「ねぇ、キャプテン?今日の茅野ってなんか違いません?いつもと」
放課後の城惺高校第二体育館、バスケ部はいつも通り部活を行っていた。
そこでいつも通りではない茅野大地の様子に同学年の日高が気付いた。
「お前でもそう思うか。いつもより動きが鈍いな」
キャプテンの藤田はそそっと隣にやってきた日高を横目でちらっと見てから大地に視線を移して口を開く。
「お前でも、って…ひどくないっすか。俺が普段、鈍いみたいな…」
「どうしたんだろうな、体調悪いようには見えなかったが」
「いや、もう聞いて下さいよっ。つか、体調悪い茅野なんて見たことも聞いたこともありませ…」
日高の抗議中にも大地から目を離さなかった藤田は大地の身体が崩れて片膝を床につく様をみて、日高に構わず大地に駆け寄った。
「おい、茅野、大丈夫か?」
「…大丈夫っす、すいません」
そう言うくせになかなか立ち上がらない大地に藤田は首を傾げながらすっと右手で大地の額に触って眉を潜めた。
「すごい熱いけど…大丈夫じゃないだろ、これは」
「大丈夫です」
大地は頭を振って、藤田の手を払いのけるとゆっくり立ち上がって、落としたボールを拾いに行こうとしたがその前に藤田が立ちふさがる。
「だめだ、そんな状態で部活をさせるわけにはいかない。今日は帰れ」
「平気っすから」
「キャプテン命令だ、今日は帰れ。ああ、部室でちょっと休んでからにしろ。途中で倒れても困るからな。何だったらタクシーで帰れよ」
「…っぅす」
大地は渋々といった風に藤田に頭を下げて、部室に向かって歩き出した。が、そこでまたその身体が崩れた。
全身で倒れ込んだ音が体育館に響き、全員が大地に注目した。
「茅野!?」
「おい、大丈夫か!?頭、打ってないだろうなっ?」
日高も駆け寄り、藤田は素早くしゃがんで大地の顔を覗き込んだ。
「すいま、せ…」
言いながら、再びゆっくり起き上がる大地に藤田はほっと息を吐いて、大地に肩を貸してやりながら日高を見た。
「おい、日高。茅野の家に連絡入れておけ。部室に連絡網あるから。少し休ませたらタクシーで送り返す」
「あ、はいっ」
日高は部室へと走り、藤田は大地を体育館の端に引きずっていって横にさせた。
「…家は、いいっすから…」
「急に弱ったお前が帰ってきたら驚かれるだろう?俺達も驚いたが…。いいから、黙って横になってろ」
面倒くさくなったのか、大人しく言う通りにする大地の横に藤田も腰を下ろして、しばらくすると日高がものすごい勢いで戻ってきた。
「部活中もそれくらい走ってくれるといいんだがな、で?連絡はついたのか?」
「あ、あの、ついた、んですけど、あの、家が留守電だったんでお兄さんの携帯に直接かけたんすけど…」
「…何で、お前が茅野の兄さんの携帯を知ってるんだ? こないだ来てた兄さんか?」
「いえっ、一番上のお兄さんで…それが、その、丁度大学の帰りで迎えに来るって」
日高がそう言うなり、寝ているのかと思われた大地ががばっと起き上がって日高の胸ぐらに掴みかかった。
「てっめぇ…っ日高っ、何、勝手に陽一に借り作るようなマネしてやがるっ」
「が、がっ、く、苦しいっての!てめ、本当に病人かよっ!?」
「こら、茅野。お兄さんが心配して来て下さるのに何を怒ってるんだ?」
藤田が制すると、大地は日高を放るように離し、急に起き上がってくらついたのか壁に背を預けながらずるずると床に座り込んだ。
「あいつが心配するってタマかよ…」
バツの悪そうな顔で呟く大地に藤田はまた、とんでもない兄貴なのかと溜息を零す。
それから、一人で帰りだそうとする大地を止めながら15分程経つと何だか体育館の外が騒がしくなり、それは徐々に体育館に近づいてきた。
そして、そこに現れたのは見たこともないような美人な男。
例えようもない美貌に誰もが目を奪われ、息を飲む中で大地はその姿を確認すると苦々しく溜息を吐いた。
