覇王大系リューナイト
グラチェス×ヒッテル

小説 吉野様
イラスト見国かや


『Crazy For You』








「よいせ…っと、まったく。お酒、弱いなら弱いで言っておいてくれよ、ヒッテル」

「……悪い」

グラチェスはヒッテルに肩を貸しながら宿の部屋に入って、彼をベッドに降ろす。

ヒッテルはそのままベッドに横たわって、右手で顔を覆った。

二人が出会って、しばらく経ってからの夜。宿の酒場で何とはなしに二人で飲みだして2時間後。

ヒッテルが動けなくなって、今に至る。

「大丈夫かい?具合悪い?」

「いや…ちょっと、クラクラするだけだ…暑いな…」

言いながら、ヒッテルはマントを外して服を乱した。そこから細くしなやかな身体が晒される。

伏せられかけた瞼から覗く濡れた瞳がいつも以上に艶っぽく見えた。

その様をグラチェスは呆然と見つめていた。

「…すまない、先に風呂を借りる…水でも浴びてくる」

「え?待て、あぶな…」

グラチェスの言葉が終わる前にヒッテルはふらりと立ち上がり、だが、続くはずだったグラチェスの言葉通り、

彼は危うくそのまま倒れるところだった。その彼が床に倒れ込む前にグラチェスが抱き留めた。

「ほら、大丈夫かい?無茶をするな」

「す、すまない……グラチェス?もう離してくれて構わないのだが…?」

「あ、ああ…そうなんだけど…どうしてか離せなくてね。どうしようか」

「…言ってることがよく分からないが…私に問われても困る」

「じゃあ、このままでもいい?」

「だから…問われても困ると言っている…その、何と言っていいか分からない」

グラチェスがヒッテルの背中に回していた手を肩まで移動させてもヒッテルは俯いたままグラチェスに身を任せていた。

そのヒッテルの言葉にグラチェスは少し驚いた顔を見せ、ヒッテルの顔に手を添えながらその顔を覗き込んだ。

「それは…私は期待していいのか?嫌なら拒めばいいことだろう?拒めないから困るとか?」

「…綺麗な顔して意地が悪いな。そう言わせたいのか」

「綺麗なのは君だよ…」

そう言ってグラチェスがゆっくりヒッテルに顔を近づけると、ヒッテルは困ったような顔をしながらもそっと目を閉じた。

初めてのキスはお互い、アルコールの味がした。

「ん、ん…っは…」

「…困ったな…そんな声を出されちゃ止められないじゃないか…」

「や…グラチェ……ス………」

「………ヒッテル?」

グラチェスがヒッテルの名を呼ぶと、ヒッテルの頭部はがくっと後ろに倒れ、グラチェスには仰け反った細い首しか見えなくなった。

ヒッテルはどうやら遠のく意識に任せてそのまま眠ってしまったようだ。

「…可愛い顔してオアズケとはやるじゃないか。ま…今夜は見逃そうか。これくらいは許せよ?」

グラチェスは苦笑がてらヒッテルの首筋に口づけて跡を付けると、彼をベッドに抱き上げて彼と共に眠った。

翌朝の彼の反応を楽しみにしながら。


翌朝、絶叫でもしてくれるかと思われたヒッテルは声も出ないくらいの驚きで、落ち着いた頃には自分を抱きしめるグラチェスの腕の中から

抜け出そうと必死だった。それは困難を極め、ヒッテルは途中で溜息をもらした。

「…夢じゃなかったのか…」

「言うと思ったよ」

「ッグラチェス!?」

「夢なら良かった?夢じゃなくて良かった?」

言いながら、グラチェスはヒッテルを自分の中に閉じこめるように抱きしめる。

「お、起きているのなら起きていると言え。本当に意地の悪い…」

「はぐらかさないでくれ。でも、良かった、ちゃんと覚えてるんだな?酒のせいで忘れられたらどうしようかと思ったよ」

「………」

「あ、今、その手があったかとか思った?だめだよ…誤魔化さないで」

横向きで抱き合っていた体勢をグラチェスが身体を起こして、ヒッテルをベッドに押さえつける形に変える。

ヒッテルは珍しく驚きの表情を見せ、グラチェスを見上げた。

「グラチェスッ?」

「続き、しようか」

「っ…断る」

「どうして?私が嫌い?違うだろう?」

グラチェスはヒッテルの言葉を気にせずに肩口へと顔を埋める。掴んでいる手からヒッテルの身体が一瞬震えたことを感じ取ると口元で笑みを象った。

「ほら、感じてる」

「っやめ…っグラチェス!頼む…から…っ」

涙目の懇願は抵抗というよりは誘惑に近い。だが、ヒッテルがあまりにも真っ直ぐ自分を見つめてくるのでグラチェスはそれ以上、先に進むことが出来なくなってしまい、短い溜息を零した。

