金色のガッシュベル
清麿×アポロ

小説
吉野様

『初恋心』





「お邪魔するよ、清麿」

アポロは相変わらず丁寧で優しい口調でそう言って俺の家にあがった。

彼の口からは言葉の一言一言がとても丁寧に発せられる。本心だけをとても丁寧に。

出会ったばかりだというのに何故だか、そんな感じがした。

「うん、どうぞ。どうする?飯より先に風呂入った方が良さそうだよな?」

あの戦いの後だ。アポロは土埃で汚れていたし、風呂で少しは疲れが取れるかも知れない。

あ、でも、アポロに湯舟に浸かる習慣があるかどうか…。

「いいのかい?長湯になると思うけど…実は温泉好きでね」

…どうやらあるようだ。しかも好きらしい。

「いいよ。俺はもう入っちゃったし、その間に夕飯用意しとくから」

「何から何まで悪いね。ご両親はお出かけかい?」

「父さんはずーっと出掛けたまま。母さんは買い物行ってるから帰ってきたら父さんのパジャマでも出して貰うよ」

「有り難う。お母さんの帰り、待ってなくていいのかな」

「いいよ。早く入ってきなよ。ロップスも一緒に」

「カーウッ」

ロップスが嬉しそうにそう言うとアポロはロップスに笑い返してから、俺に『じゃあ、そうさせて貰おうかな』と笑った。

その顔にどきっとした。アポロはすごく綺麗に笑うヤツだったんだ。

綺麗に鮮やかに。それは名の如く、太陽のように。

「清麿?」

「あ、ああ、ごめん。風呂こっち」

何を動揺してるんだ、俺はっ。

俺はアポロを風呂に案内してから、キッチンに夕飯の用意をしに行った。

用意と言っても母さんがもうほとんど作ってくれたし、サラダを作っておけと言われただけだ。

アポロは何が好きなんだろう。キュウリ大丈夫かな。マヨネーズよりドレッシングで和えた方がいいかな。

俺はしばらく野菜達を前に悩み続けた。

「清麿?何を悩んでいるのだ?」

「うわ!!ガッシュ!!」

不意に下からガッシュの声が聞こえて、俺は飛び退いた。いつもなら分かりやすいガッシュの気配に俺が気付かなかった?

「どうしたのだ?清麿ぉ?はっ、私は何か邪魔してしまったのかっ?いや、私も清麿があまりにも真剣な顔をしてるから

 声をかけていいものかと悩んだのが、私で手伝えることがあるなら…」

なんだって?

「え、ちょっ…ガッシュ、ちょっと待て、今、何て…」

「いや、だから私で手伝えることがあるなら…」

「その前っ。俺…そんなに真剣な顔してたか?」

「おお。まるで戦いの時みたいだったぞ」

嘘だろう?たかがサラダ作りで俺は何をそんなに真剣に悩んで、そんな顔してたんだ?

ただ…アポロが居るだけじゃないか。アポロに食べさせるだけじゃないか。

「どうしたのだ?清麿?顔が赤いぞ?」

「っな…っ」

「あら、清麿。どうしたの?赤い顔して。サラダ出来た?」

丁度、帰ってきた母さんにもそんなことを言われて。言われて…。

「わぁあああっ!!」

俺はキッチンを飛び出して、洗面所に駆け込んだ。そこで鏡を覗けば確かに赤い顔の自分。

何で?何でっ!?