「まさか、お兄さん、か?」
答えたくもないのか、大地は不機嫌面で項垂れるように頷いた。
「お、おにいさん!お久しぶりですっ、こっちです!」
日高は少々の優越感を胸に子犬のように陽一に駆け寄る。日高に気付いて、陽一が笑顔を向ければそれを直視した数名の意識がどこかに飛びかけた。
「日高くん、久しぶり。いや、悪かったね、大地が世話かけたみたいで」
そう告げてくる声は耳だけで聞いてるはずなのに身体中に響き渡り、痺れるような感覚に襲われる。
少しは免疫のある日高でさえ、未だ慣れることなく陽一の前では平常心ではいられない。
「と、ととととんでもないです!その、また会えて嬉しいですっ」
「ははっ、俺もだよ。本当に近い内に飯でも行こうね」
「はいい!!是非とも!!」
「で、大地は…あっちか」
「あ、はいっ。キャプテン!茅野のお兄さんですっ」
日高が陽一を藤田と大地の方に案内すると藤田は珍しく慌てたように立ち上がって頭を下げた。
「キャプテンの藤田です。この度は俺の監督不行届で申し訳ありませんでした。倒れるまで茅野くんの不調に気付かずに」
「大地の兄の茅野陽一です。いつも弟がお世話になってます。どうか気にしないで下さい。こいつは分かりづらいでしょう?」
言いながら、座っている大地の頭にポンッと手を乗せる陽一に部員達はやっぱり大いに驚いてしまう。
広海の時もそうだったが、あの無口・無関心・無愛想の強面・茅野大地を叩いたり、頭を撫でたりすることなど有り得ないと思ってしまう。
当人達は何でもないことなのだろうが。
「ぅるせっ」
大地が陽一の手をはね除けると、陽一はさして気にもせずにスッと大地の正面にしゃがみ込んで大地の顔をじっと見る。
「お前がそんな絶不調の顔するのなんて何年ぶりかな。風邪なんて小学校の低学年以来じゃないか?」
どんな顔だよ!?と心の中でツッコみをいれつつ、日高も大地の表情を伺うがやっぱり表情なんかはいつもと変わらないように見える。
本当に茅野三兄弟はスゴイ、と改めて思わずにはいられなかった。
「そっちこそ嬉しそうな顔してんじゃねぇよ」
「心外だなぁ。心配で迎えに来てやったっていうのに。で、熱は?」
言ってる間に陽一は自分の額を大地のそれに押し当てる。周囲も動揺したが、一番動揺したのはそうは見えないが大地だった。
「よ、ういち…っ?」
「ん、38度ちょいってとこ?ま、お前、元から体温高いしな。病院行くか? 家で様子見るか?」
「い、えでいい、家で…。寝りゃあ治る」
「じゃあ、帰るか。ああ、日高くん、悪いけど大地の荷物、取ってきてくれるかな?」
「は、はい!喜んで!すぐに!!」
どこかの居酒屋の店員のような返事をして、嬉しそうに本日二回目の体育館と部室との往復をしてくれた日高は結局、玄関まで二人を見送ることにした。
日高が大地の荷物を持ち、大地は不確かな足取りのくせに陽一の肩を借りることを断り、ふらふらと歩いた。
「こんな時まで意地張るなよ」
「うるせぇ、余計なお世話だ」
「俺だったら絶対、喜んで肩借りるのに。勿体ねぇなぁ」
日高が心底羨ましそうにそう言うと、大地は心底うざそうに日高を睨み、陽一は小さく笑って日高を見た。
「いいよ?日高くんにも肩くらい貸してあげるよ。日高くんが弟だったら楽しいだろうね」
「ほ、本当ですかっ!?うわ、俺、俺っ、是非、弟になりたいっすよ!」
今度は心底嬉しそうにはしゃぐ日高の横で大地は面白く無さそうに顔をしかめる。
それを横目で確認した陽一は秘かに確信犯の笑みを零した。
帰路の車内は静かだった。
音楽も流れない車内で陽一は黙って運転し、大地は助手席のシートを少し倒して寝たふりをした。
目を開いていれば嫌でも陽一の綺麗な横顔が目に入る。それを拒むように無理矢理、目を閉じていた。
けれど、いつの間にか本当に眠ってしまったらしく、気付けば車は自宅の車庫の中に入っていた。