「…本当に君は色んな武器を持っていてずるいな…そんなに嫌かな、私は」

「そうじゃ…ない、多分」

「じゃあ、何かな?…ああ、怖い?初めてかい?」

グラチェスがそう聞くと、ヒッテルは一気に顔を染めてその顔を逸らす。グラチェスは構わず、嬉しそうな笑みを向けた。

「良かった、私もなんだ」

「っな…?嘘をつけ、初めての者があんなにがっつくかっ?」

「初めてだから加減が分からないんだ。出来るだけ優しくするから大目に見てくれると嬉しい」

「…ま、まだ朝だぞ…?」

「焦らすと余計怖いと思うが?私も何するか分からないよ?」

「グラチェ…」

「黙って」

「う、んん…っ」

グラチェスは再びキスから始める。ただ、昨夜とは違う、深いキス。

時折、ピクッと震える指にグラチェスが自分のそれを絡ませるとヒッテルは無意識の内にそれを強く掴んでいた。

「ヒッテル…大丈夫、怖くなどない…二人一緒なのだから」

「っは…あぁ…グラチェス…」

甘いキスと囁きにヒッテルが流されそうになった、その時。

ばんっと勢い良く部屋のドアが開いた。

「おっはよー!兄ちゃん!ええ天気やでー!っっってぇ、わての兄ちゃんに何しとんのやー!!?」

「カ、カッツェ!?」

「しまった…鍵忘れていたな…」

「そういう問題か!?」

「はいはいはいーっ!離れて離れて!!綺麗な顔して油断ならんな、もう!」

カッツェは更に勢い良く、ヒッテルからグラチェスを引き剥がすと自分がヒッテルの上に乗り、ヒッテルの身体をチェックし始める。

「むー…はっ!?キスマーク!?何や!?もう2ラウンドめかいな!?なんてことやぁあああ!!遅くなってごめんなあ!兄ちゃんっっ」

「カ、カッツェ!馬鹿なことを言うな!!何が…に、2ラウンド…」

泣きついてくる妹を怒鳴りつけながらも妙にリアルな言葉にヒッテルは顔を染める。

カッツェはパァッと顔を明るくしてヒッテルに抱きついた。

「なぁんや!まだかいなっ、良かったー!!ああ、もう兄ちゃん、そんな可愛い顔めったにするもんやないでぇっ?わての前だけでええ!」

「カッツェ!!何を分からないことを…グ、グラチェス?」

何やら黒いオーラを出しながら部屋を出ていこうとしていたグラチェスにヒッテルがうっかり声をかけてしまった。

振り向いたグラチェスの笑顔はバラもバナナも凍りそうな笑顔で、カッツェさえもヒィッと声を上げて兄に思いきり抱きついた程だ。

それは火に油をそそぐことになるのだが。

「…私は言ったな?ヒッテル」

「な、何だ?」

「焦らすと余計怖いことになるし、私も優しく出来るか保障しないと」

「…若干、違う気がするが…」

「覚悟しておいてもらおう、では」

そうして、ドアは無情にも仲良し兄妹を残して閉まっていった。

「な、にを…する気だ、あいつは」

「安心しいや!兄ちゃん!!わてが絶対に兄ちゃんの純潔は守ってみせる!!あ、いっそ、わてが先に頂いてしまうっちゅうのも…」

「朝っぱらから馬鹿なことを…っ言ってないでさっさと自分の部屋に戻って準備でもしてこい!!!」

「きゃーっっっっ」

妹を追い払って、一人になった部屋。ヒッテルは深く深い溜息をついた。

「…どう、覚悟しろって言うんだ…あいつは…」

そう、独り呟いて、ヒッテルはやっぱり困ったように笑った。









ぎゃー(≧∇≦)//エロいです〜//
嬉しいヒッテル受け小説をありがとうございました!!
グラチェスは置鮎さんがCVの美形長髪キャラです♪
吉野さんのコメントv↓
『ヒッテルの最初の台詞「消えろ」でもうやられてしまいました!!あの髪型といい、あの身体といい・・・っ。格好良くて可愛くて横顔がこよなく受け臭い(笑)。入浴シーンまであって大変に素敵でした!
グラチェスxヒッテルで(爆)。二人は絶対宿では同室だと思うんですっっ。グラチェスは置鮎さんの、仰るとおり結構な美形キャラですね。美形というか美人さんな設定のようです。主人公に女性に間違われてました(笑)。でもタイトルで白い狼と称されてたので間違いなく攻かと。
入浴シーン詳細ですが第30話「精霊剣を取り戻せ剣豪VS月心!」にて剣豪(中尾隆聖さん!)に敗れ、心乱す仲間・月心を見て、とりあえず自分達に出来るのはまず落ち着くことだという僧侶イズミの意見から主人公とイズミと
ヒッテルが温泉(露天風呂)へ!まー・・・肩が細くて色っぽいのですーっっ。隣りに座るイズミが大きい人なので余計そう見えましたっ。難を言えば風呂上がりには浴衣が良かったな・・・(
笑)。ヒッテルは肌が黒いので白やアイボリーの浴衣が似合いそうだと勝手に思ってました。
カッツェxヒッテルも大変に好きです〜。カッツェが「兄ちゃん」と呼ぶのもヒッテルが「カッツェ」と呼ぶのも何だか特別で好きですねー。二人のラストは何度も見てしまいます。』

私も30話を見返して見ました(≧∇≦)//ヒッテル温泉入ってます〜///細い肩〜v
初登場の回もすごく素敵ですv
見ていた頃は、攻めがいないよ〜(T◇T)と騒いでいたんですが、M様に聞かせていただいたCDドラマでは、リーバスやキッドもいますし、吉野さんの小説で、グラチェス×ヒッテル萌えになりました(≧∇≦)
ヒッテル受け万歳v

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