「清麿?」

ドア一枚で隔てられた風呂場からアポロのエコーがかった声が聞こえてビクッとした。

そ、そうだった。ここにいるんだ。

「どうしたんだい?全力疾走みたいな足音だったね」

「い、いや、何でもないんだっ、大丈夫っ」

「そうかい?なら良いけど…もうすぐ上がるよ。ロップスが眠そうなんだ」

「あ、わ、分かった。今、タオルと着替え持ってくるよ」

俺は再び走っていって、母さんにタオルと着替えを用意して貰った。父さんが着た物を使わせるのもどうかということで

父さんが着なかった浴衣を出してくれた。それはアポロに似合いそうな深い緑色の浴衣と象牙色の帯。

俺はそれを脱衣所に置いて、着替えたら隣のダイニングに来るように告げるとダイニングでアポロが来るのをどきどきして待った。

「お待たせ、清麿。すいません、お邪魔して先にお風呂まで頂いて」

やって来たアポロは俺に声をかけてから母さんに丁寧な挨拶を始めた。母さんも格好良いアポロに動揺しながら対応してる。

…まじですげぇ似合ってる。

濡れた金の髪は更に艶を増して深緑の浴衣に良く映えていた。風呂上がりでもアポロの肌はとても白くて。

首筋や胸元が妙に色っぽくて気になった。

「さっ、御飯にしましょうっ、沢山食べてねっ」

上機嫌な母さんのそんな言葉で珍しく大人数の夕飯が始まった。

アポロは俺の前に座って、時折俺の視線に気付いて笑ってくれる。俺は誤魔化すように旨い?などと聞いてみたり。

そんなやり取りにどきどきして、わくわくして。

この感情はあの噂に聞くナントカってヤツに似てないか?

夕飯を食べ終えても俺達はダイニングで話をしていた。アポロの旅の話はとても面白かった。

けれど、ロップスが眠ってしまったのでアポロがロップスを抱いて立ち上がり、俺もダイニングを出た。

「お布団、客間に用意してありますからどうぞ」

「ありがとうございます。あ、でも、清麿の部屋に持っていってもいいですか?」

「いいのか?狭いぞ?」

「うん。折角だから一緒に寝ようよ」

アポロの言葉に心臓が止まりそうになった。アポロは変な意味じゃなくて、そう言ってくれたのに。

い、いや、俺だって変な意味に受け取ったわけじゃあ…っ。

「清麿?」

「っ何でもない何でもないって!じゃあ、俺、布団持ってくから先に二階行っててっ」

「僕も持つよ。清麿」

そう言ってアポロは笑った。

何でだろう。アポロが笑ったり、俺の名前を呼んだりするととてもドキドキするんだ。

けれど、もっと笑って欲しい。もっと名前を呼んで欲しい。もっと、もっと…アポロを知りたい。


俺のベッドの横に布団を敷くとアポロはその枕元に優しくロップスを寝かせた。

ベッドに寝転がってその様子を見ながら俺はロップスに向けられた笑顔に嫉妬めいた感情を抱いていた。

ロップスになれたら、なんて馬鹿な考えまで出てくる。俺達は敵同士ってやつなんだろうに。

俺はガッシュを優しい王様に。アポロはロップスを自由な王様に。そう決めたのだから。

「どうしたんだい?清麿。怖い顔して」

気付けばアポロが微笑みながら俺を見ていた。どうしたんだと問いながら、まるで全て分かってるみたいに。

「俺達…敵同士なんだよなぁって思ったら…何か、ちょっと、さ…」

「…そうだね。確かに敵同士かも知れないけど…王を目指す同志でもあるよね」

「アポロ…」

「それに、僕は清麿に敵意は持ってないよ。君も同じだろう?」

「うん」

「良かった。ああ…今日は疲れたね。僕らも休もうか?」

言いながらアポロは布団の上に寝ころんで俺を見上げて笑った。俺は…ゆっくりベッドを降りた。

「清麿?」

俺はアポロの頭を挟んで両サイドに手をついて、アポロをじっと見下ろした。

お互いに瞳は逸らさなかった。

「好きだ…俺、アポロが好きなんだ」

「清麿…」

「好きなんだ」

「…いいよ、おいで」

「いいのか?」

「うん。ロップスは眠ったらちょっとやそっとじゃ起きないから。ちょっとだけ…そっと、ね」

アポロがそう笑った。笑ってくれた。俺はそっとアポロの唇にキスを落とした。アポロは静かに目を閉じて。

俺は優しいキスを繰り返してから、徐々にその深さを増していった。

正しいキスの仕方なんて知らないけど、俺はしたいようにキスをした。

次第にアポロの身体が僅かに揺れたり、俺のパジャマの袖を掴んだりしてきたりしたから多分間違いではないんだろう。

俺は思わず口づけをアポロの白い首筋に移した。

「ん…っだ、めだよ…清麿、ちょっとだけだって…言ったろ?」

「…おあずけ?」

「ふふっ、そうだね。今度…会えたら…」

「その時は」

「…いいよ」

「…もう一回キスしていい?」

「うん」



「カーウ!カーウウ!!!」

翌朝、俺達はロップスの怒鳴り声(らしき声)に起こされた。もう少し寝かせてくれよ…気持ちがいいんだ、ここは。

って、え?

