カカシ×イルカ
小説 桃木苺実 様
ゆうぬくまり
「イルカ先生。夕温まり、しましょう」
夕暮れ時、イルカの家でくつろいでいる時に不意にカカシがそう言った。
ゆうぬくまり?
「何ですかそりゃ」
夕涼みなら知ってますけど、と不審気な表情を向ければ、カカシはにっこりと笑って、
「そう。それの逆です。この寒い時期に涼むってこたないでしょ。だから、こーやって――――」
手を伸ばし、イルカの身体を引き寄せ抱き締める。驚いて逃れようとする間もなかった。
「ち、ちょっとカカシ先……」
「――――二人であったまりましょう。ね?」
冷えた首筋に、戯れのように押し当てられた唇が温かくて、一瞬抵抗を忘れる。期待するかのように震えた身体を誤魔化そうと、小さく頭を振った。
「何言ってんです、こんな時間から……ッ」
相手との身体の間に手を入れ押し返そうとするが、しっかりと抱き込まれてしまえばそんなささやかな抵抗など意味はなく。
更に、その口から告げられた内容に、抗おうという意志さえも奪われてしまった。
「今夜は泊まれません。このあと任務が入ってるんです。行ったら、当分戻れないんで」
「当分、ってどのくらい……」
「はっきりとは言えませんけど。ま、短くても一ヶ月以上にはなりますかね」
「………そんなに」
七班の任務ならば受付でチェックしている。C、Dランクの依頼にそんな長くなるようなものは入っていなかった。
ということは、それは上忍としてのカカシに割り当てられた任務。期間からしてもB、Aランクか、もしくはそれ以上の。
そこまで高ランクであれば、危険がないはずもない。何でもないことのように言ってはいるが、たぶん大変な任務なのであろう。何と言っても、『写輪眼のカカシ』に当てられるくらいなのだ。
「ね、だから。発つ前に、アナタを感じさせて」
身を強張らせているイルカに、微かに笑って、カカシはそう囁きかけた。
そんなふうに言われて、拒めるわけがない。
ズルイ、小さく呟いた唇を、やさしく塞がれた。
イルカが目を覚ますと、すでに日付が変わっていて。
今の畳の上で重なり合っていたはずなのに、寝台に独りで寝かされていた。さっぱりとした肌の上に、ご丁寧に寝間着まで着せられているのが妙に恥ずかしい。
枕元には一枚のメモ。
『いってきます』、たったひとこと。
イルカはしばらくぼんやりとその紙片を眺めていたが、すぐにそれを握りつぶしゴミ箱に投げ捨てた。
「……馬鹿」
いってらっしゃい、気をつけて。
そんな他愛もない言葉さえも言わせずに行ってしまうなんて。
後始末なんてしてくれる間に、起こしてくれたらよかったのに。
あんな奴の心配なんて、金輪際してやるものかと、再び布団に潜り込む。
無事に帰ってきたって、「お帰りなさい」なんて絶対言ってやるもんか。
そう、できもしないことを心に誓いながら。
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素敵な小説ありがとうございましたv
危険な仕事の前の、カカシ先生の何とも雰囲気たっぷりの口説き方が
切なくてカッコ良くて〜///
イルカ先生の意地っぱりぶりな反応がまた可愛くてヤられましたv
こちらの小説は、桃木様のサイトで利土井バージョンもアップされるので
遊びにいっちゃいましょうv
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