛い。
 けれど「何がですか」と訊かれて、俺のほうこそ首を傾げたかった。

「ナルトたちのことで、何かあったんじゃないんですか?」
「は? ……えー。あいつらずいぶん成長したみたいで、これからもカカシ先生に任せておけば安心だなぁと……え、何かあいつらに問題が?」
「え?」

 話が噛み合わない。
 俺は困って、後頭部を掻いた。子供たちは関係ない? じゃあ一体、どうして誘ってくれたのだろう。

「……あのぅ。じゃあ、何か別の相談事でも……?」

 考えてみても、彼が俺を誘う他の理由がどうしても見つけられなくてそう訊ねると、彼はふと寂しそうな表情になって。

「用がないのに誘ったら、やっぱりいけませんでしたか? 俺、……いつもカカシ先生とは子供たちの話しかしたことなくて、だからカカシ先生とそういうの抜きでお話できたら、って思って……俺図々しかったですか? 迷惑でしたか?」

 言いながらしゅん、と俯いてしまった彼に、俺は大いにパニクった。
 このひとは一体、俺を何度殺せば気が済むのか。

「迷惑だなんてあるわけないです! その……嬉しいです、すごく」

 やっとの思いで告げた言葉は、恥ずかしくなるほど稚拙で。
 でも言ったとたん、パッと顔を上げた彼が「よかった」なんてはにかんだ笑みを見せるから。


 過去のレンアイからしたら、まるで亀の歩みのような進歩だけど。
 そこに深い意味なんてなくても。
 俺個人と話をしてみたかった、なんて言われただけで幸せで泣きたくなっちゃうなんて。
 それほどに彼を好きだなんて。

 これはまだ、彼にもナイショの話。







くあああ〜(≧∇≦)
またも可愛いお話をっっありがとうございます〜//
カカシ先生のイルカ先生への想い、和彦さんの声で来ちゃいます(笑)
プレイボーイは、純愛には弱いのですvカメの歩みのような恋愛に乾杯 v
桃木さんは、可愛いお話からキ●クなお話まで幅広くて
しかもオフ本のマンガやサイトのイラストも可愛いのです〜v
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