ゆっくり目を開くと俺の眼前にはアポロの寝顔があった。驚くことも忘れた俺が硬直している内にアポロも目を覚ましだした。

「う、ん…ロップス…どうしたんだい…?そんなに髪を引っ張らないでおく…っき、清麿!?」

アポロの方はちゃんと驚いて、飛び起きた。俺もやっと頭がはっきりしてきたようだ。

「君…自分のベッドに戻らなかった、のか?」

たどたどしく赤い顔で問うアポロに俺は申し訳なさそうな顔で素直に謝る。

「ごめん…そうみたい」

「そ、そう、いや、別に良いんだけど…ああ、驚いたな。ロップスも驚いたんだね」

アポロは笑ってロップスを抱きしめたけど、そのロップスはアポロの肩越しに俺を睨んでる。

コイツ…分かってやがるな。しかも、あからさまな敵意を感じるぞ。負けないけど。

「カーウッ、カーウ!」

「うん?分かった、分かった。そんなに暴れないでおくれ」

「どうしたんだ?」

「うん。どうもロップスが早く先に行きたいみたいでね。もう行くよ」

「もう!?せめて朝飯だけでも食っていけばっ?」

「いや、いいよ、まだ早いし…顔だけ洗ってっていいかな?」

「いいけど…」

俺達は母さんを起こさないようにそっと一階に降りて、二人で洗面所に入った。

「絶対、ロップスは嫉妬してんだよ。怒ってんだよ」

「うん?」

顔を洗うアポロの横で俺がぼそっと呟いた。アポロは笑うけど…俺もあいつも本気なんだからなっ。

「アポロって…もしかして戦いの時以外は案外鈍い?」

「ひどいなぁ」

アポロは俺の手からタオルを受け取って濡れた顔を拭くと真っ直ぐに俺を見て、ゆっくりと笑った。

ああ、俺が見惚れるほどの圧倒的な笑顔だ。綺麗で鮮やかな、太陽。

「昨日は敵意はないなんて言い方をしたけれど…僕も清麿が好きだよ?知ってた?」

「え…」

言うなり、アポロは身を屈めて僕に優しいキスをくれた。それはアポロの口調みたいに優しくて丁寧なキス。

これってアポロの『本当』だと思って良いんだよな?

「さて、じゃあ僕はもう行くけど…また、いつか会おう。清麿」

「ああ…必ず」



家を出て、俺に手を振って去っていくアポロをいつまでも見送った。

太陽よりも眩しく輝くアポロ。どうか、いつまでも笑っていてくれ。泣くのならどうか僕の側で。

甘くて少し切ない、この感情。恋ってやつで正解だろう。

君が教えてくれた、これが恋心。










吉野さんのコメントv
『今回のアニメでアポロ、最後は清麿邸に行ってませんが
もし行っていたら、なお話です。』
嬉しかったです〜(〃∇〃)
アポロがあまりに関さんに合い過ぎてて、何度もビデオ見返したんですが
世間一般的にはアポロ×清麿なのだろうな〜と流石に思って
でもアポロが受けなのが読みたいッと、ロップス×アポロなんてのまで
考えたです(-_-u///ロップスは可愛いですが、王様になれたら
きっと凄いカッチョ良く変身できちゃったりして、鎖とか使い放題に…ガフっ(殴)
す、すみません、そんな中、吉野さんに、とっても可愛い清麿×アポロを
書いていただけて、とても嬉しかったのですーーーーー(〃T∇T〃)///
イラスト描きたかったんですが、時間が足りないので次回きっと!
吉野さんからさっきいただいたメール爆笑したのでこっそりと↓
『あー・・・鎖・・・ロップスの
あの武器は結構やらしいですよねぇ(爆)。
アニメではまだしばらく出てきませんが原作でアポロを
攻めれそうな人が出てきてるんですよーっ。その人が
アニメで出てきたらまた書くかもです(笑)』
もう激アニメになって欲しいです!(≧∇≦)///がはっ
そしてやっぱロップスの鎖は…!うああっ(←ゴメンナサイ…(-_-u///)


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