「大地、着いたぞ」
「ああ…」
車を降りて、車庫を出ると陽一は不意に大地の腕を取って自分の肩に回した。
「っな、陽一っ?」
「もう他人はいないから意地張らなくていいんだろう?」
言いながら、歩き出す陽一に大地は呆然とした顔でそのまま玄関に入ることになる。
玄関に入ると無意識の内に大地の気が緩んだのか、陽一にもたれる重量がふっと増えた。途端、陽一がバランスを崩した。
『やばい』
二人同時に思って、運動神経の優れた二人だけあって対応は早かった。
陽一は玄関の絨毯に手をついてから横に倒れ、大地はその陽一の上に倒れかかるのを何とか両腕と片膝を絨毯につくことでこらえた。
すぐに起き上がろうとした陽一に対し、大地はそのまま動かなかった。大地が動かなければ、陽一も動けない。
陽一は大地の顔を至近距離で見据えて、冗談だろう?と大地を睨み上げた。
「おい、こんな所で押し倒すなよ」
「…悪かったな、俺が弟で」
「何だ、まだそれで拗ねてたのか。いいんだよ、お前は弟で。弟じゃなきゃどうなるか分からないだろう?」
「何が?俺が?陽一が?」
「さぁな。安心しろ、お前が弟でも十分楽しい」
「ったく、遊んでんじゃ…」
「ただい…あぁあああああ!!?」
不意に玄関のドアが開き、入ってきた次男・広海は当然だが絶叫した。帰ってくるなり、弟が兄を押し倒してる光景を目の当たりにしたのだから本当に当然だ。
「だ、いちぃ!?てめぇ、何、兄貴を襲ってやがるぅ!?」
「ああ、広海。良いところに帰ってきたな、助けてくれ」
「ぅるせぇな。勘違いすんじゃねぇ。バランス崩しただけだ」
「はあ!?意味分かんねぇ!だいたい何だってこんな時間にお前がいんだよ!?部活は!?つか、いい加減どけよ!」
広海が勢い良く、大地を陽一から引き剥がすと大地の身体はぐらっと揺れたかと思うと足から床に崩れた。
「うわ!?だ、大地っ?」
「広海、信じられないだろうが大地は具合が悪くて俺が迎えに行って今、帰ってきたところなんだ」
身体を起こしながら陽一がそう言うと、広海はあからさまに驚いた顔を見せる。
「へっ?大地が??嘘、じゃあ、バランス崩したって本当なんだ?」
「多分、な」
「は?」
「そんなわけで俺はこいつをベッドに置いてくるから、お前は車から荷物取ってきてくれ。後にしようと思ったが丁度良い」
陽一は広海の返事を待たずに車の鍵を広海に放る。
突然投げ寄越されたそれをわたわたとキャッチすると広海は何で俺が大地の荷物なんか、と言いながらも入ってきたばかりのドアを素直に出ていった。
「ほら、立てるか?」
何事もなかったように大地に手を差し伸べる陽一を大地は訝しげに睨む。大地の言いたそうなことを察して陽一はまた大地の頭を荒っぽく撫でた。
「弟が怖くて兄がやってられるか。とりあえず、今は立って、部屋に行って飯が出来るまで寝てろ。薬はそれからだな」
陽一の言うことの後半はもっともだと判断した大地は陽一の手に掴まることなく、ゆっくり立ち上がると重い足取りながら一人で二階の自室に向かった。
陽一はそれを見届けると溜息を零してから氷枕でも作るかと台所に入っていった。
「あーにき、大地の荷物、取ってきたぜー」
「ああ、ありがとう、広海。ついでに部屋に置いてきてくれるか?あと、これと」
広海は車の鍵と引き換えみたいに陽一から氷枕を受け取って顔をしかめた。
「俺がぁ?」
「…いやなのか?」
急に低くなった兄の声に広海は勢い良く首を振って、喜んで行ってきますと言うと二階に駆け上がっていった。
そして、あっという間に戻ってくると再び、陽一に元に戻ってきた。
「兄貴?」
「どうかしたか?」
「何か、大地のヤツ、すげー熱いんだけど大丈夫かなぁ?死んだりしねぇ?」
「…っふ、ははっ、何を言い出すかと思ったらっ」
「な、何だよっ、俺、マジメに心配して…っ」
「はいはい、ホンット可愛いな、広海は。大丈夫だよ、慣れないことに頭使ったせいだと思うから」
頭を撫でてくる陽一にどういうこと?と表情で訊ねる広海に対し、陽一は笑みだけを返して今までしていた料理の続きに取りかかる。
「あれ?お粥?」
「大地のな。お前も食べるか?」
「お粥ってあんま好きじゃねぇんだよなぁ。でも、兄貴が作るのは美味そう」
広海は陽一の手元を覗いて、梅と青ジソのお粥がぐつぐつしているのを楽しそうに見る。
陽一はその広海を楽しそうに眺めた。
「広海のには鶏肉入れてやるよ。あと、サンマの塩焼きと卵スープでどうだ?」
「俺、兄貴の卵スープ、すっげぇ好き!やっりぃっ」
素直な広海の表情と反応に陽一は笑う。そんな広海を可愛いと思いつつ、素直さゼロの大地も可愛いと思うんだから不思議だという自嘲じみた笑いだった。
「じゃあ、俺は大地に飯やってくるから広海は先に食べてていいぞ」
「はーい」
トレイにお粥と卵スープと水と薬を乗せて、陽一が二階の大地の部屋に行くと大地は熟睡状態だった。
陽一は部屋の電気をつけながら声を掛ける。
「大地、起きろ。飯と薬」
「…ん、ああ…」
「具合はどうだ?」
「別に…だるいだけだ。腹減った」
「はいはい、起きあがれるか?」
ゆっくりと起き上がった大地に陽一は毛布を羽織らせて、ベッドの側に小さなテーブルを寄せてその上に食事を置くと自分は椅子に腰を下ろした。
「…戻らねぇのかよ」
「食べさせてほしいか?」
「っ自分で食える!」
「じゃあ、さっさと食え。冷める」
出ていく気がなさそうな陽一を前に大地は出来るだけ気にしない振りをしながら黙々と食事をする。
美味いと思ってもそう口にしてきたことはなかった。そう言えば当然だ、なんて偉そうな返事が返ってくるのは目に見えている。
だが、ずっと何も言わなかった自分がもし、そう言えば今なら陽一がどんな反応をするか、大地は少し興味が出てきた。
食事を食べ終えて、れんげを茶碗に入れながら大地は陽一の顔は見ずに呟いた。
「…美味かった」
「当然だ」
大地は心の中で舌打ちする。自分がどうあろうと変わらない、目の前の男に。
「俺がお前の為だけにわざわざ作ったんだ、少なくともお前にとって不味いはずがない」
その後に付け足された、だいたい俺が不味いものを作るわけがないという言葉は大地には聞こえていなかった。
本当にタチの悪い兄だと大地はつくづく思う。
他人だったら本当に何もかも変わっていたのかも知れないが、それを欲しいとは大地は思わなかった。
ふと、陽一が零すように笑った。
「?何だよ?」
「いや、俺がお前の看病をするなんていつかと逆だな、と思って」
その『いつか』を思い出せば付随して思い出される想い。
たった一夜。けれど、忘れることのない一夜。陽一の言葉で大地の想いはぶり返す。
その大地の目に陽一は見覚えがあった。自分に手を伸ばしかける大地を陽一は冷たい目ではなく、静かな目で制した。
「…陽一は狡い」
「今更だろう?食い終わったなら薬飲んで布団入って寝ろ」
「陽一、お前、広海のこと、どう思ってる?」
「愛してるよ」
大地の唐突な問いに動揺もせず、間髪入れず陽一は答えた。そして、大地は本題に入る。
「じゃあ、俺は?」
「うん?それなりに愛してるよ」
「それなりかよ」
「でも、この俺が愛してるんだ、十分だろ」
大地が複雑そうな顔を返すと陽一は不意に真剣な面もちで大地をベッドに押し倒した。
「っ何す…」
「言っとくけど、俺だって心配くらいはするんだからな。今は大人しく休んでろ」
「…陽一が心配?」
大地は小さく笑いながら自分の近くに降りてきた陽一の顔を見上げた。
「兄貴だからな、当然だろ?」
「そりゃ、当然だよな」
「おい、キスはするなよ? 俺は生憎と馬鹿じゃないからな。風邪が移ったら大変だろ」
「この状況でそれ言うか?普通」
言いながら大地の手は陽一の後頭部を掴まえて引き寄せる。陽一も言葉で言う割りには抵抗もせずに目を閉じた。
「あっれ?兄貴、顔赤くね?兄貴まで風邪じゃねぇよな?」
階下に降りて食卓に戻るなり広海にそう言われ、陽一はしかめっ面のまま手の甲で自分の頬に触れてその熱さに一層顔をしかめる。
風邪とは違う、熱を貰ってしまった陽一は少々悔しそうな溜息を吐く。
「…あいつが柄にもないこと言って、柄にもないことするから動揺しただけだ」
あいつから料理が美味いだなんて言葉、聞いたことがない。あんなに優しくて溶けるようなキスはキャラじゃないくせに。
陽一は心の中で悪態をつきながら流されそうになった自分を叱咤する。
大地の手が背を撫でただけで漏れた自分の声に慌てた。そのまま先に進もうとする大地を勢いよくベッドに沈めて陽一は部屋を出てきた。
「兄貴が動揺〜??」
心底、信じられないといった風な声で広海が言う。陽一は我ながらそれに賛同しつつ、苦笑した。
「ったく、タチの悪い弟だよ…ん?広海?お前、まだ食べてなかったのか?手つけてないじゃないか」
「え、あ、何かさ、折角、兄貴いるんだから一緒に食おうかと思って。おっせぇよ、もう」
照れたようにふてくされた顔を見せる広海に陽一はとても嬉しそうな笑顔を見せる。
「可愛いコト言ってくれるじゃないか、広海。待っててくれて嬉しいよ、ありがとう。すぐ暖め直すから座ってな」
「うんっ」
料理を温め直しながら陽一は広海がいてくれて本当に良かったと思う。
素直で可愛い弟と、素直じゃなくて可愛い弟。こんな楽しい思い、なかなか出来るものじゃない。
前者は安心して思う存分、愛していられる。後者は愛し方が難しくて、少々危なっかしい。そこが気に入っているのだが。
「弟が大地だけだったら大変だったろうなぁ」
「えー?そうかぁ?大地だって基本的には兄貴には敵わないじゃん」
「まぁ、そうだけど」
「弟が俺だけだったら、の方が大変だぜぇ?きっと」
「そう?俺はそれなら大歓迎だけど?」
「だって、そしたら俺、兄ってゆー自覚なんて必要なくて危ないくらい兄貴にベッタリだったと思うんだよなぁ」
「いいじゃないか、広海は危なっかしいからいつも目が届く所にいてくれた方が良い」
「ひっでぇな、兄貴ぃ」
「ははっ、さ、食べよう?待たせて悪かったな」
「ううん、いっただきまーすっ」
大地のヤツ、あの夜からぐるぐる色々考えてたんだろうな。不器用者め、ちゃんと言えばいいものを。
ま、そんなの大地のキャラじゃないんだろうけど。
挙げ句、知恵熱なんて大地らしい。本能で動いたことが理屈で解決できるわけ無いのに。
今夜だけだと釘を打った甲斐もない。更にそう言った自分がこの様だなんて本当にどうしようもない。
俺達の均衡を保っていたのはどう考えても広海だろう。二人きりだとやっぱりバランスが崩れるんだ。
アンバランスの危うさも嫌いじゃないけど、続けるにはあまりにも危険すぎる。
けれど、広海が危ないくらい俺にベッタリ、というのは一度くらい体験してみたいものだ。
きっと俺が広海を拒むことはない。
こんな台詞、大地の前で言ったら面白く無さそうな顔をするに違いない。それが面白い。
けれど、大地。俺はお前との駆け引きのがレンアイみたいだと思うんだ。
言ってやらないけどね、絶対。
翌日、大地と広海はいつも通りに登校した。
陽一はその成分の半分は優しさで出来てるという薬を飲んで登校したようだ。
終
ぎゃーーー(≧□≦)っっ
ままままたもやっ とろけるお話をっっ
ありがとうございましたあああ〜///
も、陽一様色っぽ過ぎ…
大地の高校で注目の的の陽一様がまた大好きなのですv
日高がまた子犬攻めで(笑)
そして、大地が意外とテクニシャン(〃∇〃) 萌え…
うああ〜萌え狂いそーですよっっ
どうかまた陽一様受け小説、宜しくお願いいたしますv吉野さんv(≧∇≦)ふふふ